ナオミ・クラインのシオニズム批判

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岩波の読書誌「図書」の最新号(2024年7月号)に、西谷修の「ショック・ドクトリンとアメリカ例外主義」と題する小文が掲載されている。これは、ナオミ・クラインの著書「ショック・ドクトリン」の意義を論じたもので、ショック・ドクトリンとアメリカ例外主義との親縁性を指摘したものだ。ショック・ドクトリンは、惨事便乗型ビジネスとか災厄資本主義と呼ばれるような、資本主義の犯罪的な側面について説明する概念ということらしい。また、アメリカ例外主義は、アメリカは他国と同等なのではなく、古い秩序を超えた新世界だという主張らしい。そう指摘したうえで、この小文は、ショック・ドクトリンとはアメリカという新世界創設の原理だという。

ナオミ・クラインは、ユダヤ人家系の生まれである。彼女はユダヤ人として、アメリカ例外主義がイスラエルの選民意識と重なると見ている。アメリカが、西洋からやってきた白人が先住民を殺した上に成り立っているように、イスラエルもヨーロッパからやってきたユダヤ人がパレスチナ人を殺した上に成り立っている。両者とも、自分らが選ばれたものだという選民意識を共有している。小論の趣旨はだいたいこんなものだが、ナオミ・クラインの本を読んだことのない小生でも、彼女の主張の概要が伝わってくるように感じた。

その彼女が、イギリスの新聞 The Guardianに、イスラエルを批判する記事を連載しているというので、ウェブ版のアーカイブをあたったところ、We need an exodus from Zionismと題する小文を見つけた。これは、ニューヨークのユダヤ人コミュニティを相手に講演したものの筆記である。イスラエルのシオニズムは、ユダヤ精神とは関係ない、むしろユダヤ精神を毀損するものだ、とする主張を展開している。

ユダヤ人相手の講演ではあるが、イスラエルに対しては非常に厳しいことを言っている。その要旨は、イスラエルのやっていることは、ユダヤ教の教えに反しているというものだ。ユダヤ教の教えの根本的な要素は、汝殺すなかれ、暴力を振るうなかれ、貪るなかれ、ということにつきるが、シオニズムはこれらの総てに違反している。だが、シオニズムはユダヤ人の精神とイコールではない。ユダヤ人の精神とまったく逆である。だから、われわれユダヤ人は、シオニズムからの脱却をはからねばならない。要するに、シオニズムから脱却すれば、ユダヤ人の名声は回復されると言いたいように聞こえる。しかし、果たしてそんなに単純なものか。少なくともイスラエルのユダヤ人の大部分は、パレスチナ人を殺すことに罪悪感を持っていないし、アメリカのユダヤ人の大多数も、イスラエル国家の凶行を支持しているように見える





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