アキ・カウリスマキ「浮き雲」 中年夫婦の失業

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アキ・カウリスマキの1996年の映画「浮き雲(Kauas pilvet karkaavat)」は、ともに失業した中年夫婦が生活の再建をめぐって奮闘する様子を描いた作品。かれらの再建の努力はなんとか報われ、念願のレストラン開業につながる。カウリスマキの映画には暗い結末を迎えるものが多いのだが、この映画は一応ハッピーエンドの形になっている。

夫のラウリは市電の運転手、妻のイロナは高級レストランの給仕長。折から不況で、二人ともほぼ同時に解雇されてしまう。職探しをするもままならない。夫にはモスクまでの観光バスを運転する仕事が舞い込んでくるが、健康診断の結果難聴を理由にキャンセルされる。一方妻のほうは、民間の口利き屋をつうじて場末の食堂の仕事にありつく。ウェイトレスから料理人まで何でも屋の仕事だ。ところが、税務調査が入って食堂は閉鎖されてしまう。彼女の未払い賃金の支払いをラウリが請求しにいくと、三人組に暴力を振るわれる。

ラウリが安宿で怪我の回復を待ち帰宅すると、家財道具が持ち出され、イロナは不在。彼女はラウリの妹のもとに身を寄せていたのだった。イロナは別のレストランで仕事をしたりした後、自分のレストランを持ちたいと思う。その資金を銀行から融資してもらおうと思うが、担保がないことを理由に拒否される。ラウリは自分の車を8000マルクで売って、それを元手にして賭け事をする。しかし賭けには負けて文無しになってしまう。

八方ふさがりの夫婦にとって、救世主があらわれる。昔のレストランの女性支配人が、自分が金を出すからレストランを開けというのだ。イロナは適当な店を借りることにして、昔の仲間に声をかけてレストランを開くことにする。当初は閑古鳥がなくありさまだったが、次第に客が入るようになり、団体の予約まで入る。店は何とかうまくやっていけそうである。

ちょっと緩めの印象を受けるが、フィンランド人の生活の実情がなんとなく伝わってくる。イロナは38歳で、子どもはいない。夫婦二人だけの生活である。その夫婦の絆は強い。だから絶望している暇はない、といったような雰囲気が伝わってくる映画だ。






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