時は飛ぶように過ぎ去る フリーダ・カーロの自画像

| コメント(0)
kahlo29.self.jpg

フリーダ・カーロの作品の大部分を自画像が占める。彼女は自画像を描くために生まれてきたといってもよかった。専門の美術教育を受けたわけでもなく、趣味で絵を描いたので、自分自身をモデルにするというのは合理的な選択だ。普通の画家にとって自画像は、息抜きのような位置づけだろうが、フリーダにとっては、自分自身を描くことが自分なりの美術のあり方なのだ。

「時は飛ぶように過ぎる(El Tiempo vuela)」と題されたこの絵は、フリーダが22歳の時の自画像で、フリーダらしさが現われる最初の作品といわれる。それまでは、写実的で西洋美術の伝統を模倣した作風だったのだが、この作品以降は、メキシコの民族芸術を感じさせるような画風へと転換していく。

この絵の中のフリーダは、白い衣装を着て、メキシコのエスニックなイアリングとヒスイのネックレスをつけ、厳しい表情を呈している。背景には、時計と飛んでいる飛行機がある。この二つのオブジェをあわせて、時が飛ぶように過ぎるというイメージを喚起しているわけだ。

(1929年 カンバスに油彩 77.5×61㎝ プライベート・コレクション)






コメントする

アーカイブ