イランの新大統領の就任イベントに出席するためテヘランを訪れていたハマスの指導者ハニヤがイスラエルによって殺害された。情報はいろいろ飛び交っているが、いまのところAXIOSが最も詳細に伝えている。それによれば殺害犯はイスラエルの諜報組織モサドだということだ。モサドは事前に周到な準備を行っていて、ハニヤが宿泊する予定の部屋を特定したうえで、その部屋に爆発物を仕掛け、遠隔装置を用いて爆破したという。
モサドの行動はネタニヤフも当然知っていたはずだ。ネタニヤフがアメリカ訪問中、バイデンはガザにおける軍事行動が民間人の犠牲を出さないよう注意を促し、また、人質の返還と停戦についての交渉を進めるよう念を押した。今回の事態は、そんなバイデンの意向をネタニヤフが尊重しておらず、むしろあざ笑っていることを物語っている。
というのも、ハニヤはガザの問題をめぐる交渉のハマス側の責任者である。その責任者を殺害するということは、自分はガザ問題について交渉に応じる意思はないと宣言したようなものだ。実際その通りなのだろう。バイデンが何と言おうと、アメリカ議会は自分の味方であるし、またトランプとは改めて仲直りをした。いまの自分に、とやかくものを言えるものはいない。自分は自分の思うように行動する。そんなふうにネタニヤフが思っているように伝ってくる。
だから、バイデンは腹をたてても当然なのだが、それとは真逆の反応を示した。今回の事態を受けて、イランがイスラエルへの懲罰を明言したところ、バイデンはイスラエルを防衛するために軍事的な行動を起こすと言明したのである。ネタニヤフは、ハニヤの殺害という事態を利用して、アメリカを対イラン戦争に巻き込むことに成功したわけだ。バイデンがボケまくっていることを、巧妙に利用したということだろう。
(参考記事)Planted bomb, remote control and AI: How the Mossad killed Hamas' leader in Iran https://www.axios.com/2024/08/01/haniyeh-assassination-mossad
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