イングマール・ベルイマンの1949年の映画「渇望(Torst)」は、スウェーデン人女性の生き方を描いた作品。その女性は二人の男と関係をもつのだが、どちらもうまくいかない。最初の男は妻子持ちで、自分を妾のように扱っている。男が妾をもつのは当然のことだという意識の持ち主だ。当時(1940年代)のスウェーデンでは、そのような価値観がまだ生きていたのであろう。ともあれ、その男には捨てられ、その男との間にできた子どもは流産してしまう。その挙句子どもができない体質になる。
二人目の男との関係もしっくりしない。女はしょっちゅうヒステリーを起こす。女はどうやら支配欲が強いらしく、男を自分のいいなりにしたがる傾向がある。それがうまくゆかないとヒステリーを起こすのである。その挙句にひどいうつ病にかかる。精神分析医の治療を受けるが、症状はよくならない。その精神分析医は、おそらくフロイトの徒なのであろう。患者に向かって私を信じなさいというほか、はかばかしい治療行為は行わない。そんな医師を女はずるいと言ってせめる。
男と二人で気晴らしのため旅行に出かける。夜行列車に乗って、ここがホテル代わりだといって満足する。女はここでも男に対して支配的な振舞いをする。男は観念して逆らわない。女の好きなようにさせている。小さな女の子が部屋に迷い込んでくると、お菓子をやったりして手なずけようとする。彼女は子どもが好きなのだ。
こんな具合に、男女の触れ合いが淡々と描写される。ときたま時間の流れが断絶したりするので、筋書きを追うのに苦労する。二人が、女の最初の男とその妻に合う場面があるが、それがいつの時点のことなのか、ちょっとはっきりしない。また、第三の(眼鏡をかけた)女が出てくるが、その女がどんな役割を果たしているかもはっきりしない。映画はほとんど説明らしいことをしないからである。
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