エリック・ロメール「美しき結婚」 若いフランス女性の結婚願望

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エリック・ロメールの1982年の映画「美しき結婚(Le beau marriage)」は、「喜劇と箴言」シリーズ第二作。テーマは、若いフランス女性の結婚願望である。既婚の男とセックスを続けていた若い女が、突然正式の結婚を望む。できれば明日にでも結婚したいのだが、その相手がまだいない。そこで友人の援助を得ながら結婚相手探しをするものの、なかなかうまくはかどらない、といったような内容である。

主人公の女性の結婚観のほかに、友人とか母親の結婚観も披露される。だからこの映画を見ると、現代のフランス人の結婚観が多面的であることがわかる。主人公の女は、結婚は生活を安定させるために役立ち、夫に稼がせて妻は専業主婦となり、夫の目を盗んで色々な男とセックスを楽しめばよいと考えている。母親は、結婚の前提として相手の人格を十分にわかる必要があり、そのためにはまず同棲すべきだと考えている。友人の女性は、結婚するためには男を夢中にさせる必要があるので、自分から積極的にアタックすべきだとアドバイスする。

主人公はそのアドバイスに従って、気に入った男に果敢にアタックする。傍目にはやや卑屈に見えるほどである。だがその男からは、自分にはいまのところ結婚する気はないといわれる。まだ結婚生活に束縛されたくないというのだ。そんな具合に、主人公の結婚願望はなかなか満たされない。

フランス女といえば、性的に解放されており、やや尻軽なことで知られている。そんなフランス女でも、結婚願望はもつということが、この映画からは伝わってくる。面白いことにこの主人公は、物を作ることに価値を見出している。それまでのセックス相手だった男は画家だったし、友人も物を作ることが好きだ。だが、自分にはモノづくりの才能があまりない。自分が作れるのは子供くらいしかない。だから早く子供を産んで、自分の好きなように育てたいという殊勝な気持ちを持っている。

なお、映画の舞台はパリではなくル・マンという地方都市である。パリとナントのほぼ中間に位置し、カー・レースで有名なところだ。もっとも映画では、カー・レースのことは話題にならない。






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