エリック・ロメールの1983年の映画「海辺のポーリーヌ(Pauline a la plage)」は、「喜劇と格言劇」シリーズの第三作。十五歳の少女の一夏の体験を描く。その少女ポーリーヌは、年の離れた従姉と夏休みをノルマンディの別荘で過ごす。その従姉は結婚に失敗し、新しい愛を求めている。そんな彼女を見ながら、ポーリーヌも恋をしてみたいと思う。ふたりを巡っていろいろなことが起こる。その体験を通じてポーリーヌは大人になる準備をする、といった内容だ。だから、少女版教養映画といってよい。
二人は浜へ海水浴に出かけ、そこで二人の男に出会う。一人はピエールという青年で、従姉のかつての恋人だ。もう一人はアンリという中年の男。そのアンリに従姉は惚れる。従姉にはピエールが未練を抱いている。一方ポーリーヌは、自分と同じような年令の少年と出会い、心を惹かれる。裸で抱き合ったりもするが、セックスするまではいかない。
映画は以上の五人の関わり合いを淡々と描き、たいした波乱は起きないが、ひとつちょっとした変化が起きる。アンリが浜でキャンディを売っている女を自分の家に引き込んでセックスしているところを、従姉に踏み込まれるのだ。アンリはその女を少年と一緒に浴室に閉じ込め、事態を糊塗しようとする。従姉はそれを信用し、少年とキャンディ売りが一緒に入浴したとポーリーヌに話す。ポーリーヌはショックを受ける。
結局、アンリが旅に出ることで、従姉の恋は終わり、ポーリーヌは従姉とともにパリに帰ることとなる。芽生え始めた恋愛は、実を結ぶことなく終わるのだ。
こんな具合で、ドラマチックな展開があるわけではなく、日常が淡々と描かれるだけである。しかしその日常を通じて、少女が次第に大人へと成長していく過程が丁寧に描かれている。見どころと言えば、従姉とポーリーヌが、男女の恋愛のあり方について互いの考えをかわすところだろう。従姉が恋愛の自由を強調するのに対して、ポーリーヌは貞節にこだわる。そこが面白いところだ。
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