水の中に見たもの、あるいは水がくれたもの フリーダ・カーロの世界

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「水の中に見たもの、あるいは水がくれたもの(Lo que vi en el agua o Lo que el agua me dio)」と題されたこの絵は、フリーダ・カーロの自伝をイメージ化したものといわれる。バスタブの中にさまざまなイメージが描かれているが、それらのイメージのそれぞれが彼女の人生のある時期をあらわしているというのである。なかでも、水の上に飛び出した両足先とその水面への反映が、画面を支配しているので、この絵には「足の自画像」という別名もある。

高層ビルを吐きだす火山、これはアメリカでの生活をイメージしているのであろう。火山の左手の麓には、顔のない男が横たわり、左手に握った綱がぐるっと円を描きながら両足先の中間にあるリングに巻き付いている。綱は、水面に浮かんだ女の首を絞め、穴だらけの貝殻を横切り、得体のしれない物体にからみついている。水面に浮かんだ女はフリーダ自身であろう。その隣に、彼女の両親の像。また二人の裸の女たちがいる。この女たちは、別途「森の中の二人の裸婦」として独立した作品になる。

フリーダはこれを、1938年にパリのジュリアン・レヴィ・ギャラリーで開催された個展に出品した。アンドレ・ブルトンはこの絵を、シュルレアリズムの傑作だと評価した。フリーダ自身には、そう言われるまでシュルレアリストとしての自覚はなかった。

(1938年 カンバスに油彩 91×70.5㎝ パリ、フィリパッキ・コレクション)






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