想田和弘の2013年の映画「選挙2」は、2007年公開の映画「選挙」の続編である。前作は、2005年の川崎市議会補欠選挙に立候補した山内和彦の選挙運動を追ったドキュメンタリー映画だったが、続編は、2011年に行われた川崎市議会の選挙の様子を追う。この選挙に山内は無党派で立候補した。立候補の理由は「怒り」である。日本の地方政治への怒り、起こったばかりの福島原発事故に川崎市議会が見てみぬふりをしていることへの怒り。そこで山内は反原発を掲げて戦う決意をしたというのである。
山内本人は、いわゆる選挙運動らしいものを一切しない。選挙公報、選挙用ポスター、選挙用はがきの郵送だけである。選挙公報は実質的に選挙運動にはならないから、ポスターとはがきだけがかれの選挙運動である。だからこの映画は、ポスターを貼ったり貼りなおしたりする山内の姿を追うばかりである。そのかわり、ほかの候補者の動向を追う。そんなわけだから、川崎市議会の選挙スタイルが俯瞰できるようになっている。
山内は以前の補欠選挙とその直後の本選挙では自民党から立候補しているから、自民党の候補者たちとは知り合いである。だから、選挙運動中のかれらとあうと、気さくに挨拶する。かれの取材をかたくなに拒絶するのは自民党以外の候補者だろう。山内はその候補者がトップ当選するだろうと予想していた。
想田は、基本的には山内と同行しているが、他の候補者を独自取材することもある。かたくなな拒絶を受けるのはそんな場合である。拒絶する候補者に向かって想田は、選挙は公の活動なのだから、取材を拒絶する理由はないだろうというが、相手はただ気に食わぬと言うのみである。だがさすがに実力行使には出ない。無視するのが関の山である。
山内には三歳の息子がいて、場合によっては選挙運動につれだす。たとえば選挙用はがきを郵便局に持ち込むときなどである。選挙用はがきは、郵便局による確認が必要らしい。
選挙活動期間の最終日に、山内は防護服に身を包んで街頭に立つ。その異様な様子に通行人が関心を示す。しかし、そのパフォーマンスはあまり効果がなかったらしく、山内は落選する。それでも供託金が戻ってくるだけの票は得た。供託金は50万円で、600票以上とらないと没収されるのだそうだ。
ほかの候補者の意見として、地方選挙がさまざまな制約でかんじがらめにされていて、候補者は連呼するくらいしかできないと言う場面がある。たしかにこの映画に登場する候補者たちは、ひたすら自分の名前を連呼するだけだった。これでは意味のある選挙運動とはいえないだろう。
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