雑誌「世界」の最新号(2024年10月号)に、「ドイツ『罪の克服』とはなんだったのか」と題する駒林歩美の小文が掲載されている。これは「イスラエルへの『偏愛』が生むレイシズム」という副題がついており、ドイツの異常なイスラエル贔屓の歴史的な背景について論じている。いま世界中を震撼させているイスラエルによるパレスチナ人の大虐殺(ジェノサイド)について、ドイツはアメリカと並んでイスラエルを支持し、パレスチナ人を殺すための兵器の提供を続けている。何がドイツをそれほどまでにイスラエル贔屓にするのか。
ドイツのイスラエル贔屓の異常さについては、ドイツの知性を代表するといわれるハーバーマスのような学者までが、今般の問題についてイスラエルの味方をしていることからもうかがわれる。とにかくドイツでは、国民あげてイスラエルを支持しており、イスラエルのユダヤ人がパレスチナ人の子どもを殺すことになんらの問題意識ももっていない。パレスチナ人をあたかも殺すべき害虫のように見ているのではないか。
ドイツは、イスラエルの安全保障を国是だと主張し、ハマスとの対立が始まって以来、前年比10倍の武器の提供をして、イスラエルのパレスチナ人虐殺に大きく貢献している。ドイツがなぜイスラエルの安全保障を国是としているのか。それはナチスによるユダヤ人迫害への反省の表れだといえるそうだ。その反省が極端なユダヤ人保護政策をもたらし、そのユダヤ人とイスラエル国家を同一視することから、無条件のイスラエル支持につながった。いまやドイツでは、イスラエルを批判することはタブーである。ユダヤ人の中には、イスラエルを批判する人もいるが、そういうユダヤ人も迫害の対象となる。なにしろ内務大臣自らが、イスラエルを批判するものは反ユダヤ主義を広める危険人物として逮捕するとうそぶいているというのである。
この小論は、ベルリン在住のユダヤ人精神分析家イリス・ヘフェッツ女史へのインタビューを踏まえているものだが、そのヘフェッツ女史はイスラエル国家の行為を批判し、イスラエルを無条件に支持するドイツに疑問を投げかけている。ごくあたりまえの行為だと思うが、そんな彼女でも、ドイツ政府の迫害を身近に感じるほど、いまのドイツはおかしくなっているという。
ヘフェッツ女史によれば、今のドイツがやっていることは、すべてのドイツ人に同じように行動する、つまりイスラエルを支持するように求めることだ。同じように行動しなければ切り捨てる。だがそれはかつてナチスがやったことである。ドイツ政府はナチスのやったことを反省すると言いながら、実はナチスと全く異ならないことをやっていると女史は批判するのである。
小生も女史の主張に同感である。ドイツ人は頭がおかしくなっている、としか思えない。その頭のおかしくなったドイツ人が、またぞろナチスと同じようなことをしている。実に不気味なことではないか。
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