1968年公開のアニメーション映画「太陽の王子ホルスの冒険」は、高畑勲の初の長編アニメーション作品である。宮崎駿もキャラクターのイメージつくりに加わっている。原作は北海道のアイヌ社会を舞台としたものだというが、アイヌでは興行的な成功は望めないとの判断で、北欧に舞台をうつすことにした。それでも興行的には失敗だったといわれている。
人間を翻弄する悪魔とたたかうというのがテーマである。その戦いの戦闘に、ホルスという少年が立つ。ホルスは悪魔によって絶滅された村の出身だが、別の村の一員となって悪魔と戦う。ところが、少年がたまたま知り合い、村に連れてきた少女ヒルダが、じつは悪魔の妹だった。妹は、銀色の狼などをあやつって村人を攻撃するが、ホルスの純真さに打たれて心を入れ替え、少年と一緒になって悪魔を倒す、というような内容である。
アニメといえば、いまでは低年齢の子供らを考慮しなければ、興行的な成功はむつかしいとされている。ところがこの映画は、ハイティーンを主な観客に想定していたという。じっさい、主人公の二人はハイティーンで、恋愛感情を理解できる年頃なのである。しかし、この映画を製作・配給した東映は、ハイティーンを対象にした積極的な宣伝をしなかった。興行上の失敗は、そんな東映の中途半端な姿勢にも、原因があるといわれている。
とはいえ、1960代の日本のアニメは、東映が主導していた。東映は、「白蛇伝」以来のアニメの実績をもっていたからである。
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