三粋人経世問答:2024年総選挙

| コメント(0)
無覚先生:三年ぶりの総選挙で自民党が大敗しました。公明党も拠点というべき大阪の選挙区で全敗するなど、自公連立政権に厳しい結果となりました。自公あわせても定数の過半数にいたらなかったわけで、政局が一挙に流動化することが考えられます。石破首相の進退問題に発展する可能性もある。これまで自民党は盤石の基盤を誇り、一強多弱といわれるような圧倒的な優位を誇ってきたのが、一気にひっくり返ってしまった。政治というものはわからないものだと改めて考えさせられました。今回の事態をどう受け取ったらよいか。

俄然坊居士:なんといっても金の問題が大きかったと思いますよ。多年にわたる裏金疑惑に国民が厳しく反応したということでしょうな。自民党は30年前にも金の問題でつまずいたことがありました。あの時は、リクルートによる利益供与が問題視されて、国民が厳しい審判をした。それがきっかけで、政局が一気に流動化し、自民党以外の勢力が政権を担うといった事態が起こった。今回もそれに劣らないインパクトを政局に与える可能性がある。
 
静女史:俄然坊さんのおっしゃるとおりだと思います。お金の問題とあわせて、統一教会の問題もあると思います。自民党はそうした不祥事について、まじめに説明することをせず、政治責任をきちんと果たそうとはしませんでした。そうした国民を軽視した傲慢な姿勢が、国民をここまで怒らしたのだと思います。今回は、自民党の無責任さに対する国民の審判だったと思います。

無覚先生:選挙の結果を整理しますと、自民党が公示前から56減らして191、公明党が8減らして24、与党全体で64減らして215となり、過半数の233を割り込んだ。一方野党のほうは、立憲民主党が50増の148、国民民主党は四倍増の28、令和新選組が三倍増の9、維新の会は5減らして38、共産党は2減らして8でした。新しい政治団体参政党と日本保守党がそれぞれ3獲得です。これを見ると、自民・公明の票が減った分、立憲民主党と国民民主党が増えたということになる。これから推すと、自民・公明への批判票の受け皿を立憲民主と国民民主がつとめたといえそうです。維新や共産はその役割を果たせず、かえって議席を減らしたということでしょう。

静女史:今回の選挙は、なんといっても与党特に自民党のオウンゴールのようなものだったと思います。解散していざ選挙という段階では、自民党はそんなに深刻な状況ではなかったといえるのではないでしょうか。ところが裏金議員をめぐる党としての対応ぶりとか、石破首相の一貫しない態度とか、そういった事情が重なって次第に国民から疑惑の目を向けられるようになりました。その国民の疑惑に自民党はあまりにも無自覚でした。だから今回は、自民党に反省を迫るという意味で、国民が自民党以外の政党に投票したということだろうと思います。立憲や国民民主党は、自分らの力で自民党を追い詰めたと思ってはいけないと思います。かれらだってそんなに信頼されているわけではない。とりあえず自民党批判の受け皿として機能しただけの話です。

無覚先生:受け皿としてなら、維新や共産にもチャンスがあったと思いますが、どちらも議席を減らしている。ということは、受け皿はどれでもいいというわけではなく、一定の条件が期待されたといえる。つまり本来自民党に行くべきだった票が向かうべき先は、自民党とあまり乖離した政党ではまずい。そこでもともと自民寄りの国民民主党とか、左翼色を薄めて中道・右寄り路線に舵を切った立憲が、その受け皿になったということでしょうね。

俄然坊居士:立憲も国民も棚から牡丹餅だったと思いますよ。かれらは自民党の不始末の恩恵を味わったというにすぎない。だいいち自ら政権を取りに行くという気迫がない。本気で政権を取るつもりなら、与野党の一騎打ちに向けて野党間調整をすべきだった。それがなんらの調整もせず、その結果野党がばらばらなまま選挙に臨んだ。もし野党一致が実現していたら、自民党はもっと議席を減らし、壊滅的な打撃をこうむったはずです。それが今回191議席まで積み上げることができたのは、野党特に立憲の贈り物といってよい。国民民主にいたっては、比例区に十分な数を用意せず、その結果自分が得るはずの議席を多党にゆずるというような無様なことをしている。これは政権を取りに行く気合が欠けていたことの表れだと思える。

無覚先生:第二次安倍政権以来、自民党は圧倒的な勢力を誇り、一強多弱といわれるような状況が12年も続いてきた。その間、野党は存在しないも同然となって、与党とくに自民党はやりたい放題のことをしてきた。そのやりたい放題の中には、安倍元首相の一連の不祥事や、岸田政権における議会軽視もあったわけで、そうした自民党のやり方におおらかだった国民が、今回は厳しい判定を下したということでしょうかね。

静女史:安倍元首相による公私混同的な振舞いが大目に見られてきたので、自民党の議員の中には、自分らは多少問題のあることをしても乗り切れると思い込んでいた議員がいるのではないでしょうか。要するに慢心と油断です。それが今回国民から厳しく審判された、といえるのではないでしょうか。

無覚先生:今回の自民党敗北の原因は、なんといっても政治と金の問題だと思いますが、石破首相にも一定の責任があるのではないか。

俄然坊居士:岸田さんが舞台からおりて石破さんにバトンタッチした時には、自民党得意の疑似政権交代が功を奏して、自民党政治が安定化するのではないという期待があった。じっさい石破さんは、長い間党内では非主流に身を置いて、ときには厳しい執行部批判を行ったりした。そういう姿勢が、石破さんへの期待につながっていた面はあると思います。ところが石破さんは、首相の座に就いたとたん、党内事情に配慮するあまり、真逆な行動をとり始めた。それが国民の眼には変節とうつり、石破さんへの幻滅を助長した。それが自民党への厳しい批判と結びついて、今回の惨敗になったといえると思います。

静女史:私はもともと石破さんには期待はしていませんでした。あの人ちょっととりとめのないといった印象が強く、親しめませんでした。うつろな目で、わけのわからないことを小声でつぶやいているといった感じで、政治家としては型破りというよりは、信用ならないといった印象のほうが強かったんです。

俄然坊居士:すくなくとも策士ではないですな。策士だったら、もっと慎重にことを運んだはずです。石破さんには状況を的確に分析して、効果的な策をタイミングよく実行するということができない。周囲からヤイノヤイノ言われて、あまり効果が期待できない策を、もっとも悪いタイミングで打ち出す、といった風情です。言葉は悪いが、間抜けとしか見えない。

静女史:石破さんにはもうチャンスはないのかもしれませんが、もし生き残ることができたら是非やってほしいことがあります。日米地位協定の改定です。この協定はあまりにもひどい。主権国家同士の関係ではなく、日本は植民地のような扱いを受けている。こんな不平等な二国間関係は、是非解消してほしい。

無覚先生:石破さんには生き残りのチャンスは非常にすくないかもしれない。このまま少数与党政権が続くとは思えないし、自民党内にも石破おろしが始まる可能性が大きい。そこで石破以後の自民党のリーダーシップが問題となる。どちらにしても、日本の政治は大きく流動化すると思います。このあたりで終わりたいと思いますが、壺齋さんから一言あればどうぞ。

壺齋散人:とくにありませんが、日本の政治が流動化するのは、悪いことではないと思います。






コメントする

アーカイブ