希望もなく フリーダ・カーロの世界

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「希望もなく(Sin Esperanza)」と題されたこの絵は、フリーダの陥っていた絶望的な状況をイメージ化したもの。背骨の矯正手術を受けて以来、彼女の体調はかえって悪化し、ベッドに伏せる日が続き、食欲がなくなって、体重は劇的に減った。主治医のエレッサーは、彼女にベッドでの安静を命じ、二時間ごとにピュレー状の食料を漏斗で摂取することにした。それをフリーダは苦痛に感じた。

画面は、ベッドに横たわったフリーダが、巨大な漏斗の先端を口の中につっこまれ、その漏斗を通じて大量の食糧が彼女の胃の中に送られる様子を描く。食料には、羽をむしられた鶏や、牛肉らしいもの、子豚や魚、そしてなぜか髑髏まである。髑髏は食料ではなく、死の象徴だろう。彼女は抵抗しようとするが、手が自由に動かずなんともしようがない。

フリーダの絶望に呼応するかのように、背景には不毛の大地が広がり、天空には太陽と月が共存している。日夜絶望に苦しむということか。なお、カンバスの裏面には次のような言葉が書きつけられている。「私には少しの希望も残っていなかった。おなかに入った食べ物はすぐに出て行ってしまった」。

(1945年 カンバスに油彩 28×36㎝ メキシコシティ、ドロレス・オルメド・コレクション)






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