アメリカ映画「ノーカントリー」 麻薬取引がらみの殺人

| コメント(0)
usa2007.nocountry.jpg

2007年のアメリカ映画「ノーカントリー(No Country for Old Men ジョエル・コーエン監督)」は、麻薬取引がらみの殺人を描いた作品。麻薬取引がこじれて殺し合いになった現場に、たまたま男が通りかかる。現場には大量の麻薬と200万ドルの現金が残されていた。男はその現金を着服するが、それがもとで殺し屋に狙われる。その殺し屋は、残忍な男で、人を殺すのが趣味のような奴だ。しかも狙った餌食は絶対逃さない。かれに狙われたものは、袋の中のネズミなのだ。じっさい、金を着服した男は、最後には殺されてしまうし、男の妻も殺されてしまう、といった内容である。

エル・パソ付近のメキシコ国境が舞台である。国境をはさんで、メキシコの麻薬組織とアメリカのギャングが取引している。そういう取引は、無論犯罪を巻き起こすし、したがってアメリカ側はそれの取り締まりに熱心である。トランプなどは、対メキシコ国境を閉鎖する理由の一つに、メキシコからの麻薬の密輸が野放しになっていることをあげている。

ともあれ、この映画の見どころは、殺し屋のクールな生きかたであろう。かれには変な趣味があって、コイン占いを言い当てた人間には危害を加えないという信念がある。かれのその趣味に付き合って、コインの裏表を言い当てた男は、命を長らえるが、金を盗んだ男はそれに付き合わなかったせいで殺されてしまうのである。もしかれが殺し屋のその趣味に付き合っていたら、少なくともかれの妻の命は助かったであろう。

その殺し屋と金を盗んだ男との対決が、緊張感をもって描写される。無論殺し屋のほうが一方的に有利なのだが、男は男なりに知恵を絞って立ち向かう。一時は殺し屋に重大な打撃を加えることに成功するが、最後にはあっさりを殺されてしまうのである。

この事件を、アメリカの地元の保安官が追う。テキサスあたりでは、警察は十九世紀の保安官制度のままだったようだ。大した組織ではなく、したがって捜査能力も限られている。そんな状態にあって、老保安官が事件の解決に努力するが、金を盗んだ男はともかく、その妻まで殺されて、かれは自分の仕事に自信を失うのだ。原題の言葉には、老いぼれには居場所がない、という意味が含まれている。





コメントする

アーカイブ