2008年のアメリカ映画「ワルキューレ(Valkyrie)」は、ヒトラー暗殺計画のなかで最大規模の「ワルキューレ作戦」をテーマにした作品。この作戦は、作戦という大げさな言葉が使われている通り、小規模な暗殺計画ではなく、軍隊の一部を巻き込んだ大規模なものだった。軍隊組織のうち予備役で構成する大部隊が、組織をあげてこの暗殺計画に関わったのである。計画は未遂におわり、関わった者たちはすべて殺されたが、この計画の挫折した9か月後には、ヒトラーとナチス政権は崩壊した。その崩壊を、この作戦が多少とも早めたのかどうか、よくはわからない。
同じテーマを扱ったものとして、ドイツの放送局が2004年に放映したテレビドラマ「オペレーション・ワルキューレ(Stauffenberg)」がある。これはタイトルからわかるとおり、首謀者の一人シュタンフェンベルクの行動に焦点をあてたものだった。シュタウフェンベルクはヒトラーの個人的な信頼を得て、それを利用した形で身辺に爆破物を仕掛けるが、偶然が災いして目論見は失敗、本人は銃殺されるという内容だった。それに対してこの「ワルキューレ」は、シュタウフェンベルクを中心にしながらも、作戦に関与したすべてのメンバーに目を配っている。暗殺計画はシュタンフェンベルクの個人的な行動ではなく、ヒトラーに反感をもつ人々が、予備役軍を総動員して実施したということになっている。それでも失敗したのは、ヒトラーのカリスマ性がまだ強い影響力をもっていたからだと伝わってくる。
色々な人間が出てくる。是非ともヒトラーを倒し、ドイツをまともな国にしたいと考える人、ヒトラーを倒すことには賛成だが、それには慎重でなければならないと主張する人、ヒトラーと反逆者とどちらが勝つかわからない、そういう状況の中で、勝つ見込みの強いほうへ味方するのが賢明だと考える人、それぞれである。警視総監は、反逆者のほうに肩入れして、墓穴を掘る結果となる。警視総監が判断を間違えたのは、反逆者たちが大規模な軍隊を動かしており、一部の地方で権力の奪取に成功したという事実に目がくらんだためである。
テレビドラマでは、反逆達は一斉に銃殺されていたが、映画では、一人づつ順番に銃殺される。シュタンフェンベルクが銃殺されるのは、最後のほうである。かれは妻子も殺される覚悟であったが、妻は21世紀まで生きたとアナウンスされる。
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