2019年のアメリカ映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(Once Upon a Time in... Hollywood クエンティン・タランティーノ監督)」は、落ち目になった俳優とそのスタントマンの冴えない日々を描いた作品。それにシャロン・テート事件をからませてある。だが、事実をかなり修正してある。マンソンの一味はシャロンを襲うかわりに主人公の冴えない俳優を襲い、逆襲されて叩きのめされることになっている。シャロンは無論死なない。だから、シャロン事件はただのさしみのつま扱いだ。
そんなわけで、荒唐無稽なエンタメ映画といってよい。ディカプリオ演じる俳優リック・ダルトンは、昔はテレビの人気俳優だったが、いまは落ちぶれて悪役専門だ。悪役だから最後は死ぬことになっている。リックはなんとか昔の勢いを戻したいと思うが、そう簡単にはいかない。それにアル中になってしまい、せりふもろくに覚えられない。撮影時にせりふが出てこないのだ。そのさいの情けない顔は、リタ・ヘイワースが認知症に苦しんだ顔と似ている。そんなリックに、イタリアのマカロニ・ウェスタンへの出演オファーがあった。リックはイタ公の映画などに出られるかと反発するが、背に腹は代えられず出演する。その結果、或る程度の人気を博して金もできる。妻をもらうこともできた。
ブラッド・ピット演じる相棒のスタントマン、クリフ・ブースは、リック専属なので、リックに仕事がないとやることがない。そこでリックの運転手兼雑用係のようなことをやっている。マンソンの一味と接触するのはクリフである。一味のなかの未成年の女から誘惑されたのがきっかけだった。クリフはスタントマンらしくがっしりした体格で、腕力も強い。ブルース・リー相手に戦って完勝するほどだ。マンソンも叩きのめす。
そのマンソンがシャロンに関心を持ったのは人違いだった。シャロンとロマンスキーが移り住んでくる前に住んでいた人物に用があるのだった。現実のマンソンは、人違いしたままシャロンを惨殺するのだが、この映画の中では、リックの家を襲って返り討ちにされることになっている。
シャロンは軽薄で頭の弱い女として描かれている。夫のロマンスキーの存在感は薄い。ただ「ローズマリーの赤ちゃん」を監督したと紹介される。ロマンスキーの度重なる少女強姦は有名だが、この映画はそのことには触れていない。
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