ヴァンスの噴水 ラウル・デュフィの世界

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1910代の後半から1920年頃にかけて、デュフィーは自分自身の独自の画風の確立に取り組んでいた。それはキュビズムやフォーヴィズムあるいは表現主義といった運動とは一線を画して、自分にしか描けないような絵でなければならなかった。「ヴァンスの噴水(La fontaine de Vence)」と題されたこの絵は、そうした努力から生まれたものである。

一見して見て取れるように、遠近法を完全に無視した徹底的に平面的な構図である。絵画はもともと立体的な対象を、二次元の平面の上に再現するのであるから、平面的に描くと言うのは、或る意味自然なのである。デュフィーはその単純なことを、意識的に追求したのであった。

構図がユニークなだけではない。色彩もユニークである。単純化された色彩の組み合わせ、その単純さを生かして、ダイナミックな躍動感を演出している。以後デュフィーの絵は、構図における徹底的な平面化と単純な色彩という道を究めていくことになる。

(1921年 カンバスに油彩 65×54㎝ パリ、国立近代美術館)






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