1920代の前半にデュフィは馬をモチーフにした作品を数多く手がけた。「サーカスの馬(Chevaux de cirque)と題されたこの絵は、その代表的なもの。これは、紙にアクリル絵の具で描いたものだが、ほかにカンバスに油彩で描いたものもある。こちらのほうが、当時のデュフィの画風をよくあらわしていると思われる。
十一頭もの馬が整然と行列する様子を描いている。おそらく舞台上で本番の演技をしているのであろう。その行列の傍らでは、調教師に調子を合わせている馬がいる。この馬が、一座の馬たちの花形なのであろう。
構図も配色も、ほかの画家には見られないデュフィ独自のものである。形は最大限単純化し、彩色は目が覚めるような鮮やかさである。デュフィがついに自分だけの画風を確立した記念碑的作品といってよいのではないか。
(1924年 紙にアクリル 53×72㎝ トゥールーズ、バンベルク財団)
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