2023年の日本映画「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら(成田洋一監督」は、敗戦直前の1945年6月14日の日本にワープした少女が、若き特攻隊員たちと出会い、生きることの意味を考えるという内容の作品。特攻隊は鹿児島の知覧をイメージしているようだ。知覧の特攻隊を描いた作品「ホタル」と雰囲気が似ている。「ホタル」に出てくる食堂のおばさんがやはり出てきて、特攻兵たちに慕われている。そのおばさんを松坂慶子が演じている。松坂は顔も体も真ん丸くなって、いかにもおばさんといったイメージだ。あまりの変わりように、当初は松坂と気づかなかったくらいだ。
母子二人暮らしの高校三年生の少女百合が、母親と喧嘩して家出し、雨の中を歩いていてトラックに煽られる。怪我した体をひきずって昔の防空壕跡に入り込み、そこで眠りに陥る。翌朝目覚めると、見慣れぬ光景が広がっていた。そこは1945年の日本のどこかだったのだ。彼女を一人の青年が介抱し、食堂につれていって食事をさせてやる。青年は、特攻隊の若い兵士だったのだ。その兵士佐久間や仲間の兵士たちと、百合のつきあいが始まる。百合は日本が戦争に負けた歴史を知っている。だから、特攻兵たちが無駄に命を失うことが耐えられない。その気持ちを表現すると、かえって非難されてしまう。
特攻兵の命ばかりではない、町の人々も米軍の空襲のために、大勢が死ぬ。その中には百合が面倒を見た少年もいる。戦争の悲惨さを直視した百合は、生きることの意味を考えるようになる。
タイトルにある「あの花が咲く丘」とは、佐久間が百合を連れて行った百合の咲き乱れる丘のことである。この丘は、静岡県袋井市にある「可睡ゆりの園」だそうだ。実際は黄色い百合だったものを、映像処理を施して白い百合にしている。それが密生する有様が迫力満点だ。小生が少年時代に過ごした千葉県の佐倉でも、ちょっとした丘の中に百合が咲き乱れていたものである。
百合は佐久間から「あきら」と呼んでくれと言われる。百合と同い年の妹もかれをそう呼んでいたからだという。おそらく母親がかれをそう呼び、それを妹が真似したのだろう。小生の妹もやはりそうだった。
百合が母親と喧嘩した理由は、大学への進学をめぐって意見が異なったからだ。百合は貧乏な暮らしにうんざりしており、高校を卒業したら働きたいと思っていた。ところが佐久間とあったことで、自分も佐久間と同じように大学に入って教師になりたいと思うようになる。そんな娘を母親は頼もしく思うのだ。
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