内藤瑛亮の2012年の作品「高速ばぁば」は、オカルト風のホラー映画である。ホラーと言っても少しも怖い感じはしない。子供だましのような安直さを感じさせる。内藤がなぜこんな映画を作る気になったか。この映画は、プロデュース会社ダブル・スタンダードが企画したホラー三部作の一つで、その監督を内藤が引き受けたということらしい。そんなこともあって内藤は、あまり本気になっていなようである。
老人施設で虐待されて死んだ老人の怨念が、高速ばぁばという妖怪として出現し、アイドル・グループの少女たちに襲いかかるといった設定である。少女が妖怪に襲われるのだから、それなりにホリブルではあるが、高速ばぁばは少女に変身するので、憎らしさを感じさせない。一方、少女たちの間には反目がある。その少女たちは三人でアイドル・グループを結成して売り出し中なのだが、アヤネという少女の人気を他の2人が妬み、アヤネの顔に傷をつけたりする。その不仲につけこんで、高速ばぁばがこの世にあらわれ、まずアヤネに乗り移るのである。
その後、高速バァバの怨恨は、色々な人々を破滅させる。挙句の果てに、まゆこという少女を死なせ、まゆこをかばおうとしたナナミに乗り移る。
この映画になにか意味があるとしたら、それは施設で虐待された老人の怨念が高速ばぁばという妖怪になったということだろう。施設における老人の虐待事件としては相模原事件が有名だが、この映画はそれ以前に作られており、その点では先駆性を感じさせないでもない。
少女同士の妬み愛は、よくある話で、とりたてて問題にすることもなかろう。
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