マイケル・ムーア「ボウリング・フォー・コロンバイン」 銃規制を考えるドクメンタリー映画

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マイケル・ムーアの2002年の映画「ボウリング・フォー・コロンバイン(Bowling for Columbine)」は、アメリカにおける銃犯罪の多発に刺激されて、銃規制をテーマにしたドキュメンタリー映画。全米ライフル協会(NRA)会長チャールトン・ヘストンへの取材だとか、アメリカ最大の武器製造会社ロッキード社長への取材などを交え、アメリカがなぜ武器を野放しにして、その結果世界に例を見ない銃犯罪国家になっているか、について考えさせる内容となっている。

マイケル・ムーア自身は、自衛のために銃で武装すべきだという思想の持ち主であるが、アメリカの銃犯罪があまりにも多発している現状には批判意識をもっているようである。この映画の中では、1999年にコロラドで起きたコロンバイン高校銃乱射事件とか、1995年のオクラホマ連邦ビル爆破事件が取り上げられているほか、ムーアの地元フリントで起きた6歳の児童による同年齢の少女銃殺事件もとりあげている。

オクラホマの事件、コロンバインの事件いずれとも、その直後にNRAがその地で集会を催し、銃保持の自由についてアピールした。ムーアはそれがあまりに無神経だと思い、NRA会長のへストンに取材を申し込んだ。ヘストンは有名な映画俳優で、マッチョな役柄が多かった。それが晩年NRAの広告塔になり、銃による自衛の権利を声高く叫んだ。ムーアによる質問にはまともに答えない。

ロッキードの社長に取材を申し込んだのは、ロッキードが世界最大の攻撃用航空機のメーカーだからだろう。ロッキードは戦争から利益を得ている。だがそのことを表立っては言わない。政府の政策に協力しているだけだと言う。その政府、つまりアメリカ政府にムーアは厳しい。アメリカ政府の歴史は、他国への暴力行使の歴史だと断罪する。たしかにそうで、アメリカという国は、常に暴力をふり続けていなければ納得できないのである。

アメリカに銃犯罪が多発するのは、銃規制がなされていないからか。そこで隣国カナダの現状を調べてみる。カナダも国民の銃保有率はアメリカ並みに大きい。だが銃犯罪は少ない。なぜそうなのか。インタビューを受けたカナダ人は、国民性の相違だろうと言う。アメリカは暴力の上に成り立っている国で、国民は隣人を信頼しない。カナダ人は、アメリカ人ほど暴力的だったことはなく、国民同士が相互に信頼しあう度合いも大きい、と言うのである。

アメリカ人が暴力的なのは、社会全体が暴力を礼賛しているからだとムーアは考える。政府から一般企業に至るまで、なんでも暴力に訴える傾向が強い。テレビのCMは、視聴者を暴力礼賛的にするよう誘導している。そんな傾向を見ると、アメリカという国は、国民全体を暴力礼賛的な方向へと誘導しているのではないか。ムーアは愚民化政策という言葉を使ってはいないが、国民を暴力礼賛的な人間に仕立てていくのは、立派な愚民化政策である。ムーアは「アホでマヌケなアメリカ白人」という言葉が好きだが、そうしたアメリカ白人は、組織的な愚民化政策の結果生まれたと言えなくもない。





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