マイケル・ムーア「シッコ」 アメリカの医療・保険制度の問題をあばく

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マイケル・ムーアの2007年公開の映画「シッコ(Sicko)」は、アメリカの医療・保険制度の問題を批判的に取り上げたドキュメンタリー映画。2007年時点でのアメリカは、オバマケア以前の状態で、無保険のものが5000万人もいた。保険に入っている人でも、安心してはいられない。保険会社がいろいろと難癖をつけて、保険金の支払いを拒否しようとするからだ。たとえば、事故で失神したまま救急搬送された女性が、救急車の料金の支払いを拒否された。救急車を利用する場合には、事前にその旨を申請しなければ、支払いの対象とはならないというのだ。ちなみに、日本を含めた大部分の先進国では、救急車は無料である。ところがアメリカでは、一台につき数万円の料金支払いを求められるという。また、癌の手術に60万ドルを請求された。日本円に換算すれば一億に近い、医療費に一億円かかるなど、日本人の感覚からすれば理解できないことだ。

こんな具合にアメリカの医療制度は非常に問題がある。この映画が公開された時点では、改善しようとする動きは見られなかった。議員たちが邪魔しているからだ。ムーアは、彼ら議員は民主・共和をとわず、保険会社に買収されているから、保険会社の言いなりになっているのではないかと疑問をぶつけている。アメリカの議員たちが買収されやすいことは、たとえば強固なイスラエル支持にも見られる。かれらは国内のユダヤ人の意向をうけて、イスラエル国家のジェノサイドまで正当化しているのである。

アメリカの医療制度がいかに特異か。ムーアは、カナダ、イギリスなどほかの国の医療制度と比較しながらその問題点を洗い出している。カナダもイギリスも医療費は基本的に無料である。救急車を呼んで金をとられることもない。イギリスでは、NHSの歴史は1940年台後半に始まり、いまや国民生活の土台になっている。かりにそれを廃止しようとすれば、国民は怒り狂って革命が起こるだろうと推測される。アメリカで保険会社がぼろもうけをしているのは、公的な制度による介入が存在せず、保険会社が単独で利用者と向きあっているからだ。そういう関係では、利用者は保険会社の言いなりになるほかはない。

保険会社の相談員とか審査医というのが出てきて、保険会社がいかに恣意的に行動しているか、その内幕を暴露している。その連中の役割は、保険会社が保険金を支払わないですむように画策することだというのだ。そんなシステムでは、折角保険に入れたとしても、満足な処遇は期待できないわけだ。

この映画が追及しているのは、オバマケア以前の時代のアメリカである。オバマケア以降のアメリカは、多少ましになったといわれるが、それでもトランプなどは、その廃止をもくろんでいる。アメリカ人は、オバマケアを取り上げられても、革命を起こしたりはしないのだろうか。なおこの映画には、Me-too運動で悪名をはせたハーヴェイ・ワインスタインがかかわっている。






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