「ダナエ(Danae)」と題されたこの絵は、クリムトの影響を強く感じさせる作品。シーレは、1908年に催された国際美術展「クンストシャウ」で、クリムトの「ダナエ」を見て非常に印象づけられた。この作品は、クリムトの「ダナエ」の、シーレなりの翻案である。
クリムトの「ダナエ」は、神秘的な受胎をモチーフにしていた。ダナエが、膝を顔につけるようにして身をかがめ、受胎の瞬間の恍惚感に耽っている。その恍惚感をシーレは、自分なりに表現した。
クリムトの「ダナエ」は、かなり装飾的なイメージである。それに対してシーレのダナエは、装飾性を抑制して、精神性を表面に打ち出している。うつむき加減のダナエの表情は、受胎の喜びに震えているように見える。
(1909年 カンバスにメタリックカラー 80×125.4㎝ プライベート・コレクション)
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