妹のゲルトルーデ・シーレをモデルにしたこの絵は、「黒い帽子の女」とほぼ同じ時期に制作された。クリムトの影響との格闘が読み取れる。クリムトは、背景を含めて装飾的なイメージを押しだしていたが、シーレはそうした装飾性をなるべく排して、対象をありのままに表現したいという願望を抱いていた。
この絵は、背景を無地に近くして、対象を浮かびあがらせるよう工夫している。「黒い帽子の女」も、背景を無地に近く仕上げているが、もともとは装飾的なものだった。あとでそれを塗りつぶして、無地に近くした。
ゲルトルーデは椅子に腰かけている姿勢だが、極度に平面的な表現なので、遠近感や立体感はまったくなく、フォルムの輪郭も曖昧である。
(1909年 カンバスに油彩とメタリックカラー 140.5×140㎝ ニューヨーク、近代美術館)
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