アルトゥール・レスラー(Arthur Roessler)は画商を営む美術評論家で、1909年の「新芸術集団」の展覧会に批評を寄せたことで、シーレと付き合うようになった。以後かれはシーレにとっての有力な後ろ盾になる。この肖像画は、レスラーの注文に応じて、1910年に制作したものである。
レスラーは、顔を横に傾け、それに応じて上半身も大きくねじる姿勢でポーズをとっている。この姿勢は、前年に描いた「ゲルトルーデ・シーレ」のポーズとよく似ている。体のねじり方は、こちらのほうが激しく見える。
シーレは、レスラーの肖像画を、このほかにもいくつか制作している。二人の関係が親密だったあかしだろう。レスラーは、シーレについての印象記を折に触れて発表し、シーレ評価の高まりに一定の役割を果たした。
(1910年 カンバスに油彩 99.6×99.8㎝ ウィーン、市立歴史博物館)
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