
「ほおずきのある自画像(Selbstbildnis mit Lampionfrüchten)」と題されたこの絵は、構図的には「黒い陶器の壺のある自画像」とよく似ている。こちらには黒い壺に擬したシーレの分身はいない。そのかわり、ほおずきの実が一層大きく表現されている。
分身がいないだけ、モデルとしてのシーレの存在感は大きい。画面の大部分をかれの上半身が占め、頭部は一部がはみ出している。顔をやや斜にかまえ、眼は観客を正視している。その表情はいかにも挑発的で、シーレの強烈な自意識を感じさせる。
色彩も強烈である。ほぼ真っ白な背景から、シーレの黒いジャケットと赤ら顔が浮かびあがり、背景との間に強いコントラストを表現している。また、ほおずきの実は実物より大きく描かれ、数は少ないながらも、大きな存在感を発揮している。
この作品は、シーレの自画像のなかでもっとも有名な作品である。
(1912年 カンバスに油彩 32.2×39.8㎝ ウィーン、レオポルト美術館)
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