頭を下げた自画像 エゴン・シーレの自画像

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「頭を下げた自画像(Selbstbildnis mit gesenktem Kopf)」と題されたこの絵は、とかく常軌を外れたイメージのシーレの自画像のうちでも、グロテスクの度合いが強いものだ。ぼさぼさ頭で口ひげを蓄えたシーレは、頭をやや下げた形で、するどい眼光を発している。その眼光は、三日月型の白目によって強調されている。観客はその眼光にとらわれて、シーレが顔の前に突き出した右手にあまり留意しない。その右手は奇妙な様子に指をひろげ、モデルの精神状態の異常さを暗示している。

シーレは短い生涯に200点ほどの自画像を描き、その大部分は1910年からの四年間に集中している。また、シーレが口ひげを蓄えたのは、1911年の秋ごろから1912年の前半にかけてのことだった。シーレは1911年の4月にわいせつ行為を理由に警察に拘留されており、その際に口ひげを剃ったと思われる。

この絵におけるシーレの頭部の表現は、ほぼ同時期に描かれた大きな作品「隠者達」の中にもほぼ同じ形で繰り返されている。

(1912年 カンバスに油彩 42.2×33.7㎝ ウィーン、レオポルト美術館)






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