囚人としての自画像 シーレの自画像

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エゴン・シーレは、1912年4月13日に、児童をポルノグラフィのモデルにした罪状で刑務所に入れられた。その直後から、拘禁されている自分のイメージを描き始めた。拘禁中の自画像はかなりの数にのぼる。いすれも紙に鉛筆と水彩絵の具で描いている。それらは「囚人としての自画像(Selbstbildnis als Gefangener)と呼ばれている。

この絵もその一つ。拘禁されてから三日目に描いたといわれる。紙と絵の具は与えられたが、鏡は許可されなかったので、シーレは自分のイメージを思い浮かべながら描いた。そのシーレの表情はいかにも情けないものだ。自分は権力によって虐げられている、といった訴えが伝わってくる。

画面右上の文字は次のように読める。「芸術のためそして愛するもののために、ぼくは喜んで耐えよう」。随分とナルシスティックな言い分である。画面を見ると、シーレの顔はゆがんでおり、とても自分の運命を耐え忍んでいるようには見えない。

(1912年 紙に鉛筆と水彩 48.2×31.8㎝ ウィーン、アルベルティーナ素描版画館)






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