枢機卿と尼僧 エゴン・シーレの世界

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「枢機卿と尼僧(Kardinal und Nonne)」と題されたこの絵は、シーレのカトリックへの反感を表現した作品といわれる。シーレは、クルマウでの迫害を経て、ノイレングバッハでは警察に拘留されたのだが、それは近隣住民の反発を受けたものだった。近隣住民は、シーレが未成年者にポルノまがいのことをさせていると言って糾弾したのだった。それがシーレにとっては、カトリックによる芸術の弾圧として受け取れた。オーストリアはカトリックの多い国柄で、性的なことについては非常に敏感である。まして子どもを巻き込む行動は許しがたいものであった。



そうしたオーストリア人の姿勢をカリカチャイズしたのがこの絵である。枢機卿と尼僧はカトリックの象徴のようなものだ。それを徹底的に侮蔑した。枢機卿が尼僧に性的な仕草を仕掛けている。枢機卿の表情には猥褻さを感じる。一方尼僧の表情には羞恥を感じる。

構図も色彩も大胆である。漆黒を背景にして二人の人物のもつれあうさまが描かれているが、中央部の鮮やかな赤は、かれらの衣装の一部ではないようだ。これも背景の一つなのだろう。とにかく赤と黒のコントラストが強烈である。

(1912年 カンバスに油彩 69.8×80.1㎝ ウィーン、レオポルト美術館)






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