
「聖家族(Heilige Familie)」と題されたこの絵は、シーレとワリーをモデルにしており、二人には子供がいるように描かれている。しかし、ワリーが子供を産んだと事実はない。だからこの絵のモチーフは、シーレが勝手に想像したものである。なぜそんな想像をしたのか、よくはわからない。
二人の位置関係はかなりデフォルメされており、またところどころ幾何学的なパターンの模様が配されている。これはほかの画家には見られないシーレ独特の画面配置である。
子どもは丸い空間の中におり、あたかも母親の子宮にいるように見える。それにしては、両手を奇妙なふうに広げており、胎児のようには見えない。両手の奇妙な組み合わせは、シーレ自身にも見える。ワリーの片方の手は、子どもを包み込んだ空間の表面を撫でている。
(1913年 紙にグアッシュ 47×36.5㎝ プライベート・コレクション)
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