
「死と乙女(Tod und Mädchen)と題されたこの絵は、シーレとワリーをモデルとした作品の最後のものである。死神がシーレ、乙女はワリーをあらわしている。この絵の中のシーレは、ワリーにとって死神なのである。というのも、シーレは知り合ったばかりのエディットが気に入り、彼女と結婚する気になった。そこでワリーに事情を告げると、ワリーは絶望的な気持ちになった。この絵は、絶望するワリーと、死神のように残酷なシーレ自身の表情を描きだしている。
シーレはワリーに未練があって、エディットと結婚したあとも定期的に会おうと提案した。ワリーは決然として拒絶した。その後ワリーは学校へ通って看護婦の資格をとり、第一次大戦に従軍してダルマチア戦線で死んだ。シーレのほうは、その翌年に、スペイン風邪で死んだ。エディットもシーレに先立って死んだ。
そういう事情を勘案すると、この絵の中の死神は、シーレにもとりついているわけである。
(1915年 カンバスに油彩 150×180㎝ ウィーン、オーストリア美術館)
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