シビル・ウォー アメリカ最後の日 アメリカの分断を描く

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2024年のアメリカ映画「シビル・ウォー アメリカ最後の日(Civil War アレックス・ガーランド監督)」は、近未来におけるアメリカの内戦をテーマにした作品。内戦の原因は、大統領が憲法を無視して三選したことに、一部の州政府が反発して合衆国から離脱、また、カリフォルニア州とテクサス州が西軍を結成し、政府軍との間で戦争が始まった、という設定。一見して荒唐無稽に見えるが、あながちありえない話ではない。アメリカは今や深い分断に直面しており、いつ内乱がはじまってもおかしくないと思っている人は多い。トランプという男が、アメリカをそのように変えた、というメッセージがこの映画からは伝わってくる。

映画はしかし、内乱そのものに焦点をあてているわけではない。戦争の取材に情熱をかけているジャーナリストの生き方が直接のテーマだ。かれらは内乱の生々しい現実を記録するとともに、内乱の原因を作った大統領にインタビューしたいと考えている。ニューヨークからワシントンDCに行くつもりだが、内乱の影響でフィラデルフィア経由ではいけないので、いったんピッツバーグまで行って、そこからウェスト・ジャージニア経由でDCに向かう。その途中さまざまなことに遭遇する。そしてDCでは大統領に会うことができるが、大統領は命乞いをするばかりという内容である。

ジャーナリストは4人いる。リーという名の女性カメラマンとその同僚の記者ジョエル、かれらの先輩サミー、リーにあこがれる若い女性カメラマン、ジェシーだ。このうちサミーは殺され、また東洋系のジャーナリスト二人も殺される。最初に殺されるのは東洋人二人である。同じ殺すならとりあえず東洋人から、というような人種差別意識を感じさせる場面である。その後、DCでの混乱の中でリーも死ぬ。生き残ったジェシーは、手当たり次第に内戦の状況を撮影すると言った具合だ。

アメリカの内戦というアイデアが尋常ではない。いくら分断が深まっているからと言って、それが内戦に発展すると言うのは安易な考えというほかはない。トランプのことだから、三選は無論終身大統領までめざすかもしれないが、しかしそれだからといって、政敵が叛乱をおこすとは考えられない。

命乞いをするアメリカ大統領のイメージが弱弱しい。こんな情けない心掛けでは大統領が務めるわけもない。






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