英詩と英文学
エミリー・ディキンソンの詩から「この世で終りにはならない(This world is not Conclusion)」(壺齋散人訳)
この世で終わりにはならない
あちらにももうひとつある
音楽のように目に見えないけど
音のようにたしかに
それは手招きするがはねつけもする
哲学にもわからない
結局謎の中を
智慧は通らねばならないのだ
それを想像しようとして学者は悩み
それを得ようとして人々は
幾世代にわたってさげすまれ
十字架を演じてきた
信仰はつまづいたり、笑ったり、持ち直したりする
誰かが見ていれば赤面し
証拠の小枝をもぎり取り
風見に道を聞いたりする
祭壇からは大げさな身振りが見え
はでなハレルヤがこだまする
麻酔剤でもしずめられない
魂をむしばむ歯の痛みを
エミリー・ディキンソンの詩から「コマドリたちがやってきたときに(If I should n't be alive)」(壺齋散人訳)
コマドリたちがやってきたときに
もしも私が生きていなかったら
赤いネクタイをしたやつに
記念にパン屑をあげて下さい
エミリー・ディキンソンの詩から「私が死のために停まることができないので(Because I could not stop for Death)」(壺齋散人訳)
私が死のために停まることができないので
死の方で親切にも停まってくれた
馬車の中には私たち二人と
永遠がいるだけだった
エミリー・ディキンソンの詩から「苦悩の表情(I like a look of agony,)(壺齋散人訳)
私は苦悩の表情が好きだ
それが本当だと知っているから
人々はわざと痙攣して見せたり
苦しんでるふりをしたりはしない
エミリー・ディキンソンの詩から「わたしは美のために死んだ(I died for beauty, but was scarce)」(壺齋散人訳)
わたしは美のために死んだ
そして墓に横たわるや否や
真実のために死んだ人が
隣りの部屋に横たえられた
エミリー・ディキンソンの詩から「アラバスタ―(Safe in their alabaster chambers)」(壺齋散人訳)
アラバスターの部屋でやすらかに
朝にも邪魔されず 昼にも邪魔されず
復活を待つ柔和な人々が眠っている
サテンの垂木 石の屋根の下で
エミリー・ディキンソンの詩から「宝石(I held a jewel in my fingers)」(壺齋散人訳)
宝石を握りしめながら
わたしは眠ったの
その日は暖かく 風も穏やかだった
わたしはいった 離さないわと
エミリー・ディキンソンの詩から「嵐の夜よ!(Wild nights! Wild nights!)」(壺齋散人訳)
嵐の夜! 嵐の夜よ!
あなたと一緒なら
嵐の夜もすてきな
ひと時にかわる
エミリー・ディキンソンの詩から「教会で安息日を過ごす人がいるけど(Some keep the Sabbath going to church)(壺齋散人訳)
教会で安息日を過ごす人がいるけど
わたしは自分の家で過ごすの
ボボリンクを聖歌隊代わりに
果樹園を礼拝堂代わりにして
エミリー・ディキンソンの詩から「詩人たちが歌う秋のほかに(Besides the autumn poets sing)」(壺齋散人訳)
詩人たちが歌う秋のほかに
いくらか散文的な日々がある
雪のすこしこちら側に
薄靄のちょっぴりあちら側に
エミリー・ディキンソンの詩から「夏 鳥たちに遅れて(Farther in summer than the birds)」(壺齋散人訳)
夏 鳥たちに遅れて
草むらで悲しそうに
小さな者たちの一団が
控えめなミサを執り行う
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