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セザンヌは、静物画と並んで人物画もよく描いた。だが、セザンヌの人物画の描き方は一風変わっていた。人物画と言えば、モデルの人柄とか雰囲気とかがおのずと漂ってくるように描くのが普通のやり方だが、セザンヌの絵の中の人物たちは、そうした人間的な個性というものを感じさせない。まるで、人間の姿形をした静物であるかのように、人物を描いている。

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「花瓶のある静物(Nature morte au vase pique-fleurs)」と題した1905年のこの絵は、1899年に完成した前掲の二作、「カーテンと水差しのある静物」及び「リンゴとオレンジ」と同じモチーフを描いている。セザンヌは1890年代の末から2000年代の初頭にかけて、このモチーフを6点描いたが、これはそのうちの最後のものである。

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セザンヌは髑髏のオブジェをいくつか所有していて、それらをモチーフに何点か描いている。「髑髏のある静物(Nature morte au crane)」と題した1900年のこの絵は、その代表的なものだ。

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1899年に描かれた「リンゴとオレンジ(Pommes et oranges)」と題するこの絵も、やはり同年に描かれた「カーテンと水差しのある静物」(前掲)とほぼ同じ対象をモチーフとしている。ただ、アングルとモチーフの配置が幾分か異なっている。

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1890年代の末に、セザンヌの静物画はその頂点に達した。構図と言い、色彩と言い、セザンヌが追求してきた絵画の理念が、もっとも完成した域に到達したといってよい。

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「玉ねぎのある静物(Nature morte aux oignons)」と呼ばれるこの絵は、前掲の絵「ペパーミントの瓶(Nature morte à la bouteille de peppermint)」と構図が似ている。背景が広いこと、モチーフが左に偏っていることなのだ。背景が広いことでは、この絵の方がはるかに広いと言ってもよい。というのも、前掲の絵では、背景の壁の一部が窓のようになっていて、その分、だだっ広い感じを相殺していたのが、この絵では、窓も何もない壁が、寒色の色合いのまま、だだっ広く広がっている印象を与えるからである。

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キューピッドの石膏像(l'Amour en plâtre)のある静物画を、セザンヌは何点か描いているが、これはそのうち最も有名になったもの。有名になったわけは、この絵の構図が極めてユニークなことにある。

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1894年には、セザンヌは何点かの静物画で実験的な試みをしているが、中でも「ペパーミントの瓶(Nature morte à la bouteille de peppermint)」と題したこの絵は、最も強い実験性を感じさせる。

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セザンヌは1890年代に入ると、静物画のモチーフの一つとして、模様入りのテーブルクロスを入れるようになる。それ以前には、白いナプキンが用いられていたわけだが、白いナプキンが、果物の効果を盛り上げるための脇役として用いられていたとすれば、模様入りのテーブルクロスは、それ自体に絵画的な効果を盛り込んだものだ。

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1894年に完成したこの静物画は、日本では「生姜壺と砂糖入れと林檎のある静物」の名で通っているようだが、原語では単に「静物(Nature morte)」という。さまざまなものが雑多に並べられており、テーマを絞るのがむつかしいからだろう。

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これは、絵は自然の再構成だというセザンヌの主張が典型的に投影された作品といえる。目の前の物を見えるとおりに描いたら、決してこんな絵にはならない。真ん中に立っている瓶は不自然に傾いているし、皿の上のビスケットは今にも崩れそうだし、第一テーブルの形がゆがんでいる。向う側の縁のラインが右と左で一致していないし、手前の方も一致していないばかりか、側面部分もごちゃごちゃとして、まとまった形になっていない。

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「調理台(La table de cuisine)」と題されたこの絵は、日本では「果物籠のある静物」として知られている。調理台の向かって右端に描かれている果物籠に着目した命名だろう。その果物籠だが、一見してほかのモチーフとの間で緊張感を醸し出しているのがわかる。台を含めた他のモチーフがななめ上からの視線で描かれているのに対して、この籠は真横から見られたように描かれているのだ。そのため、他のモチーフから孤立し、まるで空中に浮かんでいるようにも見える。

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「サクランボと桃(Cerises et pêches)」と題するこの絵は、セザンヌの静物画の歩みにとって、一つの画期をなすものである。この絵は、1883年に描き始めてから完成まで4年の歳月を要しているが、同年に完成した静物(Nature Morte)と比較しても、技法上の顕著な進化が指摘できる。

静物(Nature Morte):セザンヌの静物画

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単に「静物(Nature Morte)」と題した、1887年に完成したこの絵は、セザンヌの技術が一層深化したことを物語っている。モチーフを暗い背景とのコントラストに置いて浮かび上がらせることは依然としているが、全体に画面がクリアになっており、しかも暖かい雰囲気を感じさせる。暖色を多用しているためだ。

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1882年に完成した「コンポートのある静物(Nature morte avec compotier)」と題するこの絵は、セザンヌの静物画の流れにとって一つの転機をなす作品だとの評価が高い。それは、セザンヌの中期以降の静物画に特徴的な、画面全体に溢れる色彩の律動感のようなものが、この絵で明確な形をとったからだ。この作品のもつ素晴らしい色彩感は、とりわけゴーギャンに強い影響を与えたといわれる。

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「リンゴとナプキン(Pommes et serviette)」と題するこの絵の最大の特徴は、小刻みなタッチで並行に絵の具を塗っていく画法にある。この画法を、セザンヌは1870年台の後半に意識的に追求したわけだが、静物画においては、この絵がその到達点になったと言ってよいだろう。画面全体にわたってセザンヌは、絵の具を小刻みに、しかも同一方向に平行に塗りつけている。

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「果物とワイングラスのある静物(Nature morte avec fruits et verre de vin)」と題するこの小さな作品は、大きな絵の一部を切りぬいたものだろうと考えられている。たしかに、最初から構想された画面としては多少不自然なところがないでもない。しかしこれはこれで、それなりにまとまっているともいえよう。

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1870年代のセザンヌは、ピサロの影響下に印象画風の明るい絵を描くようになるが、静物画にもそうした傾向がうかがえる。光を意識しながら、色の明暗によって対象の形を表現しようとしている。「ビスケットの皿とコンポート(Compotier et assiette de biscuits)」と題するこの絵は、そうした70年代のセザンヌの静物画の到達点を示すとともに、80年代以降の、いわゆるセザンヌらしい静物画への橋渡しのような役目を果たすものとして位置付けられている。

セザンヌの静物画

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ポール・セザンヌ(Paul Cézanne, 1839 - 1906 )は、生涯に200点以上の静物画を描いた。こんなに多くの静物画を描いた画家は、他にいないのではないか。そんなにセザンヌが静物画にこだわった理由は何だろうか。

聖ヨハネの幻視:エル・グレコの幻想

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エル・グレコの生涯最後の仕事は、トレドのタベーラ施療院礼拝堂の祭壇画を描くことだった。この祭壇は中央檀のほか左右の脇祭壇からなっており、中央祭壇には聖ヨハネによるキリスト洗礼が、脇祭壇には聖ヨハネの幻視と受胎告知が描かれた。聖ヨハネの幻視はまた「聖ヨハネによる黙示録の第五の封印」とも呼ばれている。このように聖ヨハネの足跡を描いているのは、この病院の正式名称が「サン・フアン・バウティスタ」すなわち、聖ヨハネ病院であることによる。フアンはヨハネのスペイン語の形である。

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