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ホガースの版画シリーズ「勤勉と怠惰(Industry and Idleness)」の第十二作目は、「勤勉な徒弟はロンドン市長(The Industrious 'Prentice Lord-Mayor of London)」と題する。勤勉な徒弟フランシス・グッドチャイルドが、勤勉にむくわれて出世を重ね、ついにロンドン市長に選ばれた様子を描く。この絵は、おそらく就任に伴う儀式なのであろう、市長が馬車に乗ってロンドン市内を行進している
様子を描いている。

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ホガースの版画シリーズ「勤勉と怠惰(Industry and Idleness)」の第十一作目は「怠惰な徒弟はタイバーンで処刑される(The Idle 'Prentice Executed at Tyburn)」と題する。怠惰な徒弟トム・アイドルが、悪行の報いを受けて処刑される様子を描いたもの。絵は、大勢の人々が注視するなか、処刑場に引き立てられるトムを描く。タイバーンとは、ロンドン郊外にある村の名前で、12世紀の末から18世紀にかけて絞首台の処刑場がある場所として知られていた。

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ホガースの版画シリーズ「勤勉と怠惰(Industry and Idleness)」第十点目は、「勤勉な徒弟は市議会議員、怠惰な徒弟は共犯者によって弾劾される(The Industrious 'Prentice Alderman of London, the Idle one brought before him & Impeach'd by his Accomplice)」と題する。かつて同僚だったフランシスとトムが再会する場面だ。その再会は、市議会議員になったフランシスの前に、トムが引き出されるというものだった。トムは悪事の共犯者から売られたのである。

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ホガースの版画シリーズ「勤勉と怠惰(Industry and Idleness)」の第九点目は、「怠惰な徒弟が売春婦に裏切られ、共犯者ともども木賃宿につれていかれる(The Idle 'Prentice betrayed (by his Whore), & taken in a Night-Cellar with his Accomplice)」と題する。トムが売春婦に騙され、官憲につかまるところを描く。

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ホガースの版画シリーズ「勤勉と怠惰(Industry and Idleness)」の第八作は、「勤勉な徒弟は豊かになり、ロンドンの保安官になる( The Industrious 'Prentice grown rich, & Sheriff of London)」と題する。勤勉に報われて成功したフランシスが、ロンドンの保安官となり、その優雅な姿を披露しているところを描く。保安官は、選挙によって選ばれ、シティの治安の任務にあたる名誉ある職である。

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ホガースの版画シリーズ「勤勉と怠惰(Industry and Idleness)」の第七作は「怠惰な徒弟は海から戻り、売春婦と屋根裏にいる(The Idle 'Prentice return'd from Sea, & in a Garret with common Prostitute)」と題する。悪党仲間と海で暮らしていたトムは、久しぶりに陸に上がり、とりあえず屋根裏部屋で売春婦と一緒に暮らしている。この絵は、その屋根裏部屋のベッドの上に、売春婦と一緒に横になっているトムを描く。

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ホガースの版画シリーズ「勤勉と怠惰(Industry and Idleness)の第六点目は、「勤勉な徒弟が年季奉公を終え、主人の娘と結婚する(The Industrious 'Prentice out of his Time, & Married to his Master's Daughter)」と題する。年季奉公を終えたフランシスが、主人の事業の共同経営者になったうえに、主人の娘と結婚した様子を描く。

共同経営者となったことは、店の看板に"WEST and GOODCHILD" とあることからわかる。この絵は、フランシスの成功を祝って、楽団のメンバーらが店に押しかけてきた様子を描く。窓から身を乗りだし、楽団員にコインを渡しているのがフランシス、その背後には新妻が控えている。また、玄関先で皿のようなものを差し出しているのは、店員であろう。結婚祝いの施し物を配るための受け皿を与えているのである。

施し目あてにやってきたものの中には、傷痍軍人らしきものもいる。左端で、盥のなかに入っている脚のない男だ。この男は、おそらく戦場で脚を失ったのであろう。彼が手に持っている紙には、二人の結婚を祝う曲の歌詞が書かれている。

遠景にはロンドン記念碑の下部が見える。17世紀半ばのロンドン大火を記念した建物だ。その大火で、中世のロンドンの街並みは消失した。


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ホガースの版画シリーズ「勤勉と怠惰(Industry and Idleness)」の第五点目は「怠惰な徒弟は追放され、海へ送られる(The Idle 'Prentice turn'd away, and sent to Sea
)」と題する。怠惰な徒弟トム・アイドルが、ついに親方から愛想をつかされ、追放されてしまうところを描く。それにはフランシスの助言もあったと思われる。追放されたトムは、どういうわけか、遊び仲間とともに船に乗って、いづことも知れぬ場所に向かっている。

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ホガースの版画「勤勉と怠惰(Industry and Idleness)」シリーズ第四点目は、「勤勉な徒弟は気に入られ親方に信頼される( The Industrious 'Prentice a Favourite, and entrusted by his Master)」と題する。勤勉な仕事ぶりを親方に評価され、気に入られたうえに信頼されるフランシス・グッドチャイルドを描く。

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ホガースの版画「勤勉と怠惰(Industry and Idleness)」シリーズの第三点目は「教会内で礼拝中遊んでいる怠惰な徒弟(The Idle Prentice at Play in the Church Yard, during Divine Service)」と題する。休日にフランシス。グッドチャイルドとは全く違うことをしているトム・アイドルを描く。彼は教会の礼拝堂でお祈りをするかわりに、教会の一角でけしからぬ遊びにふけっているのである。

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ホガース「勤勉と怠惰(Industry and Idleness)」シリーズの第二点目は、「キリスト教徒の義務を果たす勤勉な徒弟(The Industrious 'Prentice performing the Duty of a Christian)」と題する。二人の徒弟は、親方から日曜日を休日にしてもらい、自分なりの時間を過ごす。その時間を、フランシス・グッドチャイルドは、教会へ行くことに費やす。

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ウィリアム・ホガースは、1647年に「勤勉と怠惰(Industry and Idleness)」と題する版画のシリーズを出版した。「娼婦と遍歴」(1631)の延長上にある教訓ものである。「娼婦と遍歴」では、世の中を甘く見たために身を落とし、若くして死んだ女性がテーマだったが、このシリーズでは、勤勉な人間と怠惰な人間の生き方を対比させて、怠惰は身を滅ぼし、勤勉は成功に導くということを、教訓として説教している。いかにも説教好きなホガースらしい作品と言える。ホガースは、これをより多くの人に見てほしいと思い、比較的安い値段で売り出した。評判はよかったようである。

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ホガースの版画シリーズ「娼婦の遍歴(A Harlot's Progress)」第六点目は「モルの通夜(Moll's wake)」と題する。モルは二十三歳の若さで梅毒のため死んだ(棺の蓋にそう書かれている)。この絵は、棺に納められたモルを悼むために集まった人々を描いている。大部分は娼婦の仲間で、そのほか神父や葬儀屋また家主もいる。

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ウィリアム・ホガースの版画シリーズ「娼婦の遍歴(A Harlot's Progress)」第五作目は、「梅毒で死につつあるモル(Moll dying of syphilis)」と題する。モルが職業病の梅毒にかかり、重症化していまにもい死につつある様子を描く。死に直面する人にしては、ベッドに寝かせられているわけでもなく、椅子に腰かけたままのぞんざいな扱われ方である。

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ホガースの版画シリーズ「娼婦の遍歴(A Harlot's Progress)」第四作目は、「モル、ブライドウェル刑務所で麻を打つ(Moll beats hemp in Bridewell Prison)」と題する。モルは売春で摘発され、刑務所に入れられたのである。イギリスでは売春罪という罪名はないと聞いたことがあるが、売春という行為そのものは、何らかの理由を伴って、取り締まりの対象になったのであろう。

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ホガースの版画シリーズ「娼婦の遍歴(A Harlot's Progress)」の第三作目は、「モル、妾から普通の売春婦になる(Moll has gone from kept woman to common prostitute)}と題する。ユダヤ人の商人から妾の契約を解除されたモルが、普通の売春婦になった様子を描く。

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ウィリアム・ホガースの版画シリーズ「娼婦の遍歴(A Harlot's Progress)」第二作目は、「モルは今や裕福な商人の妾として囲われる(Moll is now a kept woman, the mistress of a wealthy merchant)」と題する。女衒の餌食となったモルは、まず裕福な商人に売られ、妾となった。そのモルのもとに、旦那がやってきた時の様子を、この絵は描いている。

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「娼婦の遍歴(A Harlot's Progress)」は、ホガースにとって最初の風俗版画シリーズである。かれは当初、この版画シリーズのテーマを油彩画で制作したのだが、それを版画にして売り出すことを思いついた。予約販売という方法で募集したところ、1200件の注文が入った。販売するや大変な反響があり、海賊版が出回ったほどだった。これに気をよくしたホガースは、同じようなテーマの版画シリーズ「放蕩息子の遍歴」などを続けて制作している。

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サミュエル・バトラーの著作「ヒューディブラス」へのホガースの挿絵第十二点目は「ヒューディブラスと弁護士(Hudibras and the Lawyer)」と題する。ピューリタン革命騒ぎを通じてさんざんな眼にあわされたヒューディブラスが、弁護士のところへいって、相談しようという場面である。ヒューディブラスは、テンプル・バーでの出来事よりも、例の未亡人をめぐって蒙った侮辱に我慢ならず、かれらを相手に訴訟を起こしたいと思っている。ところが弁護士は、わけのわからぬお世辞をいうばかりで、まともに相手にしようとしない。

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サミュエル・バトラーの著作「ヒューディブラス」へのホガースの挿絵第十一点目は「テンプル・バーでランプを焼く( Burning Ye Rumps at Temple Bar)」と題する。テーマは、1659年におけるランプ議会の解体である。ランプ議会は、ピューリタン勢力の牙城であったので、それが解体されることは、ピューリタン革命の終焉を意味した。じっさいこの事件をてこにして、王政復帰への道が開かれるのである。

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