美を読む

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「シテールへの船出(L'Embarquement pour Cythere)」は、ヴァトーの代表作であるのみならず、ロココ芸術を代表する傑作である。ロココ的な典雅な雰囲気がもっとも豪華絢爛に表現されている。ヴァトーはこのモチーフを二点制作しており、パリにあるものが最初に作られ、その一年後にベルリンにあるものが作られた。

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「愛の調べ(La gamme d'amour)」と題するこの作品は、田園を背景に人物の優雅な仕草を描くというヴァトー得意のモチーフである。木の根株に座った男がギターを弾き、その隣に女が腰を下ろして男の顔を見つめている。女は楽譜らしいものを持っているが、それは小道具としての扱いに過ぎない(あるいは男がその譜面に見入っているという解釈もある)。

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「驚き」の画面の中にいたメズタン(メッツェティーノ)を単独でフィーチャーしたのがこの作品。メズタンは、一人で公園のベンチに腰掛け、ギターを弾いている。だが、よく見ると、彼の視線は上方のバルコニーらしき方向へ注がれている。もしかしたら、メズタンはバルコニーにいる恋人に愛の歌を贈っているのかもしれない。

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ヴァトーは、コンメーディア・デッラルテと深いつながりがあったようで、座付き役者たちの演技をモチーフとした作品をいくつも制作している。「驚きLa  Surprise」と題されたこの作品もその一例である。

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ヴァトーは、喜劇役者をモチーフにした作品をいくつも制作している。フランスの喜劇一座やイタリアの有名な喜劇一座「コンメーディア・デッラルテ」もモチーフに取り上げている。「ピエロ」あるは「ジル」とよばれるこの作品は、喜劇役者をモチーフにしたものとしては、最も早い時期のものである。

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「無関心(L'Indifférent)」と題されるこの作品は、「ラ・フィネット」とともに一対をなすものとして見られることが多い。どちらも非常に小さな画面に人物の姿を描いており、ほぼ同時期に描かれ、また同じころにルーヴルに収蔵されたからだろう。

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「ラ・フィネット(La Finette)」と題するこの絵は、フィネット布のドレスをまとった若い女性の肖像。フィネットは、絹を素材にした繊細な布地のこと。その布地で編んだドレスを着た若い女のモデルはわからない。「眺め」の画面でポーズをとった人々と関係があるのかもしれない。

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「気恥ずかしい申し出(La Proposition embarrassante)」と題するこの作品は、ヴァトーの雅宴図の初期の傑作。雅宴図の定石通り、野外で宴会服を着た人々が、思い思いにピクニック気分に耽っている場面を描いている。

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アントワーヌ・ヴァトー(Antoine Watteau 1684-1721)は、フランスのロココ美術を代表する画家である。ロココ美術は、18世紀のフランスの宮廷から発生したと言われ、非常に典雅な画風が特徴である。ヴァトーはそうしたフランス風のロココ美術の特徴をもっともよく体現した画家である。1710年代の後半に現れ、わずか37歳の若さで死んでしまったが、かれの画風は以後のフランス絵画に大きな影響を与えた。ヴァトーの登場によって、それまで地方的な位置づけしかもたなかったフランス美術が、ヨーロッパ美術を牽引するようになる。

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ホッパーは、人生最後の作品のモチーフに、自分と妻ジョーを選び、それに「二人のコメディアン(Two Commedians)」と題した。この時ホッパーは83歳になっており、ジョーも80歳を超えていた。しかも二人とも病気だった。そのためホッパーはこの絵を描いた二年後に死に、ジョーはその翌年に死んだ。だからこの絵は、彼らにとって人生最後の総決算のようなものだった。

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ホッパーはオフィスをモチーフにして繰り返し描いた。そのほとんどはオフィスの内部を、その内部の視点から描いたものだった。ところがこの「ニューヨークのオフィス(New York Office)」と題した作品は、外部から窓越しにオフィスの内部を描いたものだ。非常にユニークな視点なので、見ているものに強い衝撃を与える。

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「日を浴びる人々(People in the sun)」と題したこの絵は、構図の特異さが人の度肝を抜く。道路上に椅子を並べて座った人々が画面の左半分を占め、残りの右半分には低い山々からなる自然が描かれている。人間と自然が対面しているわけであるが、しかし人々は自然を見ているわけではない。人々は何も見てはいないようなのだ。かれらはひたすら日を浴びて、体を温めがっているように見える。

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「西部のモーテル(Western Motel)」と題したこの絵は、ホッパー馴染みのモチーフであるアメリカの自然と室内の人物とを組み合わせたもの。アメリカの自然は、モーテルの窓越しに見えるのだが、そらはあたかも西部劇のセットのように見えている。だからタイトルのWesternは、ウェスタンではなく西部劇の西部と読むべきなのだろう。

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ホッパーは、荒々しい自然の中にぽつんと存在する人工的な構築物を描くのを好んだ。「サウス・カロライナの朝(South Carolina Morning)」と題したこの絵は、果てしなく広がるビーチの中にぽつんと立っている小さな家と、その家の玄関にぽつんと立っている女性を描いたものだ。

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「線路際のホテル(Hotel by a railroad)」と題したこの絵も、閉じられた空間にいる人物をモチーフにしている。おそらく夫婦だろう。夫婦が二人きりになっているのだが、かれらは互いに意識していない。それぞれ自分の世界に閉じこもっている。そこに我々は、アメリカ人の人間関係のドライさを感じる。そのドライさは、夫婦のような、本来親密であるべき関係にあっても支配的なのだ。

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ホッパーは、ケープ・コッドの自分の別荘をモチーフにして多くの絵を描いた。「ケープ・コッドの朝(Cape Cod Morning)」と題したこの作品もその一つ。別荘の建物の出窓から、朝日の昇るさまを見つめる女性が描かれている。この女性が妻のジョーであることはいうまでもない。ホッパーはひたすら妻のジョーを描き続けたのである。

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「夏の夕べ(Summer Evening)」と題するこの作品は、奇妙な空間をモチーフにしたものだ。奇妙というのはほかでもない。ホッパーは、これより以前の作品では、ある閉じられた空間内にいる人々をモチーフにしていたのだったが、この作品では、閉じられた空間ではなく、といって開かれた空間でもない。その両極の合間にある空間である。ベランダは、外部から内部への境目にある。その境目に一組の男女を立たせたところにこの作品の特徴がある。

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「サマータイム(Summertime)」と題されたこの絵は、ホテルと思われる建物の入り口に立った若い女性をモチーフにしたものだが、そこにホッパーはさまざまな意味を込めた。若い女性は、肌が透けてみえるようなシースルーのドレスを着ているが、これはこの時代の若い女性の開放的な気分を表している。この絵が描かれた1943年はまさに第二次大戦の最中であり、その限りでアメリカ人は戦争気分に浸っていたわけだが、その気分は暗鬱なものではなく、開放的なものだったのだ。1930年代には、大恐慌の影響でアメリカは沈み込んだいた。第二次大戦はそんなアメリカに、空前の好景気をもたらしたのだ。

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ホッパーは妻のジョーと二人でアメリカじゅうをスケッチ旅行し、ホテルやモテるによくとまった。その際にホテルの様子をモチーフにした作品を作った。「ホテルのロビー(Hotel Lobby)」と題するこの作品はその一つ。安っぽいホテルのロビーでの様子がスナップショットふうに描かれている。

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「ナイトホーク(Nighthawks)」と題したこの作品は、ホッパーの代表作であり、またアメリカン・リアリズムの最高傑作といわれる。都会の安っぽいレストランの夜の光景を、スナップショット的に描いたものだ。タイトルの「ナイトホーク」とは、このレストランの名前ではなく、女と並んでカウンターに座っている中年男のとがった鼻を意味しているということらしい。店自体の名前は、建物上部の壁面に「PHILLIES」と書かれている。

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