「アイリスとリラ(Iris et lilas)」と題されたこの絵は、ボナールの静物画の代表作の一つ。ボナールは、1910年代の半ばごろからぼちぼち静物画を手掛けるようになった。ボナールの静物画の特徴は、強烈な色彩感である。輪郭はすべて、色彩の差異によって表現される。色彩相互は激しいコントラストを示す場合が多い。
「グリーンのブラウス(The green blouse)と呼ばれるこの絵は、別名を「ヴェルノンの室内」ともいう。現在保存しているニューヨークのメトロポリタン美術館がこの作品を「グリーンのブラウス」と名付けているのだが、もともとは「ヴェルノンの室内」と呼ばれていた。日本ではそのほうで呼ばれることが多い。
「シエスタ」とは、昼食後の昼寝のことだが、この絵では夕べの転寝を意味しているようである。題名に「シエスタあるいは夕べ(La sieste ou soir)」とあるところから、そう解釈される。画面の下部の中ほどに、安楽ベッドに横になった女が描かれ、それを二人の女が見守り、また、遠方の木の陰には別の少女が見つめている。二人の女の傍らには、黒い犬も控えている。まことにのどかな眺めである。
「ヴェプレ醸造所内から見たクリシー広場(La place de Clichy vue de l'intérieur de la brasserie Wepler)」と題されたこの絵のモチーフは、ずばりタイトルどおり。ヴェプレ醸造所というのは、クリシー広場に面した酒場のことらしい。その酒場の内部から、クリシー広場を一望したというのが、この絵のモチーフである。
「オウムを手にした女(La Femme au perroquet condense des visions du Maghreb et de la Côte d'Azur)」と題されたこの絵は、「マグレブとコート・ダジュールのヴィジョンを凝縮する」とあるように、地中海の雰囲気を表現したものなのだろう。オウムを手にした女は、エキゾチックな雰囲気を感じさせるから、北アフリカを想起させるし、背後の青い海は、コート・ダジュールをイメージさせるというつもりか。
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