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ボナールは1888年に親しい画家仲間と美術集団「ナビ派」を結成した。メンバーに確固とした共通の画風といったものは指摘されず、それぞれに自分勝手なところがあった。ボナールはそのころジャポニズムの影響を受けていて、歌麿や北斎の画風を取り入れようとしていた。そんなボナールを仲間の連中は、「ジャポニズムのナビ」と呼んだ。

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ピエール・ボナール(Pierre Bonnard 1867-1947)は、後期印象派と現代絵画の中間に位置する画家である。世代的には、ゴーギャンやゴッホより二十年前後若く、マチスとほぼ同年代である。現代絵画は、フォルム重視から色彩重視への転換という風に特徴づけることができるが、マチスもボナールもそういう傾向を推進した。かれらの先輩には、ゴーギャンらがいたわけで、ゴーギャンらの色彩感覚を受け継いで、それを更に発展させたといえるだろう。

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「白い花瓶と花(Bouquet de fleurs dans un vase blanc)」と題されたこの絵も、前作同様中国製の白磁の花瓶にいけられた花をモチーフにした作品。前作と比べると、花のボリュームが増している。しかも葉の部分が少なく、花が群がるように咲き誇っている。

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「中国の花瓶にさした花(Bouquet de fleurs dans un vase chinois)」と題されたこの絵は、タイトルにあるとおり中国製の磁気の花瓶にいけられた花をモチーフにしたもの。白磁の光沢のある肌が、深紅の背景から浮かび上がり、その上に花々が押し重なるようにして広がっている。晩年のルドンの一連の静物画の中の傑作というべきものである。

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オルペウスは、ギリシャ神話に登場するキャラクター。竪琴をひきながら詠う吟遊詩人とされる。死んだ妻エウリュディケーを慕って冥界へ下ったという話が有名である。冥界に死んだ妻を訪ねる話は日本の神話にもある。どちらも、冥界の王との約束をやぶり、地上に出る前に妻を振り返ったために、妻を取り戻すことができなかったという共通点がある。

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「貝殻(La Coquille : en bas à droite, petit coquillage, dans l'ombre)」と題されたこの絵は、タイトルどおり貝殻を描いたもの。画面中央に大きな貝殻を描き、その右下に小さな貝殻を描いているのは、原作の解題にあるとおりだ。

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聖セバスティアヌスは、三世紀のローマ時代の殉教者。事績は「黄金伝説」の中で紹介されている。それによれが、聖セバスティアヌスは、ほかの人々の信仰を励ました罪で、木にしばりつけられ、人々が矢をうつにまかせたと言われる。

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晩年のルドンは、花をモチーフにした静物画を多く描いた。花瓶にさした花の絵が多い。「長首の花瓶にさした野の花(Bouquet de fleurs des champs dans un vase à long col)」と題されたこの絵は、そうした静物画の一つ。

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パンドラは、ギリシャ神話に出てくるキャラクター。「パンドラの箱」の逸話で有名である。これは人間の悪徳の起源をテーマにしたもので、聖書の原罪の起源を語った部分と似た話である。西洋美術では、格好のモチーフとして、長らく取り上げられてきた。ルドンもいくつかの作品で、パンドラをモチーフに取り上げている。
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「ルッジェーロとアンジェリカ(Roger et Angélique)」と題されたこの作品は、イタリア16世紀の詩人アリオストの叙事詩「狂えるオルランド」に取材したもの。原作はまったく架空の話である。ルッジェーロとアンジェリカにかかわる話は、その一部。異国(キタイ=中国)の姫アンジェリカが、海の怪物のいけにえとなり、とらわれようとするところを、姫に思いをよせる青年ルッジェーロが、鷲の頭をもった馬にまたがり、怪物を退治するという内容。

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聖ゲオルギウスは、古代ローマ時代の殉教者として知られる。その生涯は謎が多い。だいいち、どこで活躍していたかが明確でない。東ヨーロッパからグルジアにかけて、かれを主人公とする伝説が流布されている。一番有名なのは、グルジアにおけるドラゴン退治の伝説で、これは「黄金伝説」にも出てくる。ルドンはおそらく黄金伝説を踏まえてこの作品を描いたのだと思う。

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晩年のルドンは、花瓶にいけた花を好んで描くとともに、花をあしらった女性の肖像も多く描いた。「ヴィオレット・エーマン(Violette Heyman)」はその代表的なものである。若い女性が横顔を見せた姿で、花と向き合っている構図である。

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「アポロンの馬車と竜(Le char d'Apollon et le dragon)」と題されたこの作品は、「アポロンの馬車」とほとんど同じ構図である。ほぼ同時期に制作された。構図の違いは、画面の下側に竜を配したところ。もっとも竜は、胴体の一部がかいまみえるだけで、全体像が明確ではない。

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「出現(Apparition)」と題されたこの作品は、ボナールらナビ派とのかかわりを示すものと言われる。ボナールは、ナビ派の中心人物として、幻想的な画風の作品で知られている。ルドンの幻想的な画風に影響を受けたとされるが、ルドンはルドンで、ボナールらナビ派の動きに注目していたらしい。

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ルドンは、晩年には花を好んで描く一方、蝶をモチーフにした作品を多く手掛けた。その大部分は、沢山の蝶が思い思いに飛び回っている様子を描いたものだ。この作品は、その代表的なもの。露出した岩肌の上を、大小さまざまの種類の蝶が飛び回るところを捉えた。

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アポロンは、ギリシャ神話の太陽神である。太陽が東の空から出て天空を移動し、やがて西の空に沈んでいく様子を、ギリシャ神話では、アポロンが四頭立ての馬車に乗って天空を駆けるイメージで表現した。「アポロンの馬車(Le char d' Apollon)」と題されたこの作品は、そうしたギリシャ神話のイメージをあらわしたものである。

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ルドンは、シェイクスピア劇の有名なキャラクター、オフェリアをモチーフにした作品をいくつか作っている。その中には、水に浮かんで流される、よく知られたイメージのものもある。「花の中のオフェリア(Ophelia parmi les fleurs)」と題されたこの絵は、花の中というよりは、花を前にしてそれを見上げる姿のオフェリアを描いたものだ。

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ペガサスは、ギリシャ神話に出てくる翼をもった天馬である。空高く飛翔するイメージで描かれることが多い。そのペガサスをルドンは繰り返し描いている。すでに石版画にも取り上げていたが、石版画のペガサスは黒く暗いイメージをひきずり、地上を這う姿で描かれていた。

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ルドンがポール・ゴーギャンと出会ったのは、1886年の第八回印象派展の会場であったらしい。八歳年下のゴーギャンのほうから、ルドンに敬意を表して接近したといわれる。ゴーギャンはルドンの画風に強くひかれ、その幻想的な雰囲気とか、豊かな色彩に影響されたようである。

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ルドンは仏陀に強い関心を持っていたようで、仏陀をモチーフにした作品を結構作っている。いづれも仏陀の精神性を表現したもので、カラフルな色彩のなかに、静かな瞑想のような雰囲気を漂わせている。

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