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ホッパーは妻のジョーと二人でアメリカじゅうをスケッチ旅行し、ホテルやモテるによくとまった。その際にホテルの様子をモチーフにした作品を作った。「ホテルのロビー(Hotel Lobby)」と題するこの作品はその一つ。安っぽいホテルのロビーでの様子がスナップショットふうに描かれている。

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「ナイトホーク(Nighthawks)」と題したこの作品は、ホッパーの代表作であり、またアメリカン・リアリズムの最高傑作といわれる。都会の安っぽいレストランの夜の光景を、スナップショット的に描いたものだ。タイトルの「ナイトホーク」とは、このレストランの名前ではなく、女と並んでカウンターに座っている中年男のとがった鼻を意味しているということらしい。店自体の名前は、建物上部の壁面に「PHILLIES」と書かれている。

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「夜のオフフィス(Office at Night)」と題するこの作品も、閉じられた空間を描いたもの。事務室の狭い空間に二人の人物が描かれている。一人はデスクに向かっている中年男で、もう一人はその男を見下ろしている若い女。女はオフィスにいるにしては、肌や体の線を露出させるような挑発的ななりをしている。それに対して中年男のほうは、女の存在をまったく気にしていないようだ。書類を扱っているところから、弁護士とか会計士を連想させる。

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ホッパーは、自然と文明の境界のような眺めを描くのが好きだった。「ガソリン・スタンド(Gas)」と題するこの作品も、その一例だ。ガソリン・スタンドは、この絵が描かれた1940年には文明の象徴のようなものだった。それが自然そのものである森林に接してたっている。その森林は、樹木の個別性を感じさせず、鬱蒼とした緑の塊として描かれている。そのことで、人工を加えない原始的な自然を表現したつもりだろう。

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ホッパーは、1930年代には、風景画はけっこう描いているが、人物画は少ない。ホッパーの人物画は、車内とかオフィスルームなど、閉じられた空間の中に、いわくありげに見える人間をスナップショット的に描いたものが多い。「ニューヨークの映画館(New York movie)」と題する1939年の作品もその典型的なものだ。

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ホッパーは鉄道の線路をよく描いたが、列車にも関心をもっていたようだ。「コンパートメントC(Compartment C Car)」と題するこの作品は列車の社内の空間を描いたもの。コンパートメントと呼ばれる客室の内部だ。コンパートメントはふつう、個室状になっているものでが、これは開放的な作りだ。おそらく片側が通路で、それに沿ってコンパートメントが並んでいるのだろう。そのコンパートメントを、通路を通りがかった者の目からとらえたというのが、この作品の構図だ。したがって、やや上部から室内を眺め下ろした感じになっている。

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コッブ家の納屋とは、マサチューセッツ州ケープ・コッドにあったコッブ農場の納屋のこと。ホッパーはこの納屋の建物が気に入って、しばらく賃借りした。また、後にはその近くに別荘をたて、以後夏の間、妻のジョーと一緒に過ごした。

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「日曜日の早朝(Early sunday morning)」と題したこの作品は、ホッパーの街景画の代表作の一つ。マンハッタンの七番街をイメージしているらしいが、ホッパー自身は特定の場所へのこだわりはなく、アメリカの都市に典型的な眺めを描いたのだといっているようだ。

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チャプスイ(Chop suey)とは、アメリカ流中華料理の店。広東出身の中国人が、アメリカで広めた中国料理の名称が、そのまま中国料理全体を代表する名前になった。チャプスイ自体は、肉と野菜をいためてとろみをつけた料理という。

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ホッパーは、鉄道の線路を繰り返し描いた。それも都会の鉄道ではなく、大草原地帯を走る線路だ。ホッパーはそれに、文明と野生との交わりを見たのだろう。ホッパーはアメリカの大都会の空気にずっぽりつかりながら、自然を描くのが好きだった。しかしその自然は、ありのままの自然ではない。なんらかの形で人間との交わりを感じさせる自然だ。

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オートマットとは、自動販売機を設置したセルフサービスのレストラン。1920年代のアメリカで流行った。この絵は、そのオートマットでコーヒーを飲む一人の女性を描く。モデルはホッパーの妻ジョー。ジョー自身は、彼女をモチーフにした裸婦像からうかがわれるように、女性的で豊満な肢体だったが、この絵の中の女性は、やせぎすで、ボーイッシュに見える。この時ジョーは44歳になっていたが、絵の中ではずっと若く見える。

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「沿岸警備隊(Coast guard station)」と題するこの作品も、1927年の夏にメーン州にドライヴした折に見かけた光景を描いたものだ。ホッパーは、買ったばかりの自動車に愛妻ジョーを乗せて、ニューイングランドの海岸を走るのが好きだった。

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「灯台の丘(Lighthouse hill)」と題するこの絵のモチーフは、メーン州のポートランドにあったケープ・エリザベス灯台。この灯台は、地元の漁師のために働いていたが、どういうわけか、撤廃されるという騒ぎがもちあがっていた。ホッパーはその騒ぎの最中にこれを描いた。

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45歳になった1927年に、ホッパーは画家として最初の豊饒な時期を迎えた。この年には風景画や人物画の傑作を描いている。風景画については、「線路際の家」で確立した作風をより深めたと指摘できる。明確な輪郭と強烈な明暗対比をつうじてリアリスティックなイメージを演出するとともに、単なるリアルな現実描写にとどまらぬ、精神的な要素を盛り込む、というのがホッパーの自覚的な制作方針だった。

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三度目のヨーロッパへの旅から1910年にアメリカに戻ったホッパーは、ニューヨークを拠点にしてアーティストとしてのキャリアを始めようと思った。色々な機会を捕まえて、作品を公開したが、なかなか注目されなかった。一方、エッチングやイラストの類は、商業的な価値が認められて、エッチングなどは一定の需要があったようだ。

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ホッパーが早い時期から人物画、とりわけ裸婦に興味を示したのも、ヨーロッパ美術の影響だろう。アメリカでは、そういう伝統はなかった。というより、美術的な伝統そのものと無縁な国だった。だからホッパーがヨーロッパ、とくにパリに出かけて行って、美術の伝統に接したのは、かれの芸術家としての成長にとって、有意義なことだった。

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エドワード・ホッパーは、1906年から1910年にかけて、三回ヨーロッパに旅した。主な目的は、ヨーロッパの美術を吸収することだった。その頃、つまり20世紀初頭は、ヨーロッパ美術の転換期にあたっており、今日ヨーロッパ現代美術として理解されている動きが本格化していた。ピカソが「アヴィニョンの娘たち」を描いたのは1907年のことであり、カンディンスキーやモンドリアンは抽象絵画への模索をはじめていた。しかしホッパーはそういう動きには無関心だった。かれはピカソの名も知らなかったと後にいっている。ホッパーが惹かれたのは、印象派であり、モネやセザンヌの作品をことのほか気に入った。

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(ロシアの農奴解放の日:ミュシャのスラヴ叙事詩)

ロシアに農奴解放令が宣言されたのは1861年。長年にわたる農奴制を廃止して、近代的な国家づくりをめざしたものと言われるが、実際には、旧態依然たる制度がはびこったままだった。それにミュシャは深い失望を覚えていたが、一抹の希望を託さないでもなかった。

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(聖アトス山:ミュシャのスラヴ叙事詩)

聖アトス山はギリシャ正教の聖地。ギリシャ最東部、港町テサロニケの先に三本並んで突き出ている半島のうちもっとも東側の半島の先端にある山だ。この半島を作家の村上春樹がトレッキングしたそうだが、切り立った山々の合間に修道院があるばかりの異様な雰囲気のところだそうだ。そこがギリシャ正教の聖地になっているということらしい。


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(イヴァンチッチェでの青書の印刷)

フス派はチェコの民衆の間に持続的で深い影響を与えた。その中から16世紀の半ばごろにボヘミア兄弟団が結成され、大きな広がりを見せた。このボヘミア兄弟団は、後にルター派と合流してチョコ兄弟団へと発展していく。ルター派に先駆けて、民衆の言葉で聖書を翻訳したのもこの団体である。

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