美を読む

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「月と星」は、ミュシャの装飾パネル・シリーズの最後の作品(四枚セット)。ほかの一連のシリーズものと同様、モチーフを女性に擬人化している。もっとも、ほかの作品では、女性が前面に浮かび上がるよう配置されているが、このシリーズの女性たちは控えめに描かれている。その分、モチーフの月と星を強調している。

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ミュシャの二枚組の装飾パネルは、左右の女性を向かい合わせに描くのが特徴。女性は、全身像の場合もあり、半身像の場合もある。1897年の作品「ビザンチン風の頭部」は、頭部だけを取り出して向かい合わせたものだった。これが大きな成功を収めたので、気をよくしたミュシャは、同じような趣旨のものをもう一組作った。1901年の作品「木蔦と月桂樹」である。

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ミュシャは宝飾品のデザインを手掛ける一方、数は少ないが彫刻も残している。「ラ・ナチュール」と題したこの作品はミュシャの彫刻の代表的なもの。かれはこれを、1900年のパリ万博に向けて制作した。宝飾商ジョルジュ・フーケとのコラボレーションであり、また彫刻技術はオーギュスト・セースの手ほどきを受けた。

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「時の流れ」と題したこの装飾パネル・セットは、一日の時の流れを、朝、昼、夕、夜の四つに区分し、それぞれ女性のしぐさに時々の自然を感じさせるように描かれている。ミュシャ得意の女性に擬人化された自然の表現である。

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「桜草と羽根」をモチーフにした二枚一組の装飾パネル。それぞれのモチーフを擬人化して女性であらわし、彼女らが向かい合っている構図である。だが、互いに眼を伏せ、見つめあうことはない。モチーフ自体は、女性が手で持った形で表現されている。左側の女性は桜草を持ち、右側の女性は大きな羽根を持つといった具合だ。

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サラ・ベルナールの1899年の舞台公演「ハムレット」のために作成したポスター。フランスでは、シェイクスピアの原作をほぼ忠実に再現した最初の舞台だったという。それ以前には、フランス人好みに合わせて、かなり逸脱したバリエーションが演じられていたということらしい。

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「花」シリーズはミュシャの装飾パネルセットの代表的な作品。四種類の花を、それぞれ女性の姿に擬人化した図柄だ。このシリーズは大好評をはくし、装飾パネルのほか、カレンダーやポスターにも採用された。また、小さな画面にして四枚一組にしたバージョンが飛ぶように売れたという。

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「夢(Rêverie)」と題されたこの作品は、もともと印刷会社シャンプノワの社内向けポスターとして作成されたもの。評判がよかったので、一般向けにも販売された。ミュシャの作品のなかでも最も人気のあるものの一つである。

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1898年に上演された「メデエ」のためのポスター。「メデエ」はエウリピデス原作のギリシャ悲劇だが、それを詩人のカチュール・マンデスがサラ・ベルナールのために戯曲化した。ルネサンス座の舞台において、サラはみずからメデエを演じた。

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ミュシャは1897年に二度古典をひらいた。最初は単独で、二度目は合同展の形で。このポスターは、その合同展「サロン・デ・サン(Salon des cents)」のために制作したもの。その名の通り100人の芸術家が450点にのぼる作品を展示した。

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芸術をモチーフにした四枚組の装飾パネル。ダンス、絵画、詩、音楽のそれぞれが、女性の姿を通じて表現されている。とはいっても、芸術のイメージがストレートに表現されているわけではない。女性のポーズからして、なんとなく結びつくといった気持ちを起させるようになっている。

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この一対の絵は、モチーフ設定や構図・色合いに共通するところがあるので、連作として作られたと思われがちだが、もともとは別の作品として制作された。しかし市場では、これらを一対のものとして受容したために、事後的にセットものとして認知された。

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「ショコラ・イデアル」と題したこの作品は、ホット・チョコレートの宣伝用ポスターのために制作されたもの。大量生産・大量消費時代を迎えつつあった当時のフランスにおいては、こうした日常生活に直結した商品のポスターが多く作られた。

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ポスターやカレンダーの図柄と並んで、ミュシャは装飾パネルの制作にも手を広げた。ポスターやカレンダーが大変な人気を博し、観賞用の作品への需要が高まったためだ。ミュシャは、さまざまなテーマを設定したうえで、二枚ないし四枚一組にして売り出したのだった。

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「王道12宮」は、印刷業者シャンプノワの依頼を受けて、カレンダーの図柄として制作された。ミュシャはほかにも、シャンプノワのためにカレンダーの図柄を手掛けている。それらは非常に人気を博したので、装飾用パネルに仕立てなおされて個人向けに販売されたものだ。ミュシャの装飾的な作品は、庶民の消費の対象となっていたわけである。

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これは、吹き付け式香水「ロド」の広告ポスター。南仏リオンの香水メーカーの商品を紹介したもの。画面上段に大きな文字で商品名を書き、その下に、枠組みに収まった美女を描いている。美女は細長い容器を締め付けて香水を発射させていて、その香水は直線的な軌跡を描きながらハンカチを直撃している。この美女は、自分の肌に直接硬水をつけるのではなく、ハンカチにしみこませて、楽しんでいるようである。

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「ジョブ」は、ミュシャの商品広告用ポスターの代表作の一つ。ジョゼフ・バルドゥー社製のタバコの巻紙の広告である。いまでは、紙タバコは紙に巻かれた状態で売られているが、19世には、巻紙は別売で、喫煙者は自分で葉を紙に巻いて吸っていた。このポスターは、紙を巻き終わったタバコを女がうまそうに吸うところを描き、人々を喫煙へと誘っている。男なら、美女がタバコを吸っているところを見たら、自分もそれに感染して、つい吸いたくなる。このポスターは、そんな男心を見透かしたものだ。

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ミュシャのポスターの人気に乗じて、商品広告のためのポスター作製の依頼も舞い込んできた。ミュシャは、そのポスターのモデルにもサラ・ベルナールを起用した。サラとしては、自分のイメージの普及に役立つし、ミュシャとしては、人気女優をモデルにすることで、自分のポスターの人気が高まることを期待できた。両者にとって利点があったのである。

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文芸雑誌「ラ・プリュム」のサラ・ベルナール特集号の広告目的で、ミュシャはサラ・ベルナールの肖像をポスターに仕立てた。雑誌は1897年の正月に発刊されたが、このポスター自体は、1896年11月に催されたサラをたたえるパーティで披露された。

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ポスター「椿姫」は、ミュシャがサラ・ベルナールのために作成した二つ目の作品。椿姫はサラの当たり役で、生涯に300回以上も演じたという。その演技は、原作者のデュマ・フィスをも感心させ、最高の演技だと言わせたほどである。

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