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ルソーは子供の絵を多く描いた。アンデパンダン展の目録に乘っているものを数えると11点ある。子どもが好きだったということもあろうが、それよりも記念写真代わりに注文を受けて描いたようである。「ポリシネル人形を持つ子供」は、その代表的なもの。

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アンリ・ルソーは、同時代の大家で新古典派の重鎮レオン・ジェロームを尊重していて、度々自分の作品の手本とした。前に紹介した「眠れるジプシー女」はその代表的なものだが、1902年の作品「幸せな四重奏」にもジェロームの影響が指摘できる。

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1899年9月に、ルソーはジョゼフィーヌと結婚した。彼女はノルマンディ出身の庶民の娘で、敬虔なカトリックだったといわれる。そのほかのことはほとんどわかっていないが、ルソーはクレマンスの死後間もない頃に彼女に思いを寄せて以来、ほぼ十年越しの恋が実って結婚したのだった。

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「眠れるジプシー女(La Bohémienne endormie)」は、「戦争」とともにルソーの中期の代表作。1897年のアンデパンダン展に出展した。あいかわらずからかい半分の酷評が多かったが、好意的な評もあった。「ルヴュ・ブランシュ」誌には、ルソーの単純さを讃える評がのったが、それには当時のルソーの親友ジャリの意見が反映していたらしい。

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ピカソがルソーに深い敬意を表していたことはよく知られている。ピカソはその敬意の印として、大勢の友人を集めた夜会を開き、そこにルソーを招いた。美術史上有名な1908年のピカソのアトリエの夜会である。その夜会の席では、会場のもっとも目立つ場所に、ルソーの「女性の肖像(Portrait de femme)」という絵が飾られた。ピカソはこの絵を、ジャンク市場でたった五フランで買ったのだが、それ以来大事にしていた。いまでもピカソ美術館に保存されている。

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「砲兵たち」は「戦争」と同じ時期に描かれたと思われる。「戦争」のほうは戦争の残酷さを描いているが、こちらは戦士たちの勇敢な姿を描いている。ルソーには約五年間の軍隊生活があり、これはその体験を踏まえた作品かとも思われているが、実はそうではないらしい。ルソーはこの絵を、実在の歩兵部隊を前にしてではなく、記念写真をもとに描いたらしいのである。

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「戦争(La guerre)」と題したこの絵は、ルソーの初期の代表作というべきもので、1894年春の第十回アンデパンダン展に出展された。ルソーは前年の1893年の12月に長年つとめていたパリの入市税関をやめたが、それはこの作品の制作に打ち込むためだったともいわれる。ルソーはいよいよ画家としての自分に確固たる信念を抱くようになったのであろう。

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ルソーの肖像画には著しい特徴がある。風景と一体となっていること、人物が正面を向いており、ほとんどの場合立っていることだ。バラ色の服の少女(Jeune fille en rose)」と題したこの絵は、その典型的なものだ。

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1892年は、フランス革命を経て共和国宣言が出されてからちょうど百年目にあたり、フランス各地で祝祭が催された。パリにおけるその祝祭の様子を描いたのが「独立百年祭」と題したこの作品だ。同年のアンデパンダン展に出展された。

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ピエール・ロティは、フランス海軍士官として世界中をまわり、立ち寄った各地の印象を、エッセーや小説に書いた。日本にも縁があり、鹿鳴館の舞踏会にも参加したことがあった。フランス人特有のエリート意識の持ち主で、日本人を醜悪な生き物として軽蔑していた。そんなロティと、ルソーとの直接的な接点はない。ルソーにはエキゾチズム趣味があり、「マガザン・ピトレスク」といったエキゾチズム雑誌を読んでいたようだが、それにインスピレーションを受けて、ロティのこの肖像画を描いたのだろうと思われる。

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「風景の中の自画像(Moi-Meme, Portrait-Paysage)」は、ルソーの数少ない自画像の一つ。かれはこの絵を死ぬまで手元に置き、加筆していた。パリ万博が行われた1890年、ルソー46歳の時に描かれ、その年のアンデパンダン展に出展された。現代の「肖像=風景」が示すように、風景と一体化した肖像画である点で、ルソーの作品の特徴である風景の中に溶け込んだ肖像というモチーフを典型的にあらわしている。

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「森の中の散歩(La Promenade dans la Foret)」は、「カーニバルの夕べ」とほぼ同じ頃に描かれたと思われる。こちらは昼間の森の中を歩く一人の婦人をモチーフにしている。モデルは妻のクレマンス、舞台はクレマンスの実家があったサン・ジェルマン・アン・レイだとされる。

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「カーニバルの夕べ(Un soir de carnival)」と題したこの作品は、現存するルソーの作品のうちもっとも古いものである。ルソーはこれを1886年の第二回アンデパンダン展に出品した。ルソーの画家としてのデビューは、その前年1885年のサロンへの応募だったのだが、これは落選となって公衆の目に触れることはなかった。その同じ年(1885年)に始まったアンデパンダン展は、会費さえ払えば誰でも出展できたので、これが公衆の目に触れたルソーの初めての作品になったわけだ。もっともその時には、全くといってよいほど反響はなかった。日曜画家の殴り書きと受け取られたのである。

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アンリ・ルソーが画家として出発したのは40歳代半ばのことで、まがりなりにも名が知られるようになったのは60歳を過ぎてだった。その遅咲きの画家人生も、66歳で中断された。かれはその年で、脚にできた癌性の壊疽がもとで死んでしまったのである。それも極貧のうちで。かれは墓を建てるために必要な資産を残さなかったので、パリの共同墓地にひっそりと葬られたのであった。

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クールベは反権力的な傾向が強くて、若い頃から政治的なメッセージを発することが多かった。その傾向が高じて、1871年にはパリ・コミューンに深くかかわった。これは独仏戦争にフランスが敗れたことで、ルイ・ボナパルトの第二帝政が崩壊し、その権力のスキをついて、労働者が一時的に新しい権力を掌握しようとした運動だった。それにクールベは、労働者の立場に立って参加したわけだった。

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「波(La vague)」は、クールベの自然主義的画風を代表する傑作である。画面を二分して、下半分に砕け散る波を、上半分に荒れ狂う空を配した構図は、至極単純なように見えて、かえって自然のたたずまいを如実に感じさせる。

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「女とオウム(La Femme au perroquet)」は、クールベの1860年代半ばの裸婦像の一つだが、これを1866年のサロンに出展したところ、好意的な反応があった。エロチック性を抑えて、ギリシャ神話を思わせるような物語性を打ち出したことが、裸婦像の伝統に反しないと思われたためだろう。

クールベには、裸婦へのこだわりがあって、「画家のアトリエ」では、そのこだわりが突然吹き出てきたように感じさせたものだが、1860年代の半ばごろには、興が高じたとみえて、多くの裸婦像を描くようになる。その中にはポルノ写真を思わせるものがあって、クールベの性的な嗜好に眉をひそめさせることもある。

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「画家のアトリエ(L'Atelier du peintre)」は、「オルナンの埋葬」と並んでクールベの最高傑作というべき作品。かれはこれを、1855年のパリ万博に出展したいと思ったが、拒絶されたので、当時彼のパトロンであった画商のブリュイアスの協力を得て、万博会場近くに独自のパヴィリオンをたて、そこで個展を催したのであった。これは、絵画史上初の個展といわれている。

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クールベは、1855年のパリ万博に合わせて、会場近くで個展を開いた。「こんにちは、クールベさん」と呼ばれるこの作品は、「画家のアトリエ」などとともにこの個展で展示した作品。その際には単に「出会い」と題していたが、会場のものすごい反響を受けて、「こんにちは、クールベさん(La rencontre, ou "Bonjour Monsieur Courbet")と呼ばれるようになった。

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