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ベートーベン・フリーズのうち、第二の壁に描かれた部分は、人類に敵対する勢力をテーマにしている。批評家から激しい非難を浴びたこのプロジェクトの中でも、もっとも強い非難が集中した部分だ。縦220cm、横650cmの巨大な画面のうち、左側半分には人間に敵対する様々な魔物が、右半分には抑圧されて打ちひしがれる女が描かれている。

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1902年、クリムトら分離派の芸術家が14回目の展覧会を開催した。テーマはベートーベンを中心にして総合芸術を追及しようというものだった。この当時、ベートーベンの名声は比類ないまでに高まっており、ワーグナーの音楽、ブールデルのマスク、ロマン・ローランの伝記などを通じて、ベートーベン礼賛が沸き起こっていた。分離派はこの動きに乗り、彫刻、音楽、絵画など様々な芸術を総合して、ベートーベンという偉大な人間をたたえようとしたわけである。

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クリムトの肖像画には、注文を受けて描いたものと、自発的に描いたものとの二種類がある。注文は裕福な実業家から、その妻を描くように要請されたものが多かったが、そうした絵をクリムトは、(ソニア・クニップスの肖像に見られるように)全体的に印象派的なふんわりとしたタッチで描き、顔の表情にはある種の理想的なイメージを付与したものだった。それに対して自分の意思で描いた肖像画には、クリムトらしい主張が込められている。

金魚(Goldfische):クリムトのエロス

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19世紀末のヨーロッパでは、ファム・ファタールのイメージと関連して、水中を女性の胎内に見立てたイメージが流行ったそうだ。クリムトのこの絵もその一例だと見られている。水中に浮かんだ女性たちのイメージが、胎内に孕まれたファム・ファタールのイメージを表しているということだろうか。

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ユーディットは、旧約聖書に出てくる女性で、ユダヤ人をアッシリアの攻撃から救った烈女である。いわば、ユダヤ人にとってのジャンヌ・ダルクというべきこの女性を、西洋の絵画は繰り返しテーマとして取り上げてきた。中でもクラナッハの描いたユーディットは、烈女のイメージにエロティックな要素を加味し、その後のユーディットのイメージに大きな影響を及ぼした。

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「ヌーダ・ヴェリタス(Nuda Veritas)」とは文字通りには「裸の真実」ということだが、それが「人間の裸体の真実」という意味なのか、あるいは「本然の真実」という意味なのか、それとも両方の意味を兼ねているものなのか、俄には判断できない。おそらく両方の意味を込めているのだろう。

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アテナはギリシャの都市アテネの守護神であるが、ギリシャ神話では戦いの女神とされている。鎧を着て、雄たけびの声を上げながらゼウスの頭から生まれたとされるこの女神が、どういういきさつで商業都市アテネの守護神になったか、そこには興味をそそる物語があったに違いない。

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クリムトには裕福な実業家のパトロンがいた。当時のオーストリアの画家には、クリムトに限らずパトロンがついていたものだが、クリムトや分離主義の芸術家を熱心に応援していたのは、ユダヤ人実業家たちだった。鉄鋼業のウィトゲンシュタイン、繊維業のヴェルンドルファー、金属産業のクニップスといった人々だ。クリムトは彼らの家族のために肖像画を描いた。クリムトの肖像画は非常にリアルでしかも芸術性に富んでいるというので、ウィーンの社交界では名声が高かったようだ。

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クリムトがオーストリア政府からの注文を受けて作成した「ウィーン大学講堂の天井画」は、クリムトという画家を理解するための鍵を与えてくれる。クリムトはこの仕事のために三点の天井画を描いたのだが、それらに自分の芸術上の信念を盛り込んでいたという意味で、非常にメッセージ性の高い仕事となった。ところが、これら三点の天井画は、いずれも大学当局や政府から激しい拒絶にあった。そこでクリムトは、その拒絶に屈することなく、これを買い戻したのであったが、それらの作品は結局失われてしまった。権力に対抗して自分の芸術的良心を貫いたクリムトだが、その良心は報いられなかったわけだ。一方クリムトと同じくこの仕事の一部を請け負ったフランツ・マッチュは、注文の趣旨にしたがった作品を作ったおかげで、いまでもウィーン大学の講堂を飾っている。もっともそれが高い評価を受けることはないのだが。

クリムトのエロス

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十九世紀の末から二十世紀の初頭にかけて、ウィーンはパリと並んでヨーロッパの精神文化の中心地だった。建築、美術、絵画などの諸芸術や、フロイトの心理学、ウィトゲンシュタインに代表される哲学など、ウィーンはさまざまな学芸分野で、ヨーロッパをリードしたのであった。その時代のウィーンをベル・エポックと呼ぶこともある。この言葉は同時代のパリについて用いられるのが普通だが、ウィーンもまたパリに負けないほどの文化的なオーラを放っていたのである。

雪の中の労働者:ムンク

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男性美を追求したムンクがたどりついたのは、労働者の働く姿に現われた男の力強い美しさだった。晩年のムンクは、こうした労働者像をいくつも描いたが、「雪の中の労働者」と題するこの絵は、その代表的な作品だ。

水浴する男たち:ムンク

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ムンクの作風は1907年ごろに変化した。「マラーの死」はその魁である。その絵は、暗い題材をテーマにしているにかかわらず、画面は明るく、筆致ものびのびとしている。それまでの陰鬱な画面作りからの、百八十度といってよいような転換振りである。

桟橋の少女たち:ムンク

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「桟橋の少女たち」と題するこの絵は、不思議な空間感覚をもたらす。桟橋の描き方が、遠近法に基づいているように見えながら、消失点のところにある桟橋の先端が曖昧なかたちで背景の中に埋没しているために、空間がゆがんでいるような印象をもたらすのだ。家の周りの柵の描き方も、周囲との間に不調和な印象を与える。

生命のダンス:ムンク

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「生命のダンス」と題するこの絵は、「生命のフリーズ」の最後を飾る大作である。題名から生命を謳歌するように思え、また一見してそういう印象が伝わってこないでもないが、「生命のフリーズ」のほかの作品同様に、かなり屈折した思いがこの絵にも込められているようだ。

赤いアメリカ蔦の家:ムンクの不安

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「赤いアメリカ蔦の家」と題したこの絵も、ムンクとトゥラのとの不安定な関係を描いたのだと思われる。赤いアメリカ蔦の家は、ムンクとトゥラの愛の巣のはずなのだが、ムンクはそこから逃げ出そうとしているのだ。

メタボリズム:ムンクの愛

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ムンクは、1898年にトゥラ・ラーシェンという女性と恋仲になった。この女性は若々しくて性的魅力に富んでいたが、性格に常軌を逸したところがあった。独占欲が強く、ムンクの近くを離れようとせず、つねに激しいセックスを求めた。すでに中年に差し掛かっていたムンクは、この女性の異常な性欲に悩まされた。そのために一時期、創作意欲を失ったほどだった。

嫉妬:ムンクの不安

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ムンクの友人の一人にポーランド人スタニスラフ・プシビシェフスキがいた。彼の妻ダグニーは性的な魅力に富んだ女で、ムンクも惚れていたようだ。彼女はまた、ストリンドベルヒほか数人の男を誘惑しているという噂もあった。彼女は最後には夫の友人によって殺されてしまうのだが、それは彼女の夫に対する裏切りが原因だったと推測されている。

不安:ムンク

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「不安」と題するこの絵は、「叫び」と並んでムンクの代表作である。構図的にも「叫び」と良く似ている。赤い夕空を背景にして、湖にかかった橋の上を人々が歩いている。「叫び」の場合には、一人の人物に焦点が当てられていたが、この絵の場合には、群集がモチーフになっている。群集の心を捉える不安、それがこの絵のテーマだ。

マドンナ:ムンクの不安

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1890年代のなかばに、ムンクは「生命のフリーズ」と称する一連の作品を制作する。「マドンナ」と題するこの絵は、そのシリーズの中核となるものである。この絵を通じてムンクは、生命と死を二つながら表現しようとしたといわれるが、どこに生命と死を読み取るべきか、さまざまな解釈がなされてきた。

思春期:ムンクの不安

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「思春期と題したこの絵を、ムンクは1895年に公開したが、たちまち厳しい批判にさらされた。批判はスキャンダルに発展し、ムンクはノルウェーの批評界から、集中攻撃を浴びせられた。少女の裸体を描くというのは、当時のノルウェーでは、恥ずべき猥褻な行為であり、頽廃の極みだったのだ。後にムンクの作品は、ナチスによって「頽廃芸術」の烙印を押されたが、その主な理由がこの作品にあった。

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