美を読む

goya1783.1.florida.jpg

「フロリダブランカ伯爵の肖像」は、肖像画家としてのゴヤの名声を一気に高めた作品である。フロリダブランカ伯爵ホセ・モニーノは、スペイン王カルロス三世の信頼厚く、1777年以来宰相を務めていた。その人物にゴヤがどのような機縁で近づいたかはよくわからぬが、その肖像画を制作するや、大いに気に入られ、貴族社会に名を知られるようにもなった。そうした境遇をバネに、ゴヤは宮廷画家に迎えられることになる。

hogarth37.shrimp.jpg

ホガースは、版画家としては有名だが、油彩画家としてはあまり高くは評価されていない。そんな彼の油彩画のうち、最も有名なのが「エビ売りの少女」と呼ばれるこの作品である。これは一応肖像画ということになっているが、注文を受けて描いたわけではなく、ホガース本人の気晴らしとして描かれたものらしい。ホガース生存中は常に手元に置かれ、死後も妻はこれを売却せずに手元においた。クリスティーズのオークションにかけられたのは、妻の死後1789年である。その際に、カタログに「エビを売る少女」と記された。

hogarth36.GinLane.jpg

ウィリアム・ホガースの版画「ジン横町(Gin Lane)」は、「ビール通り(Beer Street)」と一対をなすもので、後者がビールが人々に及ぼす肯定的な効果を強調しているのに対して、これは、ジンが人々に及ぼす否定的な効果を強調する。その効果とは、人間の堕落であり、道徳の破壊であり、コミュニティの崩壊である。

hogarth35.beer.jpg

ウィリアム・ホガースが1751年に制作した版画「ビール通り(Beer Street)」は、「ジン横町(Gin Lane)」と一対になっている。これは、1750年に制定された法律「焼酎販売法( Sale of Spirits Act 1750)」の宣伝のために作られたものと言われる。焼酎販売法は、外国から輸入されるジンなどのスピリット類が、イギリス人を堕落させているとし、かわって国産ビールを飲むように勧める法律である。その法律の宣伝になぜホガースがかかわったのか。おそらくホガース自身に、外国から輸入される焼酎類に反感があったからと思われる。

hogarth34,election4.jpg

ウィリアム・ホガースの版画シリーズ「選挙のユーモア(Humours of an Election)」の第四作は「議員を椅子に乗せる(Chairing the Member)」と題する。選挙の結果当選した議員を、支持者らが椅子に乗せて行進する様子を描く。行進は穏やかには進まない。どんちゃん騒ぎを伴う。

hogarth33.election31.jpeg

ウィリアム・ホガースの版画シリーズ「選挙のユーモア(Humours of an Election)」の第三作は「投票(The Polling)」と題する。投票の当日の様子を描いたものである。版画ではよくわからぬが、油彩で見ると、右側がブルー(トーリー)、左側がオレンジ(ホイッグ)の旗である。それぞれの旗の下に各党が陣営を構え、やってくる有権者に投票を呼び掛けているところだ。

hogarth32.election2.jpg

ウィリアム・ホガースの版画シリーズ「選挙のユーモア(Humours of an Election )」の第二作は「投票の呼びかけ(Canvassing for Votes)」と題する。有権者の支持を得るための候補者の選挙運動を皮肉っぽく描く。というのも、彼らの選挙運動は買収という形をとるからである。18世紀のイギリスの選挙では、票の買収が選挙運動の中心だったことを思わせる。

hogarth31.election1.jpg

ウィリアム・ホガースの版画シリーズ「選挙のユーモア(Humours of an Election)」は、四枚組のシリーズで、当初は油彩画で書かれたものを版画に作りなおしたものだ。その際に、画面の構成を左右逆にしている。モチーフは、1764年に催された衆議院選挙で、オックスフォード選挙区の様子を描いている。当時の選挙は制限選挙で、しかも記名式とあって、賄賂や買収が横行していた。そんな不正選挙の様子を、面白おかしく描いたものである。風刺版画家ホガースの集大成的な作品との評価が高い。

hogarth30.industry12.png

ホガースの版画シリーズ「勤勉と怠惰(Industry and Idleness)」の第十二作目は、「勤勉な徒弟はロンドン市長(The Industrious 'Prentice Lord-Mayor of London)」と題する。勤勉な徒弟フランシス・グッドチャイルドが、勤勉にむくわれて出世を重ね、ついにロンドン市長に選ばれた様子を描く。この絵は、おそらく就任に伴う儀式なのであろう、市長が馬車に乗ってロンドン市内を行進している
様子を描いている。

hogarth29.png

ホガースの版画シリーズ「勤勉と怠惰(Industry and Idleness)」の第十一作目は「怠惰な徒弟はタイバーンで処刑される(The Idle 'Prentice Executed at Tyburn)」と題する。怠惰な徒弟トム・アイドルが、悪行の報いを受けて処刑される様子を描いたもの。絵は、大勢の人々が注視するなか、処刑場に引き立てられるトムを描く。タイバーンとは、ロンドン郊外にある村の名前で、12世紀の末から18世紀にかけて絞首台の処刑場がある場所として知られていた。

hogarth28.industry10.png

ホガースの版画シリーズ「勤勉と怠惰(Industry and Idleness)」第十点目は、「勤勉な徒弟は市議会議員、怠惰な徒弟は共犯者によって弾劾される(The Industrious 'Prentice Alderman of London, the Idle one brought before him & Impeach'd by his Accomplice)」と題する。かつて同僚だったフランシスとトムが再会する場面だ。その再会は、市議会議員になったフランシスの前に、トムが引き出されるというものだった。トムは悪事の共犯者から売られたのである。

hogarth27.industry09.png

ホガースの版画シリーズ「勤勉と怠惰(Industry and Idleness)」の第九点目は、「怠惰な徒弟が売春婦に裏切られ、共犯者ともども木賃宿につれていかれる(The Idle 'Prentice betrayed (by his Whore), & taken in a Night-Cellar with his Accomplice)」と題する。トムが売春婦に騙され、官憲につかまるところを描く。

hogarth26.industry08.png

ホガースの版画シリーズ「勤勉と怠惰(Industry and Idleness)」の第八作は、「勤勉な徒弟は豊かになり、ロンドンの保安官になる( The Industrious 'Prentice grown rich, & Sheriff of London)」と題する。勤勉に報われて成功したフランシスが、ロンドンの保安官となり、その優雅な姿を披露しているところを描く。保安官は、選挙によって選ばれ、シティの治安の任務にあたる名誉ある職である。

hogarth25.industry07.png

ホガースの版画シリーズ「勤勉と怠惰(Industry and Idleness)」の第七作は「怠惰な徒弟は海から戻り、売春婦と屋根裏にいる(The Idle 'Prentice return'd from Sea, & in a Garret with common Prostitute)」と題する。悪党仲間と海で暮らしていたトムは、久しぶりに陸に上がり、とりあえず屋根裏部屋で売春婦と一緒に暮らしている。この絵は、その屋根裏部屋のベッドの上に、売春婦と一緒に横になっているトムを描く。

hogarth24.industry06.png

ホガースの版画シリーズ「勤勉と怠惰(Industry and Idleness)の第六点目は、「勤勉な徒弟が年季奉公を終え、主人の娘と結婚する(The Industrious 'Prentice out of his Time, & Married to his Master's Daughter)」と題する。年季奉公を終えたフランシスが、主人の事業の共同経営者になったうえに、主人の娘と結婚した様子を描く。

共同経営者となったことは、店の看板に"WEST and GOODCHILD" とあることからわかる。この絵は、フランシスの成功を祝って、楽団のメンバーらが店に押しかけてきた様子を描く。窓から身を乗りだし、楽団員にコインを渡しているのがフランシス、その背後には新妻が控えている。また、玄関先で皿のようなものを差し出しているのは、店員であろう。結婚祝いの施し物を配るための受け皿を与えているのである。

施し目あてにやってきたものの中には、傷痍軍人らしきものもいる。左端で、盥のなかに入っている脚のない男だ。この男は、おそらく戦場で脚を失ったのであろう。彼が手に持っている紙には、二人の結婚を祝う曲の歌詞が書かれている。

遠景にはロンドン記念碑の下部が見える。17世紀半ばのロンドン大火を記念した建物だ。その大火で、中世のロンドンの街並みは消失した。


hogarth23.industry05.png

ホガースの版画シリーズ「勤勉と怠惰(Industry and Idleness)」の第五点目は「怠惰な徒弟は追放され、海へ送られる(The Idle 'Prentice turn'd away, and sent to Sea
)」と題する。怠惰な徒弟トム・アイドルが、ついに親方から愛想をつかされ、追放されてしまうところを描く。それにはフランシスの助言もあったと思われる。追放されたトムは、どういうわけか、遊び仲間とともに船に乗って、いづことも知れぬ場所に向かっている。

hogarth22.industry04.png

ホガースの版画「勤勉と怠惰(Industry and Idleness)」シリーズ第四点目は、「勤勉な徒弟は気に入られ親方に信頼される( The Industrious 'Prentice a Favourite, and entrusted by his Master)」と題する。勤勉な仕事ぶりを親方に評価され、気に入られたうえに信頼されるフランシス・グッドチャイルドを描く。

hogarth21.industry03.png

ホガースの版画「勤勉と怠惰(Industry and Idleness)」シリーズの第三点目は「教会内で礼拝中遊んでいる怠惰な徒弟(The Idle Prentice at Play in the Church Yard, during Divine Service)」と題する。休日にフランシス。グッドチャイルドとは全く違うことをしているトム・アイドルを描く。彼は教会の礼拝堂でお祈りをするかわりに、教会の一角でけしからぬ遊びにふけっているのである。

hogarth20.industry02.png

ホガース「勤勉と怠惰(Industry and Idleness)」シリーズの第二点目は、「キリスト教徒の義務を果たす勤勉な徒弟(The Industrious 'Prentice performing the Duty of a Christian)」と題する。二人の徒弟は、親方から日曜日を休日にしてもらい、自分なりの時間を過ごす。その時間を、フランシス・グッドチャイルドは、教会へ行くことに費やす。

hogarth19.industry01.png

ウィリアム・ホガースは、1647年に「勤勉と怠惰(Industry and Idleness)」と題する版画のシリーズを出版した。「娼婦と遍歴」(1631)の延長上にある教訓ものである。「娼婦と遍歴」では、世の中を甘く見たために身を落とし、若くして死んだ女性がテーマだったが、このシリーズでは、勤勉な人間と怠惰な人間の生き方を対比させて、怠惰は身を滅ぼし、勤勉は成功に導くということを、教訓として説教している。いかにも説教好きなホガースらしい作品と言える。ホガースは、これをより多くの人に見てほしいと思い、比較的安い値段で売り出した。評判はよかったようである。

Previous 1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  11



最近のコメント

  • √6意味知ってると舌安泰: 続きを読む
  • 操作(フラクタル)自然数 : ≪…円環的時間 直線 続きを読む
  • ヒフミヨは天岩戸の祝詞かな: ≪…アプリオリな総合 続きを読む
  • [セフィーロート」マンダラ: ≪…金剛界曼荼羅図… 続きを読む
  • 「セフィーロート」マンダラ: ≪…直線的な時間…≫ 続きを読む
  • ヒフミヨは天岩戸の祝詞かな: ≪…近親婚…≫の話は 続きを読む
  • 存在量化創発摂動方程式: ≪…五蘊とは、色・受 続きを読む
  • ヒフミヨは天岩戸の祝詞かな: ≪…性のみならず情を 続きを読む
  • レンマ学(メタ数学): ≪…カッバーラー…≫ 続きを読む
  • ヒフミヨは天岩戸の祝詞かな: ≪…数字の基本である 続きを読む

アーカイブ