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フランソワ・ブーシェ(François Boucher 1703-1770)は、ヴァトーより一世代後の、ロココ最盛期を代表する画家である。芸術上の運動としてのロココは、フランスの宮廷を中心として発展したのだったが、ヴァトー自身は、民間のパトロンの庇護を受けるにとどまり、宮廷社会とは距離があった。それに対してブーシェ、宮廷の厚い庇護を受け、いわば宮廷画家としての名誉を享受した。その画風は、ロココのなかでももっともロココらしいといわれるように、華麗で絢爛なものであった。

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パリスの審判はギリシャ神話に取材したモチーフで、ルネサンス以降多くの画家が描いてきた。有名なものとしては、クラナッハとルーベンスのものがある。両者とも、ヴィーナス、ミネルヴァ、ジュノーの三人を並べて描いている。それに対してヴァトーのこの作品は、ヴィーナスに焦点が当てられ、ほかの二人の女神はわき役に撤している。

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アントワーヌ・ヴァトーの作品「ジェルサンの看板(Enseigne de Gersaint)」は、彼の晩年の傑作であり、「シテールへの船出」と並んでフランスロココ美術の頂点をなすものとの評価が高い。

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「フランス喜劇の恋( L'amour au Théâtre Français)」は、ヴァトーの数多くの演劇趣味のうちの一作。舞台上と思しき場所に、劇団の一座が集合した場面。よく数えていると、劇団員は16人いて、それらが半円状に並んでいる。その中心にいるのは、画面やや左手に立っている女性。彼女の視線の先には色男がおり、彼女とその色男のやりとりを、まわりのものらが見ているという構図である。

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「田園の楽しみ(Fête galante)」と題されたこの作品は、田園にピクニックに出かけた若い男女たちを描いたもの。多くのカップルたちが、森の中の空地に腰掛け、思い思いにくつろいでいる様子を描く。「シテールへの船出」とはまた異なった趣の田園趣味を表現した作品である。

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「シテールへの船出(L'Embarquement pour Cythere)」は、ヴァトーの代表作であるのみならず、ロココ芸術を代表する傑作である。ロココ的な典雅な雰囲気がもっとも豪華絢爛に表現されている。ヴァトーはこのモチーフを二点制作しており、パリにあるものが最初に作られ、その一年後にベルリンにあるものが作られた。

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「愛の調べ(La gamme d'amour)」と題するこの作品は、田園を背景に人物の優雅な仕草を描くというヴァトー得意のモチーフである。木の根株に座った男がギターを弾き、その隣に女が腰を下ろして男の顔を見つめている。女は楽譜らしいものを持っているが、それは小道具としての扱いに過ぎない(あるいは男がその譜面に見入っているという解釈もある)。

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「驚き」の画面の中にいたメズタン(メッツェティーノ)を単独でフィーチャーしたのがこの作品。メズタンは、一人で公園のベンチに腰掛け、ギターを弾いている。だが、よく見ると、彼の視線は上方のバルコニーらしき方向へ注がれている。もしかしたら、メズタンはバルコニーにいる恋人に愛の歌を贈っているのかもしれない。

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ヴァトーは、コンメーディア・デッラルテと深いつながりがあったようで、座付き役者たちの演技をモチーフとした作品をいくつも制作している。「驚きLa  Surprise」と題されたこの作品もその一例である。

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ヴァトーは、喜劇役者をモチーフにした作品をいくつも制作している。フランスの喜劇一座やイタリアの有名な喜劇一座「コンメーディア・デッラルテ」もモチーフに取り上げている。「ピエロ」あるは「ジル」とよばれるこの作品は、喜劇役者をモチーフにしたものとしては、最も早い時期のものである。

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「無関心(L'Indifférent)」と題されるこの作品は、「ラ・フィネット」とともに一対をなすものとして見られることが多い。どちらも非常に小さな画面に人物の姿を描いており、ほぼ同時期に描かれ、また同じころにルーヴルに収蔵されたからだろう。

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「ラ・フィネット(La Finette)」と題するこの絵は、フィネット布のドレスをまとった若い女性の肖像。フィネットは、絹を素材にした繊細な布地のこと。その布地で編んだドレスを着た若い女のモデルはわからない。「眺め」の画面でポーズをとった人々と関係があるのかもしれない。

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「気恥ずかしい申し出(La Proposition embarrassante)」と題するこの作品は、ヴァトーの雅宴図の初期の傑作。雅宴図の定石通り、野外で宴会服を着た人々が、思い思いにピクニック気分に耽っている場面を描いている。

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アントワーヌ・ヴァトー(Antoine Watteau 1684-1721)は、フランスのロココ美術を代表する画家である。ロココ美術は、18世紀のフランスの宮廷から発生したと言われ、非常に典雅な画風が特徴である。ヴァトーはそうしたフランス風のロココ美術の特徴をもっともよく体現した画家である。1710年代の後半に現れ、わずか37歳の若さで死んでしまったが、かれの画風は以後のフランス絵画に大きな影響を与えた。ヴァトーの登場によって、それまで地方的な位置づけしかもたなかったフランス美術が、ヨーロッパ美術を牽引するようになる。

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ホッパーは、人生最後の作品のモチーフに、自分と妻ジョーを選び、それに「二人のコメディアン(Two Commedians)」と題した。この時ホッパーは83歳になっており、ジョーも80歳を超えていた。しかも二人とも病気だった。そのためホッパーはこの絵を描いた二年後に死に、ジョーはその翌年に死んだ。だからこの絵は、彼らにとって人生最後の総決算のようなものだった。

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ホッパーはオフィスをモチーフにして繰り返し描いた。そのほとんどはオフィスの内部を、その内部の視点から描いたものだった。ところがこの「ニューヨークのオフィス(New York Office)」と題した作品は、外部から窓越しにオフィスの内部を描いたものだ。非常にユニークな視点なので、見ているものに強い衝撃を与える。

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「日を浴びる人々(People in the sun)」と題したこの絵は、構図の特異さが人の度肝を抜く。道路上に椅子を並べて座った人々が画面の左半分を占め、残りの右半分には低い山々からなる自然が描かれている。人間と自然が対面しているわけであるが、しかし人々は自然を見ているわけではない。人々は何も見てはいないようなのだ。かれらはひたすら日を浴びて、体を温めがっているように見える。

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「西部のモーテル(Western Motel)」と題したこの絵は、ホッパー馴染みのモチーフであるアメリカの自然と室内の人物とを組み合わせたもの。アメリカの自然は、モーテルの窓越しに見えるのだが、そらはあたかも西部劇のセットのように見えている。だからタイトルのWesternは、ウェスタンではなく西部劇の西部と読むべきなのだろう。

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ホッパーは、荒々しい自然の中にぽつんと存在する人工的な構築物を描くのを好んだ。「サウス・カロライナの朝(South Carolina Morning)」と題したこの絵は、果てしなく広がるビーチの中にぽつんと立っている小さな家と、その家の玄関にぽつんと立っている女性を描いたものだ。

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「線路際のホテル(Hotel by a railroad)」と題したこの絵も、閉じられた空間にいる人物をモチーフにしている。おそらく夫婦だろう。夫婦が二人きりになっているのだが、かれらは互いに意識していない。それぞれ自分の世界に閉じこもっている。そこに我々は、アメリカ人の人間関係のドライさを感じる。そのドライさは、夫婦のような、本来親密であるべき関係にあっても支配的なのだ。

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