「フランス喜劇の恋( L'amour au Théâtre Français)」は、ヴァトーの数多くの演劇趣味のうちの一作。舞台上と思しき場所に、劇団の一座が集合した場面。よく数えていると、劇団員は16人いて、それらが半円状に並んでいる。その中心にいるのは、画面やや左手に立っている女性。彼女の視線の先には色男がおり、彼女とその色男のやりとりを、まわりのものらが見ているという構図である。
「シテールへの船出(L'Embarquement pour Cythere)」は、ヴァトーの代表作であるのみならず、ロココ芸術を代表する傑作である。ロココ的な典雅な雰囲気がもっとも豪華絢爛に表現されている。ヴァトーはこのモチーフを二点制作しており、パリにあるものが最初に作られ、その一年後にベルリンにあるものが作られた。
ホッパーはオフィスをモチーフにして繰り返し描いた。そのほとんどはオフィスの内部を、その内部の視点から描いたものだった。ところがこの「ニューヨークのオフィス(New York Office)」と題した作品は、外部から窓越しにオフィスの内部を描いたものだ。非常にユニークな視点なので、見ているものに強い衝撃を与える。
「日を浴びる人々(People in the sun)」と題したこの絵は、構図の特異さが人の度肝を抜く。道路上に椅子を並べて座った人々が画面の左半分を占め、残りの右半分には低い山々からなる自然が描かれている。人間と自然が対面しているわけであるが、しかし人々は自然を見ているわけではない。人々は何も見てはいないようなのだ。かれらはひたすら日を浴びて、体を温めがっているように見える。
「線路際のホテル(Hotel by a railroad)」と題したこの絵も、閉じられた空間にいる人物をモチーフにしている。おそらく夫婦だろう。夫婦が二人きりになっているのだが、かれらは互いに意識していない。それぞれ自分の世界に閉じこもっている。そこに我々は、アメリカ人の人間関係のドライさを感じる。そのドライさは、夫婦のような、本来親密であるべき関係にあっても支配的なのだ。
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