「夜のオフフィス(Office at Night)」と題するこの作品も、閉じられた空間を描いたもの。事務室の狭い空間に二人の人物が描かれている。一人はデスクに向かっている中年男で、もう一人はその男を見下ろしている若い女。女はオフィスにいるにしては、肌や体の線を露出させるような挑発的ななりをしている。それに対して中年男のほうは、女の存在をまったく気にしていないようだ。書類を扱っているところから、弁護士とか会計士を連想させる。
ホッパーは、1930年代には、風景画はけっこう描いているが、人物画は少ない。ホッパーの人物画は、車内とかオフィスルームなど、閉じられた空間の中に、いわくありげに見える人間をスナップショット的に描いたものが多い。「ニューヨークの映画館(New York movie)」と題する1939年の作品もその典型的なものだ。
ホッパーは鉄道の線路をよく描いたが、列車にも関心をもっていたようだ。「コンパートメントC(Compartment C Car)」と題するこの作品は列車の社内の空間を描いたもの。コンパートメントと呼ばれる客室の内部だ。コンパートメントはふつう、個室状になっているものでが、これは開放的な作りだ。おそらく片側が通路で、それに沿ってコンパートメントが並んでいるのだろう。そのコンパートメントを、通路を通りがかった者の目からとらえたというのが、この作品の構図だ。したがって、やや上部から室内を眺め下ろした感じになっている。
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