先日、トランプ政権の閣議が公開されたが、その様子があまりにも異様だったので、世界中が驚かされた。というのも、閣僚たちが次々とトランプ大統領に向かって最大限の賛辞を捧げたその様子が、皇帝に対する臣下の忠誠のように見えたからだ。いまどき臣下が皇帝に忠誠を誓う国と言えば、先進国の間ではどこにもない。だから先進国のメディアは、この様子をこぞって、おもしろおかしく報道した。中には、トランプ政権を中国の習近平政権に譬え、どちらも皇帝への個人崇拝を皇帝自らが強要しているとして、その異常さを比較しているものもある。英紙 Guardian の記事はその代表的なものだ。後日の参考のために、引用しておきたい。
世界情勢を読む
イギリスで総選挙が行われ、事前の予測に反して、メイ首相率いる保守党が敗退した。敗退というのは、これまで単独で過半数を占めていたものが、過半数を割り込んだという意味だ。メイ首相が、単独過半数という財産を犠牲にしてまで、まだ三年も任期を残している下院を解散した理由は、自分自身選挙の洗礼を受けておらず、その点で正統性に疑問を投げられていることについて、選挙で過半数を取ることで、その正統性を得たいという思惑があったからであり、また、その選挙に勝つ自信があったということだった。ところが、そうした見込みに反して、メイ首相の保守党は過半数を割ることとなり、彼女の政権基盤は一層不安定になった。そのことで、彼女はわざわざやらなくてもすんだことをやって、自分の墓穴を掘ったとあざけられる始末だ。
トランプがロシアのラブラフ外相らとホワイトハウスで会談した際に、ISにかかわる機密情報を漏らしたというので大きな騒ぎになっている。例によってオルタナ・ファクトが好きな側近たちが懸命にその事実を否定して、火消しにつとめているが、当の本人がそれを認めている。しかも誇らしげにだ。自分には、非常に貴重な情報が日々入ってくる、その情報をロシアの友人たちと共有したいというのだ。
トランプがFBIのトミー長官を解任したというので、ちょっとした波紋を巻き起こしているようだ。解任というと聞こえはいいが、要するに強引にクビにしたということだ。しかもその理由にいかがわしいものがある。トランプは、もっともらしい理屈を弄しているが、真の動機はFBIの操作妨害にあるとささやかれている。つまり、トランプのロシアスキャンダルを、FBIが追跡する動きを強めていることに対して、危機感を覚えたトランプが、長官の首をすげ替えることで、捜査の動きを骨抜きにしようと企んだ、というわけである。
フランスの大統領選は、マクロンがル・ペンに勝利した。この結果を、ヨーロッパで吹き荒れていた反EUの動きにブレーキがかかったと見るか、あるいはフランス人が極右政党へ権力をゆだねることを拒んだと見るか。いづれの見方をするにせよ、マクロンの圧倒的な勝利とはいえないという点では、一致するのではないか。筆者が見るにはこの選挙結果は、EUへの信認投票というよりは、極右のル・ペンに権力を渡すことの危険性に、フランス人がノーを突きつけたということではないか。
金正恩の挑発的な態度に頭に来たトランプが、もし金正恩が核実験をしたら許さない、その場合にはアメリカは北朝鮮に対して先制攻撃も辞さない、と言って、空母カールビンソンを旗艦とする海上攻撃部隊を北朝鮮に向かわせた、と発言したことで、世界中が大騒ぎになった。ところが、カールビンソンは北朝鮮に向かっていたのではなく、シンガポールを出航した後インド洋に向かい、そこでのんびり油を売っていることがわかった。それでまた世界中が大騒ぎになっている。いったい、どうなってるんだ、と。
どの国にも一つや二つ不都合な真実というべきものがある。フランスの場合、その最たるものは"Vel d'Hiv"だろう。これは第二次大戦中にフランスで起きたユダヤ人狩りの中でもっとも大規模なものだ。1942年の7月に、パリにある屋内競技場に13000人のユダヤ人が集められ、ナチスの強制収容所に送られた。そのほとんどは殺された。その内訳は、女性が約5900人、子どもが約4100人、男性が約3100人だった。
トランプが最側近のバノンを国家安全保障会議(NSC)の常任メンバーからはずしたことで、さまざまな憶測を呼んでいる。トランプの娘婿クシュナーとバノンの対立をトランプが喜ばなかったとか、NSCの議長マクマスターが異端のバノンの追い落としにかかったとか、いうものである。最大の理由はやはり、トランプがバノンに政治的な意味でのまずさを感じ始めたからではないか。
トランプが、シリアのアサド政権の軍事拠点への爆撃に踏み切った。理由はアサド政権による市民への無差別な毒ガス攻撃が一線も二線も超えたということだ。一見理屈にかなった判断のように見えなくもないが、果して今回のトランプの措置は、熟慮の結果だったのか。どうもそう見えないところに、恐ろしさを覚える。
トランプが公約の最重要政策に掲げていたオバマケアの廃止とその代替策への置換えが頓挫した。理由はトランプが与党の共和党をまとめきれなかったことだ。共和党内には、オバマケアの完全廃止と代替案の不要を主張するリバタリアンたちの勢力と、完全廃止によって5000万人以上の無保険者が出ることに批判的な穏健派があって、党としての一体化が図れなかったのである。
いま日本中で大騒ぎになっている森友学園問題。これが海外にどう見られているか。どうでもよい事かもしれぬが、多少は気にかかるのが人情というものだ。そこで海外メディアのWEBサイトを色々当ってみたが、Economistのものが一番オーソドックスな反応だと思われたので、それを後学のために引用しておきたい。
トランプがツイッター上で、例の調子でオバマを罵った。大統領選挙期間中に、トランプタワーにある自分のオフィスに盗聴器を仕掛けるよう命令したというのだ。だがその根拠は何も示していない。極右プロパガンダメディア、ブライトバートの記事が唯一の根拠らしい。トランプ自身も信じているかわからないこんなガセネタを使って、何故こんな攻撃を仕掛けたのか。
米国防総省の付属機関がアメリカの核政策についての提言を行ったそうだ。その柱は二つ、一つは新たな核兵器の開発を目的に核実験を再開すること、もう一つは小型核兵器を用いて敵の戦争能力を破壊するために限定的な核攻撃(限定核戦争)の可能性を追求することだ。
トランプの対メディア戦争がいよいよ現実化したようだ。日頃自分を批判するメディアを敵視してきたトランプだが、先日の保守系の集会CPACの会場でそうしたメディアを不正直でうそつきだと改めて決めつけ、彼の腹心のバノンは、トランプを批判するメディアは「国民の敵」だと断言した。そういう動きを受けた形で、ホワイトハウスでは記者会見の会場からトランプに対して批判的なメディアが締め出される一方、トランプに好意的なメディアだけを対象に会見が行われるという事態が起きた。
このところアメリカ各地のユダヤ人施設が爆破予告などのいやがらせにあっているという。これはアメリカ国内で高まっている人種差別感情が、ユダヤ人に対して向けられているものだ。アメリカに限らず白人国家では、人種差別感情が高まるごとにユダヤ人が標的になってきた歴史がある。今般については、その人種差別意識を煽動しているのがトランプだ。トランプは、自分の娘婿がユダヤ人であり、娘自身もユダヤ教に改宗したこともあって、イスラエルやアメリカのユダヤ人コミュニティに対して自分のユダヤ贔屓をアピールしているが、それが反イスラムの人種差別と結びついていることで、アメリカ人の人種差別意識を刺激し、その攻撃性がユダヤ人に向かっているのだと考えられる。
トランプがイスラエル首相ネタニアフとの会談後に行った記者会見の席で、これまでアメリカの外交方針だったイスラエル・パレスティナの二国家共存構想に疑問を投げかけた。その意図は、これまでこの構想が実現しなかったのだから、ここで新しいアプローチを考えてもよいということらしい。
トランプが登場して、アメリカのエスタブリッシュメントと世界秩序への挑戦を叫ぶようになって、世界に大きな衝撃が走っている。従来の同盟国を含めてどの国にもマイナスの影響が予想されるなかで、最も大きな影響を蒙るのは中国だと思われる。その影響は経済と政治の両面に及び、場合によっては新たな冷戦の始まりを予想させるような厳しいものになる可能性がある。
先般、トランプとベルルスコーニの共通点を強調する意見を紹介したが、最近はトランプをフィリピンのドゥテルテに比較する議論もあるようだ。最近のJapan Times に載っていたフィリップ・バウリングの小文などもその一つだ。バウリングによれば、この二人は致命的なところで共通の間違いを犯している。それは同じく共通点と言っても、負の共通点というわけだ。
保守派の論客で、辛口批評で知られるジョージ・ウィルが、Japan Times に寄せた文章の中で、トランプを評して「アメリカ政治界のゲンゴロー」と言った。ゲンゴローというのは、甲虫の体を起用に動かして水の上を移動しているが、それは無心に動いているから浮いていられるのであって、俺はどうして浮いているんだろうなどと考えはじめたら、沈んでしまう。それと同じように、トランプも何も考えずに生きている。考えることは自分にとって得策でないと、本能的にわかっているからだ、というのである。
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