世界情勢を読む

ウクライナ戦争がきっかけとなって、地球社会は軍拡競争時代に入った。各国とも防衛予算を倍増させているし、ポーランドなど四倍増させた国もある。日本でさえ、岸田政権が、財源の見通しもつけないまま、防衛費倍増の政策に舵を切った。こうした動きによって最も恩恵を受けているのが、欧米の軍需産業だ。アメリカやイギリスの軍需企業は空前の利益を上げている。そのほかにも、戦争の副作用としてエネルギー危機がおこり、そのことで米英の石油メジャーがぼろもうけしている。また、石炭企業も復活を果たしており、脱酸素の動きなどどこ吹く風の扱いだ。

中国の風船がアメリカ上空に飛来し、それをバイデン政権が破壊したことが、大騒ぎになっている。アメリカはこれを、中国がアメリカの機密情報を収集するために飛ばした偵察気球だと非難し、それを破壊することは、アメリカの安全保障上当然のことだと言うのに対して、中国側は、これは民間の気象調査用の風船であり、それが思いがけず、アメリアの上空に迷い込んだだけのことであり、それを一方的に破壊する行為は過剰反応だといって避難し、報復措置を匂わせている。だが、そんな脅しに対して、議会も超党派で対中対決姿勢を強めている。それに乗っかる形でバイデンも、「おれが率先して中国風船をつぶした」といって、自分の手柄を強調し、大よろこびする始末である。

ゼレンスキーが政府高官などの汚職摘発に乗りだしたことが話題となっている。摘発された高官のなかには、国防省の幹部も含まれているというからかなり深刻だ。ゼレンスキーがいま汚職の摘発に腰を上げたことには、いくつかの理由があると憶測されている。一つは、かねてからの公約を実施したということ。ウクライナは、ロシア同様汚職が蔓延する腐敗国家というイメージがあった。そのイメージを振り払わないと、悲願のEU加盟が達成できないということがあるのと、また、西側からの援助にさしさわりがあると認識したこともあるだろう。

ドイツを先頭にしてNATOに結集する西側諸国が揃ってウクライナに重戦車を供給することとなった。その数300台にのぼるという。全部揃うまでには時間がかかるようだが、それによってウクライナの対ロ反撃能力は飛躍的に強まるだろう。戦車同士まともに戦ったらかなわないとロシアは認識しているようで、さっそく防御態勢の構築にとりかかっている。東ウクライナの前線沿いに長大な防御陣地(土塁や塹壕など)を築き、西側の戦車の進軍を阻むとともに、反撃の態勢を準備しているようだ。

1月27日はアウシュヴィッツの78年目の記念日だというので、現地では記念集会が開かれたそうだ。前年までは、アウシュヴィッツをナチスから解放したソ連の後継者ロシアが毎年招待されていたが、今年はされなかった。ロシアのウクライナへの侵略に抗議する意思を示したということらしい。一方、アウシュヴィッツの解放とは直接関係のないアメリカの代表が招待された。招待されたのはハリス副大統領の夫ということだ、無論アメリカを代表するかたちで招待されたのであろう。

対中人種戦争を仕掛けたバイデンだが、目下ウクライナを舞台にした対ロ代理戦争に手がいっぱいなようで、対中関係はいまのところエスカレートまではいたっていない。だが全く静観しているわけでもなく、半導体をめぐる対中攻撃にとりかかった。中国の半導体産業を弱体化させるために、半導体の生産に必要な製品を輸出禁止しようというもので、それに日本とオランダがまきこまれた。バイデンは、世界の半導体製造装置の大半を生産しているアメリカ・オランダ・日本の企業に対して、中国への製品輸出をやめるよう求めたのだ。オランダの企業ASMLは、そんなことをしても無駄だといって抵抗するそぶりを見せたが、オランダ政府の圧力で受け入れざるを得なかったようだ。日本の企業東京エレクトロンは、日本政府の言いなりになるようである。

今般のウクライナ戦争をめぐって、ドイツは攻撃能力の高い戦車レオパルト2をウクライナに供与することを決定した。あわせて、他国が保有するレオパルト2をウクライナに供与することを認めることとした。これは、西側による対ロ代理戦争の一層の深まりを意味するだけではなく、ドイツが軍事大国として対ロ戦争に本格的に参加することを意味する。

雑誌「世界」最新号(2023年1月号)のアメリカ特集のからみで、秋元由紀・押野素子の対談「ベストセラーが照らすアメリカ黒人の生」が掲載されていて、大変興味深く読んだ。二人とも女性のアメリカ研究者だそうで、アメリカに暮らした経験があり、アメリカにおける人種差別の根深さを肌で知っているようである。アメリカの人種差別といえば、白人による黒人の差別が基本で、それに加え、アジア人やヒスパニックが白人の差別の対象になる。白人の黒人差別は、奴隷制の歴史に根ざしたもので、そう簡単にはなくならないし、場合によっては露骨な形をとることもある。それに比べれば日本人を含めたアジア人は、黒人ほど露骨な差別はうけないが、しかし、強烈な差別意識を感じさせることはあると、二人は言う。とくに、アジア人が優秀で白人と同等の能力を発揮するような場合に、差別が表面化する。黄色いくせして、身の程をわきまえない奴だというわけである。

アメリカは信仰の自由を求めた人々が中心になって「建国」されたという事情があって、宗教が政治に大きな影響を及ぼしてきたと言われる。レーガンやトランプが大統領になったのも、保守的な宗教人口に支えられてのことだとされる。松本佐保の「熱狂する神の国アメリカ」(文春新書)を読むと、アメリカ政治史における宗教の役割がよくわかる。

ウクライナ戦争をめぐって、自由でリベラルな国家と専制的な国家の対立という図式が流布されている。欧米をはじめとしたリベラルな国家は、自由と民主主義を奉じるウクライナが、専制的な国家であるロシアに侵略されるのを見過ごすことはできない、といった理由から、欧米諸国のウクライナ戦争への介入が正当化されている。それは、今の国際社会の深刻な分断を反映しているのであろう。そういう状況をどう考えるか。雑誌「世界」の最新号(2022年12月号)が、「分断された国際秩序」と題して、ウクライナ戦争をめぐる、世界の分断について特集している。

アメリカが世界で唯一の大国になったことで、アメリカ外交はまずまず独善的になった気がするが、それにはさまざまな事情が働いている。その中でもっとも深刻なのは、アメリカの高級公務員がメリット・システムに従って、政治的な動機から任用されていることだ。その結果、内政はともかくとして、外交を担う高級公務員が素人によって担われ、知識と経験の裏付けをかいた、その場限りの決定がなされるため、世界中を危険にさらすような決定がなされがちになる。そうした危険性を指摘した論文が、ネット・オピニオン誌POLITICOに掲載されている。How Foreign Policy Amateurs Endanger the World Political appointees have too little experience and too many delusions.By DEREK LEEBAERT

ウクライナ戦争をめぐる報道を見る限り、プーチンの意図は破綻し、敗北の色が濃厚になってきた、というような見方までされているが、果たしてそうなのか。そこにはプーチン憎しの感情にもとづく希望的観測が含まれていないか。そんなことを思っていた矢先に、ウクライナがかえって深刻な窮状に陥っており、ウクライナ自体が敗退するばかりか、そのウクライナを支援する西側諸国も深刻な事態に直面するだろうという見通しを述べた記事に遭遇した。アメリカの保守系雑誌 The American Conservative に寄せられた Holding Ground, Losing War :Zelensky's strategy of defending territory at all costs has been disastrous for Ukraine. By Douglas Macgregor という文章である。

かつてエリツィンとともにロシア現代史を彩った男ゴルバチョフが死んだ。エリツィンが死んだとき、小生は一文を草してその死を惜しんだことがあったが、ゴルバチョフに対しては、そんな気にはなれない。エリツィンには人に愛される能があった。ゴルバチョフにはそれがない、ということでもない。だが何といってもゴルバチョフは、ロシア史に巨大な足跡を残した男だ。何らかの形で言及せねばなるまい。

国連本部で行われていた核不拡散条約(NPT)の再検討会議が、最終文書を採択できず決裂した。前回に続いての再度の決裂である。このことについて、NATO諸国を始めとした西側は、ひとえにロシアの責任だといって非難しているが、それは一方的な言い分だろう。この決裂は、今日世界が陥っている深刻な分裂を反映しているのであり、その分裂の責任は、ひとりロシアのみならず、アメリカをはじめとした西側諸国にもある。

人間の寿命が飛躍的に伸びたおかげで、老人が政治を牛耳る眺めが日常のものとなった。老人が政治のかじ取りをすること自体、絶対悪というわけではないが、しかし近年の世界の混乱ぶりを見ていると、その原因のほとんどは老人にあることがわかる。その老人たちの振舞いぶりをみていると、ボケているとしか思えない。ボケた老人たちに勝手なことをさせて、地球の命運があやしくなっているのは、看過できないことだ。

今般のウクライナ戦争では、当初ロシア軍の圧倒的優勢が伝えられ、その勝利は揺るぎないものと思われていた。しかし戦争が始まってすでに三か月たったいま、ロシア軍は圧倒的な勝利を収めるどころか、各地で苦戦を強いられ、一部では劣勢が伝えられている。中には、ロシアの敗北を予想するものまでいる。これは大方の予想に反した意外な事態と受け止められているが、小生はありうることだと思っていた。その理由は、ロシア軍が攻撃的な戦争を得意としていないことにある。二つの面で、ロシア軍は攻撃的な戦争には向いていないのだ。一つはロシア人の国民性に根差している。もう一つはロシア軍の伝統的な作戦思想に根差している。

ウクライナへの侵攻がうまくいかないのは、NATO諸国が事実上ウクライナの側にたって参戦しているからだとして、場合によっては核兵器の使用も辞さないと、プーチンが恫喝的な発言をしている。もし、実際プーチンが核兵器を使用したら、バイデンとしてはどうするつもりか。バイデン政権はすでに、その事態を想定したシミュレーションをしているそうである。

ロシア軍によるウクライナへの侵攻に怒り心頭のバイデンが、プーチンを戦争犯罪人の人殺しと呼び、この惨事にかかわる責任はプーチン個人が負うべきだと主張した。バイデンはこういうことで、プーチンが打倒されない限りこの問題の解決はありえないと言っているわけである。その一方、アメリカは軍事介入する意思はないという。NATOもそれに右へならえしているから、プーチンが外国の力によって打倒されることはない。もしかしてプーチンを打倒するものがあるとして、それはほかならぬロシア国民以外にはないだろう。つまりロシア国民が自国の大統領を権力の座から追わない限り、この問題の解決はないということだ。

ウクライナの戦線でロシア側の将軍たちが次々と殺害されているという。これまで4人の殺害が確認されている。ウクライナ戦線におけるロシア側将軍の定数は20人というから、その二割が殺されたということで、軍事的にはかなり異常な事態である。

プーチンのウクライナ侵攻をうけて、アメリカおよびNATO諸国がロシアへの厳しい制裁に及ぶ中、ドイツもロシア制裁に踏み切った。これは第二次世界大戦後、国際政治にもっとも巨大なインパクトをもたらすと予想される。場合によっては、独ロ対立がエスカレートするあまり、世界大戦に発展しかねない危険をはらんでいる。

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