世界情勢を読む

岩波新書版「シリーズ中国近現代史」②は、1894年から1925年までの約三十年間をカバーしている。清朝が自滅的に崩壊し、その後中国という国民国家の建設に向けて動いていた時代だ。この時代を著者は、既成の見方からなるべく自由な立場から、できるだけ相対的に見ていきたいと言っている。既成の見方の代表は、中共史観ともいうべきもので、この時代を過渡的なものと位置づけ、最後には中国共産党が革命へと導いていったとする見方である。それに対して著者は、「この時期は、『救国』のためのさまざまな考えが溢れ出し、『中国』の人々の想像力が最大限に膨らんだ時期」であり、現代では見られない『中国』のさまざまな可能性が示された時期」と見ている。

岩波新書版の「シリーズ中国近現代史」の第一巻は「清朝と近代世界」と題して清朝の歴史を対象としている。清朝は、現在の中国の直前の王朝であったから、中国近現代史の前触れとして清朝の歴史を取りあげるのは自然なことである。日本の近現代史を幕末から始めるようなものだ。だが、この本は(中国近現代史に直接つながる)清朝の末期だけではなく、清朝の歴史全体をカバーしている。それには理由があると著者は言う。中国という国家概念が成立したのは清朝時代のことであって、その清朝の時代にほぼ現在の中国の領域が固まった。明代以前には、満洲地域やモンゴル、西域やチベットは、かならずしも現在言われているような意味での中国の領域には含まれていなかった。それらの領域は、民族的にも異なり、従って中国の王朝が直接統治していたわけではなかった。清朝になって初めて、それらの領域とそこにすむ民族とが、中国の王朝の統治に組み込まれたのである。したがって、清朝こそが現代中国国家の領域と民族構成とを直接に決定したのである。そうした意味で清朝は、中国近現代史の前提というか、その不可欠の一部だというのが、著者の基本的な見方である。

ニューヨークで、日本人ピアニストの男性が、アメリカ人少年少女の集団八人に襲撃され、大怪我を負わされた。被害者の証言では、少年少女たちが「チャイニーズ」と叫びながらいきなり襲ってきたというから、人種差別意識がもたらしたヘイトクライムと考えられる。

天児慧の「中華人民共和国史新版」(岩波新書)は、中華人民共和国の誕生から習近平の登場する2012年頃までをカバーしている。新中国の通史という触れ込みだが、カバーする期間に着目すれば、一応そう言えるかもしれぬ。その通史を著者は、五つのファクターを意識しながら書いたということらしい。その五つのファクターとは、革命、近代化、ナショナリズム、国際的インパクト、伝統のことを言う。革命に着目するのは、新中国が社会主義革命によって成立したという建前からすれば穏当なところだろう。だがどんな革命だったのか、それが必ずしも明らかにはされていない。この本を貫いているのは、新中国の歴史を革命の進展として見るのではなく、権力闘争の歴史としてみる視点というふうに伝わって来る。だから、21世紀の中国がどんな体制の国なのかそれが不明瞭になっている。権力闘争の結果たどりついた体制というだけで、それが果たして社会主義国家といえるのかどうか、そのへんが曖昧になっている。

小島晋治、丸山松幸共著の岩波新書版「中国近現代史」は、1840年の阿片戦争から1980年代初頭までの中国近現代の通史である。日本の近現代史は、1853年のペリーの黒船来航から始まるわけだが、中国はそれより十数年前にイギリスとの戦争に敗れたことで、いやおうなく西洋諸国の圧力にさらされるかたちで近代史への扉を開かされたといえる。その後日本は西洋からの圧力に耐え、独立国家としての面目を保ったのに対して、中国は半植民地化され、苦難の歴史を歩んだ。その違いはどこから来たか。この本はそんな疑問に一定程度答えてくれる。

米最高裁判事のルース・ベイダー・ギンズバーグの死去にともない、その後任人事をめぐって大騒ぎになっている。トランプと上院共和党は、大統領選の前に指名手続きを終わらせたいのに対して、バイデンと民主党は、大統領選後になすべきだと主張している。じつは四年前の大統領選挙のさいにも、それより数か月前に死んだ判事の後任指名を、選挙後に延ばしたということがあった。その際には、共和党側の強い意向に民主党側が譲歩したのであったが、今回はその共和党が、前例を無視して、早めに指名しようとして動いているわけだ。

トランプは、米軍の戦死兵士に敬意を払わないし、場合によっては侮辱することもある。そういってトランプを厳しく批判する記事が米紙The Atlanticに掲載された(Trump: Americans Who Died in War Are 'Losers' and 'Suckers')。記者は同紙の主任編集員ジェフリー・ゴールドバーグ。この記事を読むと、トランプの人間性がよく見えて来る。かれにとっては、金にならないことをするのはバカのやることで、利口な人間は、金にならない無駄なことはしない。兵役に志願して命を失うことは、もっとも馬鹿げたことである。そういうトランプには、世の中に、金以外に重要な価値があることなど考えられない、と、この記事はトランプの人間性を厳しく批判している。

アメリカの軍隊は、伝統的に共和党寄りだった。軍人出身の大統領アイゼンハワーは共和党員だったし、過去の大統領選挙では、軍人たちの共和党候補への支持が目立った。トランプでさえ、軍人からの支持はヒラリーを上回ったのである。ところが最近、そうした傾向に異変が起きているという。バイデンへの支持がトランプを上回ったとの調査結果が出ているのだ。

中東は日本から距離が遠いので、地政学的な条件から外交上大きな意義を占めることはなかった。特に戦後においては、日本はアメリカの属国のような立場になり、独自外交を展開する余地はあまりなくなった。日本の戦後外交は、基本的にはアメリカの外交政策に乗ったものにならざるを得なかった。それを踏まえたうえで、国連の政策と歩調をあわせるというのが日本外交の基本的な方向性だったということができる。

イスラエル国家の成立には複雑な国際事情が働いていた。イスラエル建国への歩みを始めたのはヨーロッパにいたユダヤ人だったが、かれらの力だけで成就したわけではなかった。イギリスはじめヨーロッパの大国の利益が複雑にからんだ。それをユダヤ人が利用し、またイギリスなどのヨーロッパ諸国もユダヤ人を利用しながら、イスラエル国家を成立させたといってよい。ユダヤ人にとっては、それは夢に見た自前の国家を持つことであり、イギリスなどヨーロッパの大国にとっては、自国内の厄介者を追いはらう先を見つけることだった。一方もともとパレスチナに住んでいたアラブ人たちにとっては、それは住処から追われることを意味し、災厄以外の何ものでもなかったわけだ。

2010年末にチュニジアで大規模な反政府デモが起きてベンアリ政権が倒れたのを皮切りに、エジプトのムバラク政権、リビアのカダフィ政権が次々と倒れ、ほかのアラブ諸国にもデモの波は広がった。アラブ世界におけるこの一連の反政府暴動を「アラブの春」とか「アラブ革命」とか呼ぶ。イスラーム側からは「イスラームの春」と呼ぶこともある。

UAEとイスラエルが国交を樹立したのは、トランプの仲介によるものだった。この仲介をネタニアフのイスラエルが受け入れたのは自然なことだが、USEが受け入れたことには疑問の声があがっている。両国の合意の内容は、イスラエルにとって圧倒的に有利だ。これによってイスラエルは、湾岸諸国の一部から、パレスチナ占領のお墨付きをもらった。この動きが他の湾岸諸国に広がれば、イスラエルはパレスチナ占領の既成事実を固定化できるだろう。

カマラ・ハリスがバイデンのパートナーに選ばれたことに対して、トランプ陣営は強烈な脅威を感じているようだ。トランプ自身、ツイッターを通じてヒステリックなカマラ攻撃をしているし、トランプを支える仲間たち、すなわちトランプギャグと呼ばれる連中もパニックに近い狼狽ぶりを見せている。なぜか。カマラは、トランプを破った後には、彼を訴追して刑務所に送ってやると明言しているからだ。

長らくパレスチナ人の象徴だったアラファトが2004年12月に死んだ。フランスの陸軍病院に入院中だったが、何者かによって放射性物質で毒殺されたという噂も立った。後継者をめぐって多少の混乱があったのち、マフムード・アッバースがパレスチナ自治区大統領・PLO議長に就任した。アッバースは、前年の3月に新設された自治政府の首相に任命されていたが、わずか半年で辞任していた。辞任の理由はアラファトとの齟齬であった。

2001年9月11日にアメリカで起きた同時多発テロは世界中を震撼させた。このテロによって3000人近い犠牲者を出したアメリカのブッシュ政権は、さっそくヒステリックな反応を示した。テロとの戦いへの邁進である。ブッシュはまずアフガニスタンを攻撃し、ついでイラクを攻撃してフセインを殺した。こうしたアメリカのテロとの戦いに対して、世界は反対する理屈を持たなかった。逆にそれを正当化するような論調が支配した。そしてテロとの戦いは、テロリスト=イスラム教徒という図式を通じて、イスラムとの戦いへと転化していった。イスラム=悪という構図が成立したのである。

オスロ合意は、PLOにとって不本意な点が多かった。とくに東エルサレムの帰属問題と1948年以降パレスチナを追われてアラブ諸国に離散した人々の帰還権問題について、全く見通しが得られていなかった。しかしそれにこだわっていては前へ進めないという判断から、それらの問題は最終解決として先送りされ、とりあえずオスロ合意に基づく暫定自治を開始し、その後で最終解決に向けての努力をしようという方針をアラファトは立てた。

トランプが、オレゴン州ポートランドに軍装した連邦政府要員を派遣して、実力でデモを鎮圧する動きを見せた。トランプはこの動きを、シカゴやアルバカーキでも実施する意向を示している。これに対して、地元当局は、違憲な武力行使だとして批判しているが、トランプは聞く耳をもたない。これらの都市は無法な暴力都市になっているから、法と秩序を取り戻すための必要な措置だと言って、開き直っている。

イスラエルの建国時点(1948年)での人口(非ユダヤ人を含む)は約65万人だったが、1990年代半ばには400万人を超えた。その大部分は海外からの移入である。イスラエルは国力の増強という目的もあって、世界中に存在するユダヤ人を積極的に受け入れた。イスラエルにやってきたユダヤ人の多くは、もといた国での迫害を逃れるためにやってきたのだった。1967年の第三次中東戦争以降アラブ諸国からやってきたユダヤ人や、1980年代末以降にソ連からやってきたユダヤ人はその典型だった。

トランプが、この11月の大統領選挙で敗れた場合にも、何かと理屈をつけて選挙結果を認めず、ホワイトハウスに居座り続けるという意向を、色々な機会に言明していることから、その可能性が現実味を帯びてきた。そこで、そうなった場合、事態はどのように展開していくのか、各方面でシミュレーションが始まっている。

1989年に東西冷戦が終焉する。ベルリンの壁が崩壊し、東欧の社会主義政権が相次いで倒れ、ゴルバチョフのソ連がペレストロイカを進め、西側との平和共存を目指した結果だ。ソ連が消えるのは1991年12月のことだが、それを待たずに冷戦から降りていたのである。

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