雑誌「世界」最新号(2023年1月号)のアメリカ特集のからみで、秋元由紀・押野素子の対談「ベストセラーが照らすアメリカ黒人の生」が掲載されていて、大変興味深く読んだ。二人とも女性のアメリカ研究者だそうで、アメリカに暮らした経験があり、アメリカにおける人種差別の根深さを肌で知っているようである。アメリカの人種差別といえば、白人による黒人の差別が基本で、それに加え、アジア人やヒスパニックが白人の差別の対象になる。白人の黒人差別は、奴隷制の歴史に根ざしたもので、そう簡単にはなくならないし、場合によっては露骨な形をとることもある。それに比べれば日本人を含めたアジア人は、黒人ほど露骨な差別はうけないが、しかし、強烈な差別意識を感じさせることはあると、二人は言う。とくに、アジア人が優秀で白人と同等の能力を発揮するような場合に、差別が表面化する。黄色いくせして、身の程をわきまえない奴だというわけである。
世界情勢を読む
アメリカは信仰の自由を求めた人々が中心になって「建国」されたという事情があって、宗教が政治に大きな影響を及ぼしてきたと言われる。レーガンやトランプが大統領になったのも、保守的な宗教人口に支えられてのことだとされる。松本佐保の「熱狂する神の国アメリカ」(文春新書)を読むと、アメリカ政治史における宗教の役割がよくわかる。
ウクライナ戦争をめぐって、自由でリベラルな国家と専制的な国家の対立という図式が流布されている。欧米をはじめとしたリベラルな国家は、自由と民主主義を奉じるウクライナが、専制的な国家であるロシアに侵略されるのを見過ごすことはできない、といった理由から、欧米諸国のウクライナ戦争への介入が正当化されている。それは、今の国際社会の深刻な分断を反映しているのであろう。そういう状況をどう考えるか。雑誌「世界」の最新号(2022年12月号)が、「分断された国際秩序」と題して、ウクライナ戦争をめぐる、世界の分断について特集している。
アメリカが世界で唯一の大国になったことで、アメリカ外交はまずまず独善的になった気がするが、それにはさまざまな事情が働いている。その中でもっとも深刻なのは、アメリカの高級公務員がメリット・システムに従って、政治的な動機から任用されていることだ。その結果、内政はともかくとして、外交を担う高級公務員が素人によって担われ、知識と経験の裏付けをかいた、その場限りの決定がなされるため、世界中を危険にさらすような決定がなされがちになる。そうした危険性を指摘した論文が、ネット・オピニオン誌POLITICOに掲載されている。How Foreign Policy Amateurs Endanger the World Political appointees have too little experience and too many delusions.By DEREK LEEBAERT
ウクライナ戦争をめぐる報道を見る限り、プーチンの意図は破綻し、敗北の色が濃厚になってきた、というような見方までされているが、果たしてそうなのか。そこにはプーチン憎しの感情にもとづく希望的観測が含まれていないか。そんなことを思っていた矢先に、ウクライナがかえって深刻な窮状に陥っており、ウクライナ自体が敗退するばかりか、そのウクライナを支援する西側諸国も深刻な事態に直面するだろうという見通しを述べた記事に遭遇した。アメリカの保守系雑誌 The American Conservative に寄せられた Holding Ground, Losing War :Zelensky's strategy of defending territory at all costs has been disastrous for Ukraine. By Douglas Macgregor という文章である。
かつてエリツィンとともにロシア現代史を彩った男ゴルバチョフが死んだ。エリツィンが死んだとき、小生は一文を草してその死を惜しんだことがあったが、ゴルバチョフに対しては、そんな気にはなれない。エリツィンには人に愛される能があった。ゴルバチョフにはそれがない、ということでもない。だが何といってもゴルバチョフは、ロシア史に巨大な足跡を残した男だ。何らかの形で言及せねばなるまい。
国連本部で行われていた核不拡散条約(NPT)の再検討会議が、最終文書を採択できず決裂した。前回に続いての再度の決裂である。このことについて、NATO諸国を始めとした西側は、ひとえにロシアの責任だといって非難しているが、それは一方的な言い分だろう。この決裂は、今日世界が陥っている深刻な分裂を反映しているのであり、その分裂の責任は、ひとりロシアのみならず、アメリカをはじめとした西側諸国にもある。
人間の寿命が飛躍的に伸びたおかげで、老人が政治を牛耳る眺めが日常のものとなった。老人が政治のかじ取りをすること自体、絶対悪というわけではないが、しかし近年の世界の混乱ぶりを見ていると、その原因のほとんどは老人にあることがわかる。その老人たちの振舞いぶりをみていると、ボケているとしか思えない。ボケた老人たちに勝手なことをさせて、地球の命運があやしくなっているのは、看過できないことだ。
今般のウクライナ戦争では、当初ロシア軍の圧倒的優勢が伝えられ、その勝利は揺るぎないものと思われていた。しかし戦争が始まってすでに三か月たったいま、ロシア軍は圧倒的な勝利を収めるどころか、各地で苦戦を強いられ、一部では劣勢が伝えられている。中には、ロシアの敗北を予想するものまでいる。これは大方の予想に反した意外な事態と受け止められているが、小生はありうることだと思っていた。その理由は、ロシア軍が攻撃的な戦争を得意としていないことにある。二つの面で、ロシア軍は攻撃的な戦争には向いていないのだ。一つはロシア人の国民性に根差している。もう一つはロシア軍の伝統的な作戦思想に根差している。
ウクライナへの侵攻がうまくいかないのは、NATO諸国が事実上ウクライナの側にたって参戦しているからだとして、場合によっては核兵器の使用も辞さないと、プーチンが恫喝的な発言をしている。もし、実際プーチンが核兵器を使用したら、バイデンとしてはどうするつもりか。バイデン政権はすでに、その事態を想定したシミュレーションをしているそうである。
ロシア軍によるウクライナへの侵攻に怒り心頭のバイデンが、プーチンを戦争犯罪人の人殺しと呼び、この惨事にかかわる責任はプーチン個人が負うべきだと主張した。バイデンはこういうことで、プーチンが打倒されない限りこの問題の解決はありえないと言っているわけである。その一方、アメリカは軍事介入する意思はないという。NATOもそれに右へならえしているから、プーチンが外国の力によって打倒されることはない。もしかしてプーチンを打倒するものがあるとして、それはほかならぬロシア国民以外にはないだろう。つまりロシア国民が自国の大統領を権力の座から追わない限り、この問題の解決はないということだ。
ウクライナの戦線でロシア側の将軍たちが次々と殺害されているという。これまで4人の殺害が確認されている。ウクライナ戦線におけるロシア側将軍の定数は20人というから、その二割が殺されたということで、軍事的にはかなり異常な事態である。
プーチンのウクライナ侵攻をうけて、アメリカおよびNATO諸国がロシアへの厳しい制裁に及ぶ中、ドイツもロシア制裁に踏み切った。これは第二次世界大戦後、国際政治にもっとも巨大なインパクトをもたらすと予想される。場合によっては、独ロ対立がエスカレートするあまり、世界大戦に発展しかねない危険をはらんでいる。
プーチンがウクライナへの侵略を公然と始めた時、トランプはそれをほめたたえた。プーチンは天才で、かしこいと言ったのだった。これには、今年中に中間選挙を控えている共和党の議院連中から苦情が出た。プーチンの尻を舐めるようなマネはやめてくれ。と。それを受けてトランプは、一旦その発言を取りさげて、かえってウクライナを激励したほどだったが、またもや初言の精神に立ち戻り、プーチン礼賛の言葉を垂れ流している。つまりプーチンの尻を舐め続けているわけだ
プーチンがウクライナへの侵攻を始めた。新ロシア勢力のウクライナからの独立を承認し、その独立国家の平和を保証すると称して、公然たる介入を始めたのだ。それに対してNATO諸国は有効な対応ができていない。せいぜい経済制裁をちらつかせているくらいだ。そんなことでプーチンの野望を砕くことはできぬ。
米共和党が、昨年1月6日に起きたトランプ支持者による連邦議会襲撃を「正当な政治的言動」と宣言し、トランプの責任を追及してきた二人の共和党議員、リズ・チェイニーとアダム・キンジンガーを非難する決議を出した。ソルトレークシティで催された会議の席上、真剣に議論された形跡はなく、また、これに反対する意見を述べた議員もいなかったという。つまり共和党の総意として、以上のような宣言が出されたということだ。
米英豪の三カ国が新たな防衛協力AUKUSを結び、その目玉政策として米英が豪に原潜の技術供与(原潜の売却を含む)をすることになった。それに伴い、豪はフランスとの間に結んでいた原潜購入契約を一方的に破棄した。これにフランスが激怒し、米豪から大使を呼び戻す事態に及び、今回の米豪の措置は世界の安全保障に深刻な影響を及ぼすと警告した。
トランプの最後の日々に、米軍のトップが踏み出した行動が大きなセンセーションを巻き起こしている。統合参謀本部長のマーク・ミリー将軍が、全米軍に対して、中国への核攻撃を命ずるトランプの命令には、自分の介入なしには一切従うな、と指令していたというのだ。これはワシントンポストへの寄稿者ウッドワードが近いうちに出版する本の中で明らかにしたことだが、その報道が伝わると早速大騒ぎとなった。まず当のトランプが怒りを爆発させ、いまは自分でやれることはないので、共和党の議員達に対して、ミリーを訴追して、反逆罪で裁けと喚きたてた。
米テキサス州議会が、堕胎を実質的に違法化する法律を制定したことについて、連邦最高裁が合憲の判断をした。同じような動きは南部を中心とした各州にもあるので、今後全米的な規模で、堕胎の非合法化が進む可能性が強い。
アメリカが、ISのテロで米兵が死んだことへの報復と称して空爆を行い、幼い子供を含む多数の民間人がそれに巻き込まれて死んだ。死んだ人には何の罪もない。アメリカはこうした殺害行為について、責任を取ろうとしていない。一応遺憾の意は表しているが、謝罪も保証もしないだろうことは、これまでのアメリカの姿勢から十分予想される。アメリカには、自分のしていることは絶対に正しいという自信というか思い込みがあるからだ。アメリカはアメリカの正義に基づいて行動する。その正義の前では、アフガン人の命など芥子粒ほどの重みもないということだろう。
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