世界情勢を読む

先般イスラエルで行われた総選挙で、汚職疑惑などがもとで劣勢を取りざたされてもいたネタニアフが、与党リクードの勝利の結果、五期目の首相を務めることになった。このことの背景には、トランプによるネタニアフの強力な応援とか、経済を始め好調な国内情勢とかが指摘されもするが、根本的な要因はイスラエルのユダヤ人が極右化しているということだろう。ネタニアフはそうした動きを反映しているに過ぎない。これは、トランプがアメリカ国民の右傾化傾向を反映しているのと似たような事態だ。

中国ではいま「ゴマ信用のスコア」というのが流行っているのだそうだ。これはIT企業の大手アリババが四年前に始めたサービスで、個人の信用度をスコアであらわし、金融取引などに役立てようというものだ。このスコアは、目下個人の申し出に基づいて作成され、その個人の資産状況とか返済能力などの信用度を数値化し、それを金融取引等の判断材料にするというものだ。このスコアが高いと、簡単に融資が受けられるし、不動産取引なども有利に進めることができるという。これまでの中国では、信用取引に関しては保証人を立てるのが一般的だったが、このスコアがそれにとって代わりつつあるという。たとえば、賃貸住宅を借りたいと思ったら、大家から、保証人のかわりに「ゴマ信用のスコア」の提示を求められるのだそうだ。

米国土安全保障長官のキルステン・ニールセンが、事実上トランプに更迭される形で辞任した。理由は、移民に対する彼女の対応が生ぬるいということらしい。とはいっても、移民政策に関する彼女の対応は、米国の移民政策の歴史の上で例を見ないほど過酷で無慈悲なものとして有名だった。なにしろ、物心のつかないような小さな子供まで親から取り上げて収容所にぶち込むようなことを平気でしてきた人間だ。その無慈悲な彼女でも、トランプの眼には生ぬるいと映ったのだろう。

雑誌「世界」の最近号(2019年4月号)は、「権威主義という罠」と題する特集を組んでいて、現在世界中に蔓延している権威主義的な政治について多面的な分析を披露している。それを読んで感じたことを、ここにメモとして書いておきたい。

トランプのいわゆるロシアゲート疑惑を調査してきたマラー特別検察官が、二年近い調査にくぎりをつけて、司法省のボスであるバーに報告書を提出した。その報告書に基づいてバーが手短なレジュメを用意し、それを議会の司法委員会始め各方面に発表した。その概要を簡単に言えば、有罪とは断定できないが無実とも言えないというものだった。要するに灰色ということだ。

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トランプと金正恩とのハノイでの会談には世界中が注目していたところだ。なにしろ金正恩は、三日間にわたる鉄道の旅を経てわざわざハノイ迄やってきたのだし、トランプも金正恩との間でディールを成立させることに熱心だった。ところが蓋を開けてみると、会談はあっさりと破綻し、物別れに終わった。共同会見もしないまま、金正恩とトランプは自分の国に向けて帰って行った。

トランプの対中強硬政策が世界中の耳目を集めているが、対中強硬姿勢はトランプとその仲間だけではなく、ほとんどのアメリカ人に共通するものらしい。昨日(2019/02/23)の朝日には、ニューヨーク・タイムズのコラムニスト、デヴィッド・ブルックスの「中国の脅威」と題した小文が掲載されていたが、それを読むと、いまやすべてのアメリカ人にとって、中国は深刻な脅威であって、いまのうちに潰しておかねばならない敵だと認識されている様子が伝わって来る。また、今日の朝日には、一旦中国企業に発注したワシントン地下鉄の車両を、それがアメリカの機密をスパイする恐れがあるという理由で、キャンセルする動きがあることを伝えている。こうしたアメリカ人の動きは、どうもパラノイアに属するもので、過去のある時期に流行った黄禍論の再来を思わせる。

イギリスではいまEUからの離脱、いわゆるBREXITをめぐって大変な騒ぎになっている。その騒ぎの陰に隠れてあまり見えないが、長らく低迷してきた労働党がこの問題に大きな影響を及ぼしているのだという。小生は、イギリスの政治とかそのなかでの労働党の存在にほとんど注意を払ってこなかったのだが、ここ一二年のあいだに、労働党が躍進し、イギリスの政治を活性化させているというのである。その労働党の動きについて、雑誌「世界」の最近号が、二つの論考を掲載している。

雑誌「世界」の最近号(2019年2月号)に、バーニー・サンダースが昨年九月にある大学で行った演説が紹介されている。バーニー・サンダースといえば、前回の米大統領選で、民主党候補の座をヒラリー・クリントンと争った人物だ。社会主義者を標榜しており、その主張はかなり急進的だとの評判だが、この演説を読む限り、あたり前のことを言っているように聞こえる。

ドナルド・トランプとアメリカ・メディアが正面から対立していることは周知の事実だ。トランプはメディアをフェイクニュースと言って罵り、メディアはトランプを不誠実なデマゴギーだと言って罵っている。両者はいわば正面衝突の観を呈している。この正面衝突あるいは対立の勝者はどちらのほうか。答えはドナルド・トランプである。その理由を、NEWSWEEK の最新号の記事が分析している(President Trump Has Defeated The Media By Ben Shapiro)。

トランプが最高裁判事に指名したカヴァナフのセックス・スキャンダルが大騒ぎになっている。この問題には小生も大きな関心をもっていて、先日旅したロシアでも、友人たちの前にこの話題を持ちだしたところだ。その際、友人の一人はそんな話は聞きたくないと言ったものだが、小生としてはそう簡単に無視するわけにもいかない。

トランプの対中国政策が過激さを増している。中国からの輸入に全面的に関税をかけることで、中国との経済戦争に点火させることをいとわないばかりか、最近は政治的・軍事的側面でも対中国全面対決をにおわす政策を打ち出している。中国を意識した国防力の強化や、リムパックから中国軍を全面的に締め出すといった政策だ。こうした政策を目のあたりにすると、トランプは本気で対中戦争に踏み切るつもりではないかと思わされるところだ。

モラー特別検察官の捜査が本丸に入りつつあるのを目にして、トランプが苦し紛れの言い訳をしだした。自分はロシアと共謀したつもりはないが、仮に共謀したとしても、それは罪ではないというのだ。こういう言い訳を聞かされると、最近日本でも似たようなことが起ったのを思い出す。日本では、セクハラ疑惑で批判された部下をかばうために、上司の某財務大臣が、セクハラは罪ではないといって、あたかもセクハラを推奨するようなことを言った。今回のトランプの言い訳もそれに似ている。ロシアとの共謀は罪ではないのだから、それをしたからと言って、とやかく言われることはないというわけである。

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アメリカがエルサレムに大使館を移転したことがきっかけでパレスチナに緊張が高まり、ガザの住民がイスラエル軍に攻撃された。死者は六十人以上、負傷者は二千七百人以上と言われ、近年では最大規模の犠牲が出た。テレビ報道等で流れてくる映像を見ると、生まれたばかりの子どもまで標的になっているこの虐殺は、ホロコースト以外の何物でもないと感じさせられる。

トランプが在韓米軍の縮小を検討するよう指示したとニューヨークタイムズが伝えた。どの程度縮小するのか、あるいは完全に撤退するのか、そこまではまだ伝わってこない。しかし、何らかの形の縮小はありうると考えていいようだ。

最近アメリカはロシアに対して厳しい制裁をかけているが、トランプはプーチンとの個人的友好関係の維持に熱心なようだ。3月20日には、ホットラインを通じてプーチンと親しく対談し、その中で、なるべく早くプーチンをホワイトハウスに招待したいと言った。プーチンもそれに応えて、トランプをクレムリンに招待したいと言ったそうだ(RIAノーヴォスチ通信による)。

習近平政権が中国憲法を改正して国家主席の任期を無期限としたことに対して、アメリカのトランプ大統領が早速エールを送って祝福した。これで習近平は中国の終身支配者になることができて、おめでとうというわけだ。そのエールの言葉は例によってツイッターでつぶやかれたが、それはトランプの本音だろうと多くの人が思っている。

大統領選を直近に控えたプーチンが、自国民と世界向けの演説を行い、その中で軍事力の強化を訴えた。その主な内容は、欧米のディフェンス・システムを突破する能力を持つ核弾道ミサイルの開発に注力するというものだ。このミサイルはアメリカからの迎撃をかわして、世界中の標的を確実に攻撃できる。また、ロシアに対しては無論、ロシアの同盟国への攻撃には、ロシアは断固として反撃する。世界中の国々、とくにアメリカはロシアのこの決意を厳粛に受けとめた方が良い。プーチンはそう言って、ロシアの軍事力の充実を誇った。

トランプ登場の陰にはアメリカの福音主義者たちの圧倒的な支持がある。福音主義者というのは聖書に書いてあることこそが真実であり、それに反することは虚偽であると主張するばかりか、本気でそう信じている人たちである。アメリカ人の四分の一がこうした福音主義者であるとされるが、社会が安定している時にはあまり政治化することはない。ところが社会が不安定になったり、人々の不満が高まったりすると、一気に政治化する。その政治化の動きがトランプ登場の大きな引き金となったわけだ。

トランプ政権が「フェイクニュース賞」なるものを発表した。一位は日ごろトランプを舌鋒鋭く批判している経済学者のポール・クルーグマンで、彼にコラムを提供しているニューヨークタイムズ始め、トランプに批判的な報道をしているメディアが顔をそろえた。「安定した天才」を自負する大統領からこのような賞をもらった人々はどのような気持ちだろうか。

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