ローラン・カンテの2008年の映画「パリ20区、僕たちのクラス(Entre les murs)」は、フランスの中等教育の現場を描いた作品。公立中学校のクラス運営を巡って、教師が生徒との間で奮闘する様子が描かれている。クラスは規律に欠け、生徒は勝手なことばかりする。それに対して教師が立ち向かい、クラスの秩序を保って、生徒の学習を励まそうとするが、なかなか思うようにならない。教育とはいいながら、実情は教師と生徒との戦いである。ふつうの日本人からみれば、学級崩壊の特異な例ということになるのだろうが、フランスでは珍しいことではないらしい。
1999年のフランス映画「クリクリのいた夏(Les Enfants du marais)」は、貧しいながら誇り高きフランス庶民のつつましい生き方を描いた作品。監督のジャン・ベッケルは、「モンパルナスの灯」などで知られるジャック・ベッケルの息子である。父親はエンタメ性の高い映画を手掛けたが、息子のほうは、ほのぼのとした人情劇が得意なようだ。
1964年のフランス映画「シェルブールの雨傘(Les Parapluies de Cherbourg)」は、フランス流ミュージカル映画である。ミュージカルはイギリスが発祥で、英語圏では人気のある演劇分野だが、フランスでは盛んではなかった。そんなこともあってこのミュージカル作品には、なにかとってつけたような不自然さを感じる。それでも当時は世界的な評判となり、カンヌでグランプリをとったほどだった。それにはミシェル・ルグランの音楽が大きな役割を果たしたといえる。
リチャード・エアの2001年の映画「アイリス(Elegy for Iris)」は、アルツハイマー病に襲われた妻と、そんな彼女を献身的に介護する夫の間の、感動的な夫婦愛を描いた作品。アルツハイマー病をはじめ認知症は、高齢化の進展もあって、いまでは誰にとっても身近な問題だ。自分自身いつ認知症にならぬとも限らぬし、また配偶者がならぬとも限らない。だからこの映画で描かれたような夫婦間の問題は、誰にとっても他人事ではない。誰もがいずれ自分自身が向き合わねばならなくなる境遇だ。
ジム・ローチの2011年の映画「オレンジと太陽(Oranges and Sunshine)」は、児童移民と称される子どもの人身売買をテーマにした作品。これはイギリス政府とオーストラリア政府が結託して実施していた制度で、イギリス国内の養護施設の児童を移民としてオーストラリアに送り込んできたというものだ。多くの場合送り込まれた児童は、虐待や強制労働など、ひどい待遇を受けたと見られる。イギリスにとっては、無用者の厄介払いになるし、オーストラリアにとっては人口不足対策になるというので、両国政府にとって都合のよい制度であった。
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