パノプチコンをテーマに取り上げた「一望監視方式」の章は、「監獄の誕生」の中でもっとも有名になった箇所である。「監獄の誕生」といえば、パノプチコンの誕生とパラレルに論じられるほどだ。パノプチコン(一望監視装置)というのは、効率的な監視の装置としてベンサムが推奨したものだったが、それは監獄のみならず、社会全体にも適用可能である。というか、ヨーロッパ近代社会と言うのは、パノプチコンがもっとも効果を発揮する社会なのである。ヨーロッパ近代社会は、規律と訓練によって運営されている社会なのであって、そのような社会だからこそ、効率的な監視装置たるパノプチコンはもっとも効果を発揮するからである。このように、フーコーの議論は、効率的な監獄のありかたとしてのパノプチコンから、社会全体を監視する装置としてのパノプチコンの議論へと発展する。彼のパノプチコン論はだから、監視社会論の一バリエーションだと言える。
最近のコメント