小野川喜三郎(和漢百物語):月岡芳年

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「和漢百物語」は、月岡芳年の初期の代表作といえるもので、慶応元年(1865)に出版された。目録には二十五葉からなると記されている。いづれも和漢の妖怪をテーマとしたものだ。百とあるのは、一種の語呂合わせで、「多くの」というほどの意味らしい。

これはそのうちの一葉「小野川喜三郎」。小野川喜三郎は、谷風梶之助とともに寛永年間に活躍した力士で、横綱を称した。久留米藩のお抱え力士であったが、ある晩宿直しているとろくろ首の怪物が現れて喜三郎の肝を試した。喜三郎臆することなく怪物を取り押さえると、年老いた狸が現れた。

その説話を絵にしたものがこの作品の図柄だ。右手でキセルをもった喜三郎が、怪物の顔にたばこの煙を吹きかけている、煙を吹きかけられた怪物は目をむいてむせかえり、はきかけた喜三郎のほうは涼しい顔をしている。

署名に「月岡魁斎芳年」とあるが、これは月岡性を名乗った最初の作品である。

(慶応元年<1865> 大判)







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