ブレイクの挿絵

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ブレイクの「神曲」への挿絵の最後を飾るものは、「栄光の天の女王」と題された一枚である。この絵は、天国編の第三十二曲の内容に対応している。本文ではこの部分は、薔薇の花びらに包まれるようにして、大勢の天使や使徒たちの居並んでいる姿が見え、その中心に聖母マリアが座しているということになっている。ダンテはその様子を、自分の再解釈を交えながら描いた。

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ダンテとベアトリーチェはいよいよ至高天へと上って行く。至高天とは神の座するところである。ダンテはここで神の姿を直接見ようと望むが、それには準備がいる。その最初のものが、光の川から水を飲むことだ。こうして身を清め、神を見るに耐える視力を持たねばならない。

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ダンテとベアトリーチェが、恒星天の更に外側に広がる原道天に上ってゆくと、光り輝く九つの環と、その中心で微小に輝く点が見えた。九つの環はそれぞれ九つの天体に対応し、その中心にある光は、これらの天体の運行をつかさどるもの、すなわち神の光であるとベアトリーチェはダンテに説明する。

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聖ペテロ、聖ヤコブの霊に続いて聖ヨハネの霊が現れる。そのまばゆい光に接したダンテの目は一瞬暗くなる。ヨハネは生きたまま天国に上げられたと伝えられており、ダンテはそのヨハネと同じく、自分もまた天国に生きたまま迎えられ、その喜びを分かちたいと思うのである。

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天国編第二十四曲に続き、第二十五曲のためにダンテは二つの挿絵を描いた。両者ともに、「神曲」への挿絵の中で最も気合を感じさせるものだ。色彩も豊かで、構図もしまっている。保存状態もよい。

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恒星天の双子宮でダンテらの前に現れた炎のうち、聖ペテロの霊を収めた炎が彼らに近づき、ダンテが果たしてベアトリーチェの願うように、霊たちの喜びにあずかる資格があるかどうか吟味する。吟味の基準は、ダンテがキリスト者としての相応しい信仰を有しているかということだった。

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天国編への挿絵の三枚目と四枚目は第二十四曲に対応している。ダンテとベアトリーチェの二人は恒星天(第八天)の双子宮にいる。彼らの前へ、天使の霊たちが炎の輪になって現れる。その輪に向かってベアトリーチェが、彼らの喜びにダンテも与らせてほしいと願う。

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天国編の挿絵の第二枚目は、第十九曲に対応している。ベアトリーチェとともに木星天に上ったダンテはそこで、地上で正義を実践した例たちが鷲の姿を取ってダンテらの前に現れ、ダンテの質問、それはキリストの出現以前に生きた人々が何故天国へ行けないのか、という素朴な質問であったが、その質問に答える。そして、人間の過去の歴史において、不正を働いたものどもの行為をあげ、それを糾弾する。

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ダンテの天国のイメージは、当時のヨーロッパ人の抱いていた天体のイメージを反映している。天体が地球を中心にして、惑星圏と恒星圏からなっているのと並行するように、天国も月、水星、金星、太陽、火星、木星、土星それぞれの惑星天及びその外側に広がる広大な恒星天からなり、恒星天の更に外側に至高天があると考えていた。

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この挿絵には対応する部分がない。煉獄の螺旋階段を描いているところから、煉獄の構成について説明しているものとも思われ、その意味では、煉獄について説明している第十八曲に対応するといえなくもないが、ここでは煉獄を締めくくる最後の場所に置くこととする。

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ベアトリーチェに叱責されたダンテは、淑女マティルダの導きで、レテの川の水を飲んで忌まわしい記憶をすべて焼却する。こうして過去の罪悪から浄められたダンテは、ベアトリーチェの眼をまっすぐに見つめることができるようになる。その眼のなかには、聖書が教えるような、人類史の出来事がイメージとなって再現される。その様子にダンテは見とれる。

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戦車の上に乗っていたのは、ダンテの永遠の女性ベアトリーチェ。ベアトリーチェは戦車の上からダンテに声をかけ、ダンテの犯したさまざまの罪を責める。その罪の最たるものは、愛する女性ベアトリーチェを、青春の快楽を求める気持から、彼女の死後忘れてしまったということだった。

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ダンテを先頭にして三人が進んでゆくと、小川のほとりにいたる。小川の対岸には一人の淑女がいて、ダンテの問いに答えて言う。ここは地上の楽園にして、人間たちが夢想してきた黄金時代の展開された場所だと。

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猛火をくぐったところで日が沈んだ。日没を過ぎたら歩くことは出来ぬという煉獄の掟に従い、三人はそれぞれ石段の上に横になった。眠りの中でダンテは、リーアとラケールの姉妹が出てくる夢を見る。彼女らは、ダンテが煉獄山の頂上に近づいているのを祝福しているようであった。

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猛火を前にして恐れひるむダンテをヴィルジリオが励まし、まず自分が火の中に入り、ダンテに続くように促す。その声に促されてダンテはあとに続き、そのあとにスターツィオが続いた。かくしてダンテは、ヴィルジリオとスターツィオに前後を守られる形で猛火の中を進む。そこに天使らの歌声が聞こえてきて、ダンテを励ますのだ。

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ダンテとヴィルジリオは、煉獄の七つの冠を次々と経てゆく。第二の冠を出た後、第三の冠は憤怒、第四の冠は怠惰、第五の冠は貪欲、第六の冠は貪食、第七の冠は貪色の、それぞれの罪を清めるために当てられていた。それらを通り過ぎると、ダンテ自身の罪も洗い清められ、その証拠に、煉獄の門で天使によって額に付けられた七つのPの文字が、次々と消されてゆくのだった。

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ダンテとヴィルジリオは山道を登ってやがて第二の冠にさしかかる。ここは嫉妬の罪を犯した者が配置され、寛大の徳の功徳によって浄められるのを待つところ。彼らは、乞食のように粗末な姿で群をなし、瞳を鉄の糸で縫いつけられているために、太陽を見ることができない。

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ダンテとヴィルジリオが第一冠の道を上り進んで行くと、彼らの踏む道には様々な像が彫られている。それらは、高慢の罪を犯した人々の像なのであった。それらの一人一人をダンテは、丁寧に見つめながら、感嘆の声を上げる。

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ダンテとヴィルジリオが彫刻に見入っていると、不思議な人々の一団が通り過ぎてゆく。彼らは高慢の罪で煉獄の第一冠に配された人々である。背中に重いものを負い、その重さに腰を曲げながら歩いてゆく。

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ダンテとヴィルジリオは、煉獄の入り口であるピエルの門をくぐり、いよいよ煉獄山の本体を上ってゆくことになる。煉獄山の本体は七つの冠と呼ばれる層からなっている。その冠は、らせん状にせり上がってゆく道に沿って存在し、それぞれの冠には、七つの大罪を起こしたものたちが、罪の種類に応じて配されている。ダンテとヴィルジリオは、煉獄山を上る途中で、これらの人々と出会い、そこを過ぎるごとに、ダンテが額に記されたPの文字が、ひとつずつ消されることとなる。

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